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ボラニゴ(ボラシデニブ)の作用機序【神経膠腫】

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2025年8月22日、厚労省の薬事審議会・医薬品第二部会にて「IDH1又はIDH2遺伝子変異陽性の神経膠腫」を対象疾患とするボラニゴ錠(ボラシデニブ)の承認可否が審議される予定です!

日本セルヴィエ|申請のニュースリリース

現時点では未承認のためご注意ください。

基本情報

製品名 ボラニゴ錠10mg/40mg
一般名 ボラシデニブ クエン酸水和物
製造販売 日本セルヴィエ(株)
効能・効果 IDH1又はIDH2遺伝子変異陽性の神経膠腫?
用法・用量 1回40mgを1日1回経口投与?
収載時の薬価
発売日

 

神経膠腫こうしゅは治療選択肢が非常少ない疾患です。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
ボラニゴは当疾患初の選択的IDH阻害薬のため、新たな治療選択肢として期待されています!

 

同様の作用機序を有するティブソボ(イボシデニブ)は血液領域などで既に使用されていますね。

ティブソボ(イボシデニブ)の作用機序【AML/胆道がん】

続きを見る

 

今回は神経膠腫こうしゅボラニゴ(ボラシデニブ)の作用機序、エビデンスについてご紹介します。

 

悪性神経膠腫とは

脳内には神経細胞が多数存在していますが、その中でも栄養供給や神経伝達物質の伝達などを担う神経膠細胞こうさいぼう(別名:グリア細胞)が存在しています。

神経膠腫はこのグリア細胞が腫瘍化することで引き起こされる疾患で、グリオーマとも呼ばれてています。1)

がん情報サービス|神経膠腫(グリオーマ)について

 

神経膠腫におけるIDH1/IDH2遺伝子変異

最近、神経膠腫の約70%IDH1/IDH2遺伝子変異があることが分かってきました。2)

神経膠腫におけるIDH1/IDH2遺伝子変異の割合は約70%

 

木元 貴祥
木元 貴祥
IDH(イソクエン酸デヒドロゲナーゼ)はあまり聞きなれないかもしれませんが、皆さんよくご存じのクエン酸回路の中に出てくる酵素ですよ~。

 

ミトコンドリア内における正常なIDHは、イソクエン酸をα-ケトグルタル酸に変換していますが、IDH1やIDH2遺伝子に変異があると、異常なIDH1/IDH2が産生されます。

この異常なIDH1/IDH2は、イソクエン酸を2-ヒドロキシグルタル酸(2-HG)に変換してしまい、これが発がんの原因およびがん細胞の増殖に寄与していると考えられています。

 

治療

神経膠腫はその悪性度によってグレード1~4に分類されていますが、グレード1は良性腫瘍です(基本、手術のみで完治)。そして、悪性度の高くなる2~4の治療は以下が一般的に行われています。1)

  • グレード2:手術±放射線療法±薬物療法
  • グレード3:手術+放射線療法+薬物療法(テモゾロミドなど)
  • グレード4:手術+放射線療法+薬物療法(テモゾロミド±ベバシズマブなど)

 

今回ご紹介するボラニゴは、IDH1またはIDH2遺伝子変異を有するグレード2の神経膠腫に対して効果が期待されています!

 

なお、グレード4は最も悪性度が高く、膠芽腫こうがしゅ(グリオブラストーマ)とも呼ばれています。近年、膠芽腫に対して腫瘍溶解性ウイルスのデリタクト(テセルパツレブ)が使用可能となりました。

デリタクト(テセルパツレブ):腫瘍溶解性ウイルスの作用機序【悪性神経膠腫】

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ボラニゴ(ボラシデニブ)の作用機序:IDH1/2阻害薬

ボラニゴは、異常なIDH1およびIDH2を選択的に阻害するIDH1/2阻害薬です。

異常なIDHが阻害されることで、がん細胞の増殖に寄与していた2-HGの産生が抑制され、がん細胞の増殖抑制効果が得られると考えられますね。

ボラニゴ(ボラシデニブ)の作用機序:IDH1/2阻害薬

 

エビデンス紹介:INDIGO試験

根拠となった臨床試験(INDIGO試験)をご紹介します。3)

本試験は手術以外の治療歴のないIDH1またはIDH2遺伝子変異を有するグレード2の神経膠腫患者さんを対象に、ボラニゴの有用性をプラセボ比較で検証した国際共同第Ⅲ相臨床試験です。

 

本試験の主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)」とされ、結果は以下の通りでした。

試験群 ボラニゴ群 プラセボ群
PFS中央値 27.7か月 11.1か月
HR=0.39[95%CI:0.27-0.56],
P<0.001
次回の治療介入までの
期間中央値
未到達 17.8か月
HR=0.26[95%CI:0.15-0.43],
P<0.001

 

木元 貴祥
木元 貴祥
ボラニゴ群でPFSの有意な延長が認められていますね。

 

副作用

後日更新予定です。

前述の臨床試験では、肝機能障害などが認められていました。

 

類薬のIDH1阻害薬であるティブソボ(イボシデニブ)では、重大な副作用として分化症候群QT延長などが挙げられているため、同様に注意が必要だと考えられます。

 

用法・用量

後日更新予定です。

基本的には、1回40mgを1日1回経口投与します。

 

収載時の薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

ボラニゴはこんな薬

  • 神経膠腫では初のIDH1/2阻害薬
  • IDH1またはIDH2遺伝子変異を有するグレード2の神経膠腫に使用する
  • 1日1回経口投与
  • 分化症候群やQT延長に注意が必要

 

神経膠腫は治療選択肢が非常少ない疾患のため、新たな治療選択肢が望まれていました。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
ボラニゴは当疾患初の作用機序を有しているため、新たな治療選択肢として期待できると思われます!

 

IDH遺伝子変異は他の腫瘍でも認められることがあるため、他疾患への応用も期待できそうですね。

 

以上、今回は神経膠腫と共に、ボラニゴ(ボラシデニブ)の作用機序やエビデンスについて解説しました!

 

引用文献・資料等

  1. がん情報サービス|神経膠腫(グリオーマ)
  2. 東京大学医科学研究所附属病院 脳腫瘍外科|神経膠腫(グリオーマ)
  3. INDIGO試験:N Engl J Med 2023;389:589-601

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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