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2025年11月27日、厚労省の薬事審議会・医薬品第二部会にて「ESR1遺伝子変異の乳がん」を対象疾患とするイムルリオ錠(イムルネストラント)の承認可否が審議される予定です!
日本イーライリリー|米国承認のニュースリリース
現時点では未承認のためご注意ください。
基本情報
| 製品名 | イムルリオ錠200mg |
| 一般名 | イムルネストラントトシル酸塩 |
| 製品名の由来 | |
| 製造販売 | 日本イーライリリー(株) |
| 効能・効果 | ESR1遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳がん |
| 用法・用量 | 1日1回経口投与? |
| 収載時の薬価 | |
| 発売日 |
ホルモン受容体陽性かつHER2陰性乳がんでは、ホルモン療法としてアロマターゼ阻害薬が使用されますが、その耐性遺伝子であるESR1遺伝子変異が認められる場合に使用可能となります。
今回は乳がんと共に、イムルリオ(イムルネストラン)の作用機序・エビデンスについて解説していきます。
乳がんの概要
2011年の女性乳がんの罹患数は約72,500人と、女性のがんの中では最も多く、約20%を占めると言われています。
手術で取り切れるような早期の乳がんでは、5年生存率は80%を超えます(StageⅠ~Ⅱでは90%を超える)ので、治癒することが可能な比較的予後の良いがんとして知られています。
ただし、発見時に手術ができない(手術不能)の乳がんや、再発した乳がんでは5年生存率は30%と、治癒を見込むのは難しくなってしまいます(基本的には延命)。
従って、日頃の観察やがん検診(マンモグラフィや超音波検査)によって、できるだけ早期に発見することが非常に重要です!!!
また、乳がんの発生には女性ホルモンのエストロゲンが深く関わっていることが知られていて、多くの場合、ホルモン受容体(エストロゲン受容体)陽性の乳がんです。

その他、乳がんの15%~25%は「HER2(“ハーツー”と読みます)」と呼ばれるタンパク質が細胞膜に発現していることもあり、従来は予後不良と言われていました。

早期の乳がんの治療
早期の乳がんは基本的には手術によって完全に取り除くことが可能です。
早期乳がんの中でも術後に再発リスクが高いと診断された患者さんでは、術後にホルモン療法や抗がん剤によって再発を抑える薬物療法(初期治療)が行われることがあります。
治療法については、以下の記事をご参照ください。
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フェスゴ配合皮下注(ペルツズマブ/トラスツズマブ)の作用機序【乳がん/大腸がん】
続きを見る
転移のある乳がんの治療(手術不能)
発見時に転移がある乳がんの場合、手術はできませんので、薬物療法(ホルモン療法、抗がん剤、分子標的薬)が基本となります。
転移のある乳がんの場合も、がん細胞の性質によって薬物療法の種類が異なります。
- ホルモン陽性の乳がん:ホルモン療法(タモキシフェンやアロマターゼ阻害薬など)±CDK4/6阻害薬
- HER2陽性の乳がん:ハーセプチン±パージェタ±抗がん剤
- ホルモンもHER2も陰性の乳がん(トリプルネガティブ乳がん):抗がん剤±免疫チェックポイント阻害薬
最も多いとされるのが、①「ホルモン陽性の乳がん」で、この場合はホルモン療法が基本で、可能であればCDK4/6阻害薬を併用します。
なお、ホルモン療法は、閉経前であればタモキシフェンが使用され、閉経後であればアロマターゼ阻害薬が使用されます。
また、近年ではCDK4/6阻害薬を併用する場合、閉経前であってもアロマターゼ阻害薬が使用されるケースがありますね(アロマターゼ阻害薬の添付文書上は適応外に該当)。1)
アロマターゼ阻害薬は、アンドロゲンをエストロゲンに変換する酵素であるアロマターゼを選択的に阻害する薬剤です。
しかしながら、アロマターゼ阻害薬の治療に耐性を示すことがしばしばあり、その機序として知られているのが「ESR1遺伝子変異」1-2)です。この遺伝子に変異があると、エストロゲンがなくてもエストロゲン受容体が恒常的に活性化してしまいます。

