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2026年8月26日、厚労省の薬事審議会・医薬品第一部会にて、「全身型重症筋無力症」を対象疾患とするクライジェファ皮下注(ゲフルリマブ)の承認可否が審議される予定です!
現時点では未承認のためご注意ください。
基本情報
| 製品名 | クライジェファ皮下注300mgオートインジェクター クライジェファ皮下注300mgシリンジ |
| 一般名 | ゲフルリマブ(遺伝子組換え) |
| 製品名の由来 | |
| 製造販売 | アレクシオンファーマ(株) |
| 効能・効果 | 全身型重症筋無力症(ステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効しない場合に限る) |
| 用法・用量 | 週1回の皮下投与? |
| 収載時の薬価 | |
| 発売日 |
作用機序・位置付けは、同疾患で既に承認されているアイマービー(ニポカリマブ)、ヒフデュラ配合皮下注/ウィフガート点滴静注(エフガルチギモド)、リスティーゴ皮下注(ロザノリキシズマブ)と似ていますね。
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ヒフデュラ/ウィフガート(エフガルチギモド)の作用機序【重症筋無力症】
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今回は重症筋無力症とクライジェファ(ゲフルリマブ)の作用機序、エビデンスについて解説していきます。
重症筋無力症とは
重症筋無力症(MG:myasthenia gravis)は難病に指定されている疾患で、神経と筋肉の境目(神経筋接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体(IgG)により破壊される自己免疫疾患です。
男女比は1:1.15でやや女性に多いのが特徴で、有病率は人口10万人あたり23.1人、患者数は29,210人とされています(2018年時点)。1)
症状としては、全身の筋力低下、易疲労性が出現し、特に眼瞼下垂(まぶたが下がってくる)、複視などの眼の症状をおこしやすいことが特徴です。
また、嚥下が上手く出来なくなる場合もあり、重症化すると呼吸筋の麻痺をおこし、呼吸困難を来すこともあります。
重症筋無力症の原因
通常、我々が筋肉を動かそうとする場合、神経筋接合部の運動神経の末端から「アセチルコリン」が放出され、これが筋肉の「アセチルコリン受容体」に結合することで筋肉が収縮します。
しかし、重症筋無力症の多くの患者さんでは何らかの原因でアセチルコリン受容体に対する自己抗体(AChR抗体)が産生されていることが知られています。
この自己抗体がアセチルコリン受容体に結合することで、アセチルコリンが結合できなくなってしまい、筋肉が収縮できなくなってしまいます(筋力の低下)。

その他にも、筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)に対する自己抗体(MuSK抗体)が原因となることも報告されています。2)
ちなみに、重症筋無力症のうち、AChR抗体陽性が約80~85%、MuSK抗体陽性は約5%とのこと2)です。ほとんどがAChR抗体陽性ですね。
重症筋無力症の治療
対症療法としてコリンエステラーゼ阻害薬が使用されることもありますが、治療の基本は免疫療法で、この病気の原因である自己抗体の産生を抑制したり、取り除く治療です。2)
第1選択は自己抗体の産生を抑制するステロイド薬、第2選択は免疫抑制薬(タクロリムス、シクロスポリン)、第3選択は免疫グロブリン静注療法または血漿交換療法です。
今回ご紹介するクライジェファは少なくとも1剤以上(コリンエステラーゼ阻害薬、ステロイド薬、免疫抑制薬)の治療が行われている場合、その後に使用することで治療効果が期待されています!
なお、免疫グロブリン大量静注療法・血液浄化療法による症状の管理が困難な場合にはソリリス(エクリズマブ)やユルトミリス(ラブリズマブ)が使用できます。
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ユルトミリス(