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2022年6月20日、カナグル錠(一般名:カナグリフロジン水和物)の効能・効果に「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(ただし、末期腎不全または透析施行中の患者は除く)」を追加することが承認されました!
田辺三菱製薬|ニュースリリース
効能・効果は以下の通りです。
- 2型糖尿病
- 2型糖尿病を合併する慢性腎臓病
ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。
カナグルは2型糖尿病治療薬として2014年7月4日に登場したSGLT2阻害薬で、国内では6番手でした。なお、類薬のフォシーガ(ダパグリフロジン)は既に「慢性腎臓病(ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者は除く)」の適用を取得しています。
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フォシーガ(ダパグリフロジン)の作用機序【糖尿病/心不全/CKD】
カナグルは「2型糖尿病を合併するCKD」の適用のため、フォシーガとの使い分けは気になるところです。
糖尿病とは
平成29年の厚労省調査(3年に1度)によると、糖尿病の総患者数は約328万人超であり、前回の調査から12万人以上増加しています。
糖尿病はその名の通り、血中ブドウ糖濃度が高い状態が慢性的に継続している病態です。
健康診断等で
- 空腹時血糖値が126mg/dL以上
- HbA1cが6.5%以上
の場合に疑われ、数回の検査を経て確定診断されます。
糖尿病にはその原因や病態によって
- 1型糖尿病
- 2型糖尿病
に分類されています。
日本人では約95%が「2型糖尿病」に分類されており、遺伝因子と食生活・運動不足・肥満等の生活習慣が原因で、以下の理由で引き起こされると考えられています。
- インスリンの分泌低下:インスリン量が減っている
- インスリンの抵抗性増大:インスリンの効きが悪くなっている
主にはインスリンの抵抗性増大によると考えられています。(インスリン分泌低下は軽度~中等度と様々)
一方、1型糖尿病は遺伝因子や自己免疫等によって、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が欠損・破壊されている状態です。(インスリンの分泌低下)
従って、治療の基本はインスリンの補充療法です。
カナグルは2型糖尿病にのみ使用可能です!
糖尿病の治療:1型と2型
2型糖尿病治療は
- 食事療法
- 運動療法
- 薬物療法
を基本としますが、最も大切なのは食事療法と運動療法です。
食事/運動療法を2~3カ月続けても血糖値が下がらない場合、薬物療法が開始されます。
一方、1型糖尿病ではインスリンの補充療法が中心的です。
インスリン補充療法によって基本的にはコントロール可能ですが、
- 低血糖症のリスク
- コントロール不良な場合の治療法
- 体重増加
などが課題として懸念されています。
2型糖尿病の薬物療法
糖尿病治療薬にはいくつかの種類があり、年齢や肥満の程度、合併症、肝・腎機能等によって使い分けられます。
まずは経口血糖降下薬の少量から開始されることが多いです。
経口血糖降下薬には以下の種類があり、糖尿病の原因(インスリン分泌低下、抵抗性増大)によって使い分けられます。
<インスリン分泌低下を改善>
- スルホニル尿素(SU)薬:インスリン分泌促進
- グリニド薬:より速やかなインスリン分泌促進
- DPP-4阻害薬:インクレチン分解抑制によるインスリン分泌促進とグルカゴン分泌抑制
<インスリン抵抗性を改善>
- ビグアナイド薬:糖新生の抑制
- チアゾリジン薬:インスリンの感受性を向上
加えて、ブドウ糖の吸収を抑制する「α-グルコシダーゼ阻害薬」や、ブドウ糖の排泄を促進する「SGLT2阻害薬」等も使用されます。
慢性腎臓病(CKD)とは
慢性腎臓病(CKD:chronic kidney disease)は、腎障害が慢性的に持続する疾患の全体を意味するもので、以下の場合、CKDと確定診断されます。
- 尿異常(蛋白尿)、画像診断・血液所見・病理所見等で腎障害の存在が明らか
- GFRが60(mL/分/1.73㎡)未満
※GFR:「糸球体ろ過量」のことで、腎機能の指標です。
CKDのリスク因子としては、以下です。
- 高血圧
- 糖尿病
- 脂質異常症(高脂血症)
- 喫煙
- メタボリックシンドローム
また、CKDの初期にはほとんど無症状のため徐々に腎機能が低下していきます。
腎臓は老廃物の排泄や骨代謝、造血器機能調節といった様々な役割を担っているので、CKDによって腎機能低下が進行してしまうと、
といった様々な症状が現れます。
従って、早期からリスク因子である原疾患の治療、症状に対する対処療法と共に、生活習慣改善が重要です!
