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2020年5月29日、オフェブカプセル(ニンテダニブ)の効能・効果に「進行性線維化を伴う間質性肺疾患」が追加されました!
ベーリンガーインゲルハイム|ニュースリリース
基本情報
製品名 | オフェブカプセル100mg/150mg |
一般名 | ニンテダニブエタンスルホン酸塩 |
製品名の由来 | 特になし |
製造販売 | 日本ベーリンガーインゲルハイム(株) |
効能・効果 | ●特発性肺線維症 ●全身性強皮症に伴う間質性肺疾患 ●進行性線維化を伴う間質性肺疾患 |
用法・用量 | 通常、成人にはニンテダニブとして1回150mgを1日2回、朝・夕食後に経口投与する。 なお、患者の状態によりニンテダニブとして1回100mgの1日2回投与へ減量する。 |
オフェブは2015年7日3日に「特発性肺線維症」に対する初の分子標的治療薬として承認され、その後、2019年12月20日に「全身性強皮症に伴う間質性肺疾患」への適応拡大が承認されています。
今回は特発性肺線維症、全身性強皮症に伴う間質性肺疾患、そしてオフェブ(ニンテダニブ)の作用機序についてご紹介します。
特発性肺線維症とは
特発性肺線維症(IPF:Idiopathic Pulmonary Fibrosis)は、原因不明の間質性肺炎(特発性間質性肺炎)の一つに分類されている疾患で、国の難病に指定されています。1)
参考:IPFの読み方は「アイピーエフ」です。
参考:特発性間質性肺炎の分類
- 特発性肺線維症(IPF)
- 特発性非特異性間質性肺炎(特発性NSIP)
- 呼吸細気管支炎を伴う間質性肺炎(RB-ILD)
- 剥離性間質性肺炎(DIP)
- 特発性器質化肺炎(COP)
- 急性間質性肺炎(AIP)
- 特発性リンパ球間質性肺炎(特発性LIP)
- 特発性上葉肺線維症(特発性PPFE)
特発性肺線維症は、肺の不可逆的な高度な線維化を主体とし、拘束性換気障害をきたす慢性かつ進行性の疾患です。
明確な原因は不明ですが、肺全体が線維化によって固くなってしまい、うまく酸素交換ができなくなってしまいます。
このため、呼吸機能が徐々に低下し、息切れや咳などの症状を呈し、日常の身体活動にも支障が生じます。
自覚症状(息切れや空咳など)が認められてからの生存期間は、個人差がありますが平均3~5年と深刻です。
また、高確率で肺がんを合併することが知られています。
特発性肺線維症の治療
治療薬としては抗線維化剤のピレスパ(一般名:ピルフェニドン)や、ステロイド、免疫抑制剤等があります。その他には咳の対処療法として、鎮咳薬が処方されることもあります。
しかし、これらの薬剤を使用しても進行を遅らせる効果は期待できますが、根治させることはまだ難しいとされる疾患です。
全身性強皮症とは
全身性強皮症は、全身の皮膚や組織が線維化して固くなる疾患で、国の難病に指定されています。2)
また、男女比は1:12であり、30~50歳代の女性に多く見られるのが特徴です。
線維化する臓器によって以下のような症状を呈しますが、最も多いのが「肺線維症(間質性肺疾患)」です。
- レイノー症状:手指が蒼白~紫色になる症状。
- 皮膚硬化:手のこわばりを伴う。
- 他の皮膚症状:爪上皮の黒い出血点、指先の少しへこんだ傷痕、指先や関節背面の潰瘍、毛細血管拡張、皮膚の石灰沈着、等。
- 肺線維症:呼吸困難によって酸素吸入を必要とすることもある。
- 強皮症腎クリーゼ:腎臓の血管に障害が起こり、その結果高血圧が生じるもの
- 逆流性食道炎:食道下部が硬くなり、その結果胃酸が食道に逆流して起こるもの
しかし、有効な薬剤はなく、対処療法(ステロイド、ミコフェノレートモフェティル、シクロホスファミド、PPI、エンドセリン受容体拮抗薬)が行われています。2-3)
-
【肺動脈性高血圧症】エンドセリン受容体拮抗薬の作用機序と一覧・使い分け
続きを見る
肺の線維化に関与している線維芽細胞
特発性肺線維症や全身性強皮症の間質性肺疾患の発症には、線維芽細胞の増殖が関与していると考えられています。
通常、肺が炎症等で傷を受けると、繊維芽細胞が集まってきてコラーゲンなどを産生することで傷を修復します。
しかし、長期間の炎症によって傷が出来ると、繊維芽細胞が常に活性化してしまい、コラーゲンなどによって、肺の線維化が起こります。
繊維芽細胞の表面には
- 血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)α及びβ
- 線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)1~3
- 血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)
が存在していますが、これらの受容体が刺激されることで繊維芽細胞が増殖・活性化され、肺の線維化が進行していきます。
オフェブ(ニンテダニブ)の作用機序
今回紹介するオフェブは、線維芽細胞の増殖に関与するPDGFR、FGFR、VEGFRを選択的に阻害する薬剤です!
上記の受容体を阻害することで線維芽細胞の増殖・活性化を抑制し、特発性肺線維症や全身性強皮症に伴う間質性肺疾患の進行を抑えられると考えられます。
全身性強皮症のエビデンス紹介:SENSCIS試験
全身性強化症に伴う間質性肺疾患のエビデンスをご紹介します。
本試験は7年以内に最初の症状(レイノー症候群を除く)を発症した全身性強皮症に伴う間質性肺疾患の患者さんを対象に、プラセボとオフェブを直接比較する国際共同第Ⅲ相臨床試験(日本人含む)です。4)
本試験の主要評価項目は「投与52週後のFVC*年間低下量」とされました。
試験群 | プラセボ | オフェブ |
投与52週後の FVC年間低下量 |
-93.3mL | -52.4mL |
差:41.0mL, p=0.04 |
*FVC(努力肺活量):最大吸気位から、努力呼出して最後まで吐ききったときに、吐き出すことのできた息の量のこと
進行性線維化を伴う間質性肺疾患のエビデンス紹介:INBUILD試験
進行性線維化を伴う間質性肺疾患のエビデンスをご紹介します。5)
本試験は、肺容量の10%を超える領域に線維化がみられる間質性肺疾患患者さんを対象にプラセボとオフェブを直接比較する国際共同第Ⅲ相臨床試験(日本人含む)です。
主要評価項目は「投与52週後のFVC年間低下量」で、結果は下表の通りでした。
試験群 | プラセボ | オフェブ |
投与52週後の FVC年間低下量 |
-187.8mL | -80.8mL |
差:107.0mL, p<0.001 |
こちらの試験でもオフェブによって有意な改善が認めらていますね。
あとがき
オフェブは特発性肺線維症で初の分子標的治療薬として登場しました。
全身性強皮症に伴う間質性肺疾患や進行性線維化を伴う間質性肺疾患にも治療効果が期待されていますね。
これらの疾患は治療選択肢が少なかったため、患者さんにとっては朗報かと思います!
以上、本日は特発性肺線維症と全身性強皮症に伴う間質性肺疾患に対するオフェブ(ニンデダニブ)を紹介いたしました。
引用文献・資料等
- 難病情報センター | 特発性間質性肺炎(指定難病85)
- 難病情報センター | 全身性強皮症(指定難病51)
- 全身性強皮症診療ガイドライン 2012
- SENSCIS試験(全身性強皮症):N Engl J Med 2019; 380:2518-2528
- INBUILD試験(間質性肺疾患):N Engl J Med 2019; 381:1718-1727
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