2021年12月22日、厚労省の薬食審医薬品第一部会にて「アルツハイマー型認知症」を対象疾患とするアデュヘルム(アデュカヌマブ)の承認可否が審議されましたが、残念ながら継続審議となりました。
エーザイ|申請のニュースリリース
現時点では未承認のためご注意ください。
基本情報
製品名 | アデュヘルム |
一般名 | アデュカヌマブ |
製品名の由来 | |
製薬会社 | 製造販売:バイオジェン・ジャパン(株) 販売:エーザイ(株) |
効能・効果 | アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度のアルツハイマー型認知症の進行抑制? |
用法・用量 | 4週に1回点滴静注? |
収載時の薬価 | |
発売日 |
米国でも既に承認されていますが、臨床試験の結果がスッキリするものではなかったため、なかなか治療は浸透していないようです。
- 申請の根拠とされた2つの国際共同第Ⅲ相試験の結果に一貫性が無いこと
- 探索的な評価項目である脳内アミロイドβプラーク低下の臨床的意義が確立していないこと
- 本剤の投与によって、脳の浮腫や出血などがみられること
【引用】厚労省|医薬品第一部会 審議の概要について
追加の試験が必要とのことで、承認までの道のりはかなり伸びたと考えられます。レケンビ(レカネマブ)の方が登場が早いかもしれませんね。
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レケンビ(レカネマブ)の作用機序【アルツハイマー型認知症】
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今回はアルツハイマー型認知症とアデュヘルム(アデュカヌマブ)の作用機序について解説します。
目次(クリック可)
物忘れとアルツハイマー型認知症
物忘れには「加齢」によるものと「認知症」が原因となるものがあります。
加齢によるものは、脳の生理的な老化が原因で起こり、その程度は一部の物忘れであり、ヒントがあれば思い出すことが可能です。本人にも自覚はありますが、進行することはなく、日常生活にも支障は無いと言われています。
一方、認知症は脳の神経細胞の急激な破壊により起こり、物事全体がすっぽりと抜け落ち、ヒントがあっても思い出すことができません。本人に自覚はないことが一般的で、進行性かつ日常生活に支障をきたします。
このような認知症の中でも最も多いのが「アルツハイマー型認知症」で、認知症全体の約6割を占めています。1)
一般的に認知症=アルツハイマーと認識をされる方も多いと思いますが、認知症の中には、脳血管障害によって発現するものや、レビー小体と呼ばれる物質によって発現するもの、等もあります。
アルツハイマー型認知症の原因と検査
アルツハイマー型認知症は、脳内の神経細胞に「アミロイドベータ(Aβ)」や「タウ(tau)」と呼ばれる特殊なタンパク質が溜まって神経細胞が死んでしまうことによって認知障害が起こると考えれています。
特にAβはアルツハイマー型認知症の発症に重要ですね。
元々はAPP(アミロイド前駆体タンパク質)と呼ばれるタンパク室からβ/γセクレターゼによって切り出され、その後、次第に重合していって毒性の高い凝集体を形成し、やがては老人斑となってアルツハイマー型認知症を発症します。
現時点では、「タウ」を検出することはできませんが、「Aβ」の検出は、検査薬とPET検査を行うことで可能です。具体的にはビザミル静注(フルテメタモル)やアミヴィッド静注(フロルベタピル(18F))などがありますね。
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ビザミル(フルテメタモル)の作用機序【アルツハイマー検査薬】
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治療
治療の基本は薬物治療です。1)
できるだけ早期に発見して早期に治療を行うことで、進行を抑制することが可能で、使用可能な薬剤には以下のものがあります。
- アセチルコリンエステラーゼ阻害薬:ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン
- NMDA受容体拮抗薬:メマンチン
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アリセプト(ドネペジル)の作用機序【認知症】
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中心となるのはアセチルコリンエステラーゼ阻害薬ですね。単剤から使用し、効果不十分な場合には他のアセチルコリンエステラーゼに切り替えたり、メマンチンと併用したりします。
今回ご紹介するアデュヘルムは早期のアルツハイマー型認知症に使用することで、上記薬剤と同様に認知の進行抑制効果が期待されています!