ちなみに、CKDの症状の一つである腎性貧血に対しては
- エリスロポエチン製剤:ネスプ(ダルベポエチン)等
- HIF-PF阻害薬:エベレンゾ(ロキサデュスタット)等
が使用されます。
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エベレンゾ(ロキサデュスタット)の作用機序:類薬との比較・違い【腎性貧血】
続きを見る
2022年には同じ効能・効果を有する、非ステロイド型のアルドステロン拮抗薬(ミネラルコルチコイド受容体遮断薬)のケレンディア(フィネレノン)も登場しました。
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ケレンディア(フィネレノン)の作用機序・特徴【糖尿病合併CKD】
続きを見る
それではカナグルに代表されるSGLT2阻害薬の作用機序についてご紹介します。
SGLT2阻害薬(カナグル)の作用機序
通常、血中のブドウ糖は尿中に排泄されません。
その理由として、腎臓の糸球体でろ過された原尿には、血漿と同じ濃度のブドウ糖が含まれていますが、近位尿細管で実に99%以上のブドウ糖が再吸収されます。
ようするに、一旦はブドウ糖は糸球体で原尿へ濾過されるももの、そのほとんどが再吸収されて体内(血中)に戻ってきてしまいます。
この原尿中のブドウ糖再吸収を行うトランスポーターは「SGLT2(Sodium-Glucose Transporter 2)」と呼ばれています。
SGLT2阻害薬はブドウ糖再吸収に関与するトランスポーターのSGLT2を阻害することで、ブドウ糖の再吸収を抑制する薬剤です。
つまり、SGLT2阻害剤は糖の再吸収を抑える(=糖の排泄を促進する)ことで血糖を低下させるといった作用機序を有しています。
このようにSGLT2阻害薬はインスリン作用を介さないため、低血糖や体重増加・肥満といった副作用が発現しにくいといわれています。
SGLT2阻害薬には適度な利尿作用もありますので、それによって体液量の低下・心保護作用・腎保護作用が得られるのかもしれませんね。その他にも様々な作用が示唆1)されていますが、まだ詳しくは分かっていないようです。
2型糖尿病を合併するCKDのエビデンス紹介:CREDENCE試験
2型糖尿病を合併するCKDの根拠となった試験をご紹介します(CREDENCE試験)2)。
本試験は アルブミン尿を有する慢性腎臓病を伴う2型糖尿病患者さんを対象に、カナグルとプラセボを比較した国際共同第Ⅲ相試験です(日本人を含む)。
本試験の主要評価項目は「末期腎不全、血清クレアチニン倍化、腎臓または心血管系が原因の死亡、の複合アウトカム」とされ、結果は以下の通りでした。
カナグル群 | プラセボ群 | |
複合アウトカムの発生率 (1,000患者年あたり) |
43.2件 | 61.2件 |
HR=0.70(95%CI:0.59-0.82) P=0.00001 |
心血管死・心筋梗塞・脳卒中の複合発生リスクや、心不全による入院リスクも減少していたとのことです。
心保護作用については他のSGLT2阻害薬のフォシーガやジャディアンスでも示されているので、納得ですね。
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ジャディアンス(エンパグリフロジン)の作用機序【糖尿病/心不全/CKD】
まとめ・あとがき
カナグルはこんな薬
- 2型糖尿病に使用するSGLT2阻害薬
- SGLT2を阻害することでブドウ糖の排泄を促進する
- 今後は2型糖尿病を合併したCKDにも使用が期待される
近年、SGLT2阻害薬の幅広い作用が期待され、様々な疾患で開発が進行しています。
- フォシーガ(ダパグリフロジン):左室駆出率の低下した慢性心不全、慢性腎臓病
- ジャディアンス(エンパグリフロジン):左室駆出率によらない慢性心不全
以上、今回はカナグルと糖尿病、慢性腎臓病について解説しました。同効能・効果を有するケレンディア(フィネレノン)も併せてご確認ください♪
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ケレンディア(フィネレノン)の作用機序・特徴【糖尿病合併CKD】
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SGLT2阻害薬の作用機序・副作用と一覧まとめもぜひご覧ください。
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【糖尿病】SGLT2阻害薬の作用機序・副作用と一覧まとめ(単剤と配合剤)
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