ESR1遺伝子変異によって耐性を獲得されてしまうと、アロマターゼ阻害薬を投与したとしても、がんの増殖を抑制できなくなってしまいます。
今回ご紹介するイムルリオは、
- アロマターゼ阻害薬による治療歴があり、
- ESR1遺伝子変異を有する
- ホルモン受容体陽性・HER2陰性の乳がん
に対して、単剤またはCDK4/6阻害薬のベージニオ(アベマシクリブ)と併用することで効果が期待されていますよー!!
ちなみに、同治療ラインにおいてPIK3CA、AKT1、PTEN遺伝子変異がある場合には、AKT阻害薬のトルカプ(カピバセルチブ)が使用可能です。
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トルカプ(カピバセルチブ)の作用機序【乳がん】
続きを見る
参考までに、「②HER2陽性の乳がん」や「③ホルモンもHER2も陰性の乳がん(トリプルネガティブ乳がん)」の場合は以下の記事をご参照ください。
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エンハーツ(トラスツズマブ デルクステカン)の作用機序【乳/胃/肺がん】
続きを見る
イムルリオ(イムルネストラン)の作用機序:経口投与可能なSERD
イムルリオは、フェソロデックス(フルベストラント)と同じく選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD:Selective estrogen receptor degrader)に分類されています。
ESR1遺伝子変異によってアロマターゼ阻害薬に対する抵抗性があったとしても、エストロゲン受容体そのものを分解するため、がん細胞の増殖を抑制できると考えられていますね。

また、類薬のフェソロデックスは注射剤(筋肉内投与)でしたが、イムルリオは経口投与可能な初のSERDです。
エビデンス紹介:EMBER-3試験
根拠となった臨床試験(EMBER-3試験)をご紹介します。3-4)
本試験は、アロマターゼ阻害薬単独またはCDK4/6阻害薬と併用治療中に抵抗となったホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能・再発乳がん患者さんを対象に、以下の3群を比較する国際共同第Ⅲ相臨床試験です(日本を含む)。
登録時はESR1遺伝子変異の有無は問わない
- 標準内分泌療法(治験医師がエキセメスタンまたはフルベストラントを選択)
- イムルリオ単剤療法
- イムルリオ+ベージニオ(アベマシクリブ)併用療法
主要評価項目は、「ESR1遺伝子変異を有する集団において標準内分泌療法に対するイムルリオ単剤療法のPFSにおける優越性(下表①)」、および「全体集団においてイムルリオ単剤療法に対するイムルリオ+ベージニオのPFSにおける優越性(下表②)」とされ、結果は以下の通りでした。
| 標準内分泌療法 | イムルリオ単剤療法 | |
| ESR1遺伝子変異集団における PFS中央値 ・・・① |
3.8か月 | 5.5か月 |
| HR=0.617(95%CI:0.464-0.821)、 p=0.0008 |
||
| 全体集団における PFS中央値 |
5.5か月 | 5.6か月 |
| HR=0.87(95%CI:0.72-1.04)、 p=0.12 |
||
| イムルリオ単剤療法 | イムルリオ+ ベージニオ併用療法 |
|
| 全体集団における PFS中央値 ・・・② |
5.5か月 | 9.4か月 |
| HR=0.57(95%CI:0.44-0.73)、 p<0.001 |
||
*PFS(無増悪生存期間):がんが増悪するまでの期間
ESR1遺伝子変異がある場合、イムルリオ単剤療法はフルベストラントなどの標準内分泌療法と比較して有意なPFSの延長が認められていますね。ただし、全体集団においては治療効果は同程度でした。
一方、イムルリオ+ベージニオ併用療法は、ESR1遺伝子変異の有無によらず、イムルリオ単剤療法よりも有意なPFSの延長が認められました。
なんとなく、イムルリオ+ベージニオ併用療法であれば遺伝子変異の有無によらず使用しても良さそうな気はします。
全生存期間については未報告のため、今後の追加解析が望まれますね。
用法・用量
正式承認後に更新予定です。
臨床試験では、1日1回経口投与とされていました。
副作用
正式承認後に更新予定です。
収載時の薬価
現時点では未承認かつ薬価未収載です。
まとめ・あとがき
イムルリオはこんな薬
- 国内初の経口のSERD(選択的エストロゲン受容体分解薬)
- アロマターゼ阻害薬抵抗性のホルモン受容体陽性・HER2陰性乳がんに対して効果が期待
- ESR1遺伝子変異を有する場合、単剤で効果が期待(ベージニオ併用療法も可)
CDK4/6阻害薬が登場して以来、ホルモン受容体陽性かつHER2陰性乳がんの初回治療としては、CDK4/6阻害薬+ホルモン療法(アロマターゼ阻害薬など)が基本となりました。
しかし、上記の治療でもいずれは抵抗性が認められるため、新たな治療選択肢が望まれていました。
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ベージニオ(アベマシクリブ)の作用機序:イブランスとの違い/比較【乳がん】
続きを見る
これまで、SERDには注射剤のフェソロデックス(フルベストラント)しかありませんでしたが、イムルリオは経口投与可能なSERDのため、新たな治療選択肢として期待できるのではないでしょうか。
以上、今回は乳がんと共に、イムルリオ(イムルネストラン)の作用機序・エビデンスについて解説しました!
引用文献・資料等
- 乳癌診療ガイドライン2022年版
- 内分泌外会誌 36(2):96-100,2019
- EMBER-3試験:N Engl J Med 2025;392:1189-1202
- EMBER-3試験:NCT04975308 > results
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