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2021年9月27日、「アトピー性皮膚炎」を対象疾患とするモイゼルト軟膏(ジファミラスト)が承認されました!
その後、2023年12月には「生後3か月以上」の小児に対しても使用可能となりました。
大塚製薬|ニュースリリース
基本情報
製品名 | モイゼルト軟膏0.3%/1% |
一般名 | ジファミラスト |
製品名の由来 | Moisture, Certainly 潤いのある正常な皮膚を確実に取り戻すという願いを込めて命名した。 |
製造販売 | 大塚製薬(株) |
効能・効果 | アトピー性皮膚炎 |
用法・用量 | 通常、成人には1%製剤を1 日2 回、適量を患部に塗布する。 通常、小児には0.3%製剤を1 日2 回、適量を患部に塗布する。 症状に応じて、1%製剤を1 日2 回、適量を患部に塗布することができる。 |
収載時の薬価 | 0.3%:142.00円 1%:152.10円 |
発売日 | 2022年6月1日新発売(HP) |
PDE4阻害薬は既に経口剤のオテズラ(アプレミラスト)が乾癬・ベーチェット病を対象疾患として承認されていますが、アトピー性皮膚炎では初、かつ外用薬としても初です。
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オテズラ(アプレミラスト)の作用機序【乾癬/ベーチェット病】
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近年ではアトピー性皮膚炎に対する様々な新薬が登場してきていますので選択肢が増えるのは朗報かと思います!
今回はアトピー性皮膚炎とモイゼルト軟膏(ジファミラスト)の作用機序についてご紹介します。記事中では最近の新薬も併せて紹介していきますね。
アトピー性皮膚炎とは
アトピー性皮膚炎とは、もともとアレルギーを起こしやすい体質の人や、皮膚のバリア機能が弱い人に多く見られる皮膚の炎症を伴う疾患です。
主な症状は「湿疹」と「かゆみ」で、良くなったり悪くなったりを繰り返し、なかなか治らなく、慢性的であるのとが特徴です。
具体的には、赤みがある、じゅくじゅくして引っかくと液体が出てくる、ささくれだって皮がむける、長引くとごわごわ硬くなって盛り上がる、などがあります。
部位としては、おでこ、目のまわり、口のまわり、耳のまわり、首、わき、手足の関節の内側などに出やすいとされており、左右対称に発現することもあります。
アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎は、皮膚症状の状態によって、軽微、軽症、中等症、重症の4段階に分けられており、それぞれによって治療法が異なります。
治療の基本は以下の3つがありますが、最も中心となるのは薬物療法です。1)
- 薬物療法:ステロイド外用薬を中心とした治療
- スキンケア:日頃から皮膚を清潔に保ち、保湿状態を保つ
- 原因・悪化因子の除去:炎症の原因となる物質・因子を取り除く
ステロイド外用薬は「最強」「とても強い」「強い」「弱め(ミディアム)」「弱い」という5段階がありますが、アトピー性皮膚炎の重症度に応じて、それぞれ使い分けられています。
その他には、かゆみを抑えるために、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を内服することもあります。
同様に最近登場したJAK阻害薬のコレクチム軟膏(デルゴシチニブ)も外用薬として使用可能です。
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コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)の作用機序【アトピー性皮膚炎】
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一方で、外用薬等では改善が認められないこともしばしばあり、ステロイド薬の内服や免疫抑制薬(シクロスポリン)の内服の他、抗IL-4受容体α(IL-4Rα)抗体薬のデュピクセント(一般名:デュピルマブ)が行われることもあります。
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デュピクセント(デュピルマブ)の作用機序【アトピー性皮膚炎/気管支喘息/副鼻腔炎】
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アトピー性皮膚炎の原因:マクロファージやTh2細胞による炎症性サイトカイン
アトピー性皮膚炎の明確な発症原因は不明確ですが、
- 家族歴・既往歴
- 外的要因
- 環境要因(ストレス、食生活、肥満等)
などによって、炎症反応が引き起こされることで発症すると考えられています。
様々な原因によって、免疫細胞であるマクロファージやTh2細胞(ヘルパーT細胞の一種)からTNFα、IL-4、IL-6、IL-13、IL-22などの炎症性サイトカイン・ケモカインや化学伝達物質が放出され、これが作用することで痒みを誘発すると考えられています。1)
炎症性サイトカイン等の放出には免疫細胞内のcAMP濃度が関与していることが知られています。
- cAMP濃度が低い場合:炎症性サイトカインの産生促進、抗炎症性サイトカインの産生抑制
- cAMP濃度が高い場合:炎症性サイトカインの産生抑制、抗炎症性サイトカインの産生促進
アトピー性皮膚炎では、免疫細胞内のcAMP濃度が低いため、免疫細胞が活性化して炎症性サイトカインの産生が引き起こされていると考えられています。
モイゼルト軟膏(ジファミラスト)の作用機序
cAMPは細胞内の「ホスホジエステラーゼ4(PDE4)」によって分解されますが、モイゼルト軟膏はPDE4の選択的阻害薬です!