アデュヘルム(アデュカヌマブ)の作用機序と特徴:BBBを通過する抗Aβ抗体
アデュヘルムはAβを標的とする抗Aβ抗体薬です!
点滴静注によって血管内に投与された後、血液脳関門(BBB)を用量依存的に突破して脳組織内に移行します。2)
何らかのトランスポーターの関与も示唆されていますね3)。不思議。
ただし、BBBを通過することによってBBBが破壊され、アミロイド関連画像異常(ARIA:Amyloid-related imaging abnormalities)を引き起こす可能性も示唆されているので注意が必要かもしれません。3-4)
ARIAには主に以下の2つが知られています。
- ARIA-E:血液脳関門の内皮接合部の破壊とそれに続く体液の蓄積を伴う脳浮腫
- ARIA-H:脳微小出血と呼ばれる小さな出血
さて、脳組織に到達したアデュヘルムは神経細胞のAβ(特に凝集体)に結合し、その働きと凝集を抑制すると考えられています。その結果、Aβ量の減少効果、進行抑制効果が期待されますね!
エビデンス紹介:EMERGE試験、ENGAGE試験
根拠となった臨床試験をご紹介します。
アミロイドの蓄積が確認されたアルツハイマー型認知症の初期段階(軽度認知障害および軽度認知症)の患者さんを対象とした2つの第Ⅲ相臨床試験(EMERGE試験、ENGAGE試験)が行われましたが、いずれも中間解析において主要評価項目を達成する見込みが低かったため中止されています。
エーザイ|バイオジェンとエーザイ、アルツハイマー病を対象としたアデュカヌマブの臨床第III相国際共同試験(ENGAGE試験、EMERGE試験)を中止
しかし、その後、追加で追跡調査が行われ、EMERGE試験の高用量群においてのみ有効性が確認されました。4)
今回は代表としてEMERGE試験について簡単に紹介していきましょう。本試験の主要評価項目は「投与78週におけるベースラインからのCDR-SBの変化量*」とされ、結果は以下の通りでした。
プラセボ | アデュヘルム 低用量群 |
アデュヘルム 高用量群 |
|
CDR-SBの変化量 | 1.74 | -0.26 | -0.39 |
- | プラセボとの差 p=0.0901 |
プラセボとの差 0.0120 |
|
ARIA-E(脳浮腫) | 2.2% | 25.7% | 34.0% |
ARIA-H(微少出血) | 6.9% | 16.2% | 18.6% |
*CDR-SB(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes):臨床認知症評価尺度
CDR-SBはプラセボと比較してアデュヘルム高用量群で有意に改善していたものの、やはりARIA関連の有害事象は注意する必要がありそうですね。用量依存的に発現頻度が高くなっています・・・。
この他、アミロイドプラーク沈着のイメージングでは、アデュヘルム低用量群・高用量群の両群において、投与26週および投与78週でプラセボ投与群と比較して、アミロイドプラーク沈着の減少が確認されていました(P<0.001)。
副作用:ARIA関連の有害事象には注意
後日更新予定です。
ARIA関連の有害事象には注意する必要がありそうです。
用法・用量
後日更新予定です。
臨床試験では4週間に1度、1時間かけて点滴静注されていました。
収載時の薬価
現時点では未承認かつ薬価未収載です。
まとめ・あとがき
アデュヘルムはこんな薬
- 抗Aβ抗体で、BBBを通過して脳内のAβを特異的に阻害する
- 4週間に1度の点滴静注
- ARIA関連有害事象には注意が必要
アルツハイマー型認知症はこの数十年間、様々な薬剤開発が行われましたが、残念ながら全て失敗しています。
同様の作用機序として期待されている薬剤としてレケンビ(レカネマブ)がありますので、併せて確認してみてください♪
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レケンビ(レカネマブ)の作用機序【アルツハイマー型認知症】
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以上、今回はアルツハイマー型認知症とアデュヘルム(アデュカヌマブ)の作用機序について解説しました!
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