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2014年7月4日、厚生労働省は「慢性閉塞性肺疾患の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解」を効能・効果とするアノーロエリプタ吸入用(一般名:ウメクリジニウム臭化物/ビランテロールトリフェニル酢酸塩)を承認しました。
製薬会社
- 製造販売元(輸入):グラクソ・スミスクライン(株)
本剤は、
- 長時間作用性抗コリン薬(LAMA)のウメクリジニウム
- 長時間作用性β2刺激薬(LABA)のビランテロール
を配合した薬剤です。
ちなみに、LAMAは“ラマ”、LABAは“ラバ”と読みます。
今回は慢性閉塞性肺疾患(COPD)とアノーロエリプタの作用機序についてご紹介します。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは
慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)とは、喫煙を主な原因として発症する肺の炎症性疾患です。
基本的には不可逆的の慢性疾患で、徐々に症状が進行していきます。
主な症状は、咳、痰や動作時の呼吸困難などで、患者さんのQOLが著しく低下するだけでなく、症状の進行によって、やがては呼吸不全を起こし、生命を脅かす可能性のある病気です。
ではここで、COPDがどのような症状か体験してみたいと思います。
まず息を大きく吸って下さい。そのまま吐かずに吸って吸って吸って・・・・。
ちょっと吐いて下さい。
そしたらまた吸って吸って吸って・・・。ちょっと吐いてください。これを繰り返します。
このような状態がずっと続くのがCOPDの主な症状だとお考えください。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の原因と病態
COPDの最大の原因は喫煙です。
喫煙者の15~20%がCOPDを発症すると言われています。従って、発症予防としては「禁煙」が最も効果的です。
喫煙によって気管支に炎症が生じ、それに伴い気管支平滑筋の収縮や肥厚(平滑筋が厚くなってしまう)してしまいます。
また、喫煙による痰も絡みやすくなり、次第に気管支は狭窄していってしまいます。
進行してしまうと、酸素を取り込む肺胞自体も炎症によって破壊され、呼吸機能が低下していってしまいます。
呼吸機能が低下しすぎてしまうと、人工呼吸器を用いることもあります。
気管支平滑筋の収縮と弛緩(拡張)
通常、気管支平滑筋の収縮や弛緩(拡張)は副交感神経と交感神経によって調節されています。
- 副交感神経:平滑筋の収縮
- 交感神経:平滑筋の弛緩(拡張)
副交感神経から産生される「アセチルコリン」が平滑筋の「アセチルコリンM3受容体」に作用することで平滑筋が収縮します。
また、交感神経から産生される「ノルアドレナリン」が平滑筋の「アドレナリンβ2受容体」に作用することで平滑筋が弛緩(拡張)します。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療
COPDの治療の基本は気管支拡張薬による薬物療法が中心です。
主な気管支拡張薬には以下があります。
- 抗コリン薬
- β2刺激薬
- テオフィリン薬
また、上記薬剤は基本的には「吸入」で使用し、長時間持続タイプのものが使用されます。
抗コリン薬の長時間持続タイプを「LAMA」、β2刺激薬長時間持続タイプを「LABA」と呼んでいます。
治療を開始する際には、LAMAやLABAを単剤から使用していきますが、最近ではLAMAの単剤が第一選択として推奨されています。
単剤で治療効果が不十分な場合に併用療法(LAMA+LABA)が検討されますが、症状や重症度によっては最初から併用療法が行われることもあります。
その他にも症状に応じて吸入ステロイド薬が適宜併用して使用されることもあります。
今回ご紹介するアノーロエリプタはLAMAとLABAを配合した薬剤です!
アノーロエリプタ(ウメクリジニウム/ビランテロール)の作用機序
アノーロエリプタは、
- 長時間作用性抗コリン薬(LAMA)のウメクリジニウム
- 長時間作用性β2刺激薬(LABA)のビランテロール
を配合した薬剤です。
ウメクリジニウムの作用機序
ウメクリジニウムは抗コリン薬に分類されています。
アセチルコリンM3受容体を遮断することで気管支平滑筋の収縮を抑制し、気管支を拡張するといった作用機序を有しています。
ビランテロールの作用機序
ビランテロールはβ2刺激薬に分類されています。
アドレナリンβ2受容体を刺激することで気管支平滑筋を弛緩(拡張)させるといった作用機序を有しています。
このように、アノーロエリプタはLAMAとLABAを配合することで、共に気管支を拡張させるといった作用機序を有しています。
これによって、COPDで狭窄した気管支を広げ、呼吸機能の緩和が期待されています。
アノーロエリプタの副作用と注意事項
主な副作用として、頭痛、口内乾燥、咳嗽、味覚異常などが報告されていますが、いずれも頻度は高くありません。
また、本剤は抗コリン薬のウメクリジニウムを配合していることから、下記の患者さんには投与禁忌です。
- 閉塞隅角緑内障の患者さん
- 前立腺肥大等による排尿障害がある患者さん
共に、抗コリン作用によって、悪化する可能性があるためです。
アノーロエリプタの用法・用量
アノーロエリプタ1吸入を1日1回吸入投与します。
なお、吸入する時間帯は、なるべく同じ時間帯に吸入することが望ましいとされています。
あとがき
LAMA/LABA配合薬はすでにウルティブロ吸入用カプセルが承認されていますので、アノーロエリプタ吸入用は2剤目になります。
1日1回の吸入でLAMAとLABAが投与できますので、患者さんにとっては簡便な方法だと思います。
最後に・・・COPDは喫煙をしなければほぼ発症しない病気です。もし喫煙されている方がいらっしゃれば、今のうちから禁煙をお勧めいたします☆
以上、今回はCOPDとアノーロエリプタの作用機序についてご紹介しました。
2019年には4製品目のLAMA/LABA配合剤も承認されましたので、4製品の比較表も下記記事で紹介しています。
-
ビベスピ(LAMA/LABA)の作用機序:ウルティブロ、アノーロとの違い・比較【COPD】
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