免疫細胞内のcAMP濃度が高濃度になることで活性が抑制され、炎症性サイトカインの放出抑制と抗炎症性サイトカインの放出促進によって症状緩和が期待できます。
エビデンス紹介:2〜14歳の小児対象とした国内第Ⅲ相試験
根拠となった国内臨床試験には以下の2つがあります。
- 成人(15~70歳)を対象とした第Ⅲ相試験
- 小児(2〜14歳)を対象とした第Ⅲ相試験
小児の試験は結果が論文で公表されているため、簡単にご紹介します。2)
本試験は0.3%または1%のモイゼルト軟膏とプラセボ基剤を、それぞれ1日2回、4週間塗布した際の有効性・安全性を検証した国内第Ⅲ相試験です。主要評価項目は「IGA達成率*」とされ、結果は以下の通りでした。
モイゼルト軟膏 0.3% |
プラセボ基剤 | モイゼルト軟膏 1% |
|
IGA達成率* | 44.6% | 18.1% | 47.1% |
p=0.0005 | - | ||
- | p<0.0001 |
*IGA達成率:IGA(包括的重症度評価)スコアが0又は1かつベースラインから2点以上減少を達成した患者さんの割合
成人の臨床試験についても添付文書で試験概要が掲載されていて、1%製剤にて小児と同様の結果が得られていました。3)
副作用
0.5%以上に認められる副作用として、色素沈着障害(1.1%)、毛包炎、そう痒症などが報告されています。
重大な副作用は特にありませんでした。
用法・用量
成人と小児で製剤が異なりますので注意が必要ですね。
使用製剤 | 用法 | |
成人 | 1%製剤 | 1日2回、適量を患部に塗布 |
小児 | 0.3%製剤 (症状に応じて1%製剤も可) |
収載時の薬価
収載時(2022年5月25日)の薬価は以下の通りです。
- モイゼルト軟膏0.3%:142.00円
- モイゼルト軟膏1%:152.10円(1日薬価:608.40円)
算定根拠については以下をご参考ください。
-
【新薬:薬価収載】14製品(2022年5月25日)
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まとめ・あとがき
モイゼルト軟膏はこんな薬
- アトピー性皮膚炎に対する初のPDE4阻害薬
- PDE4阻害薬の外用薬も国内初
- cAMP濃度を高めて免疫細胞の活性化を抑制する
アトピー性皮膚炎ではこれまでステロイド外用薬が中心でしたが、2020年に登場したコレクチム軟膏を皮切りに、モイゼルト軟膏も新たな治療選択肢になり得ると期待しています。
2024年には新規作用機序の外用薬ブイタマークリーム(タピナロフ)も登場しました。
一方で、ステロイド外用薬がよいのか、コレクチム軟膏・モイゼルト軟膏・ブイタマークリームがよいのか、については今後の検討課題かと思います。以下の記事でプロトピック、コレクチム、モイゼルト、ブイタマーの比較一覧表についてまとめていますので、ご参考ください。
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ブイタマー(タピナロフ)の作用機序【アトピー性皮膚炎/乾癬】
続きを見る
外用薬で効果不十分な場合には抗体薬のデュピクセント(デュピルマブ)が使用できます。
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デュピクセント(デュピルマブ)の作用機序【アトピー性皮膚炎/気管支喘息/副鼻腔炎】
続きを見る
以上、今回はアトピー性皮膚炎と新規の外用PDE4阻害薬のモイゼルト軟膏(ジファミラスト)についてご紹介しました!
参考資料・文献等
- アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021年版
- 小児の国内第Ⅲ相試験:Br J Dermatol. 2022 Jan;186(1):40-49.
- モイゼルト軟膏 添付文書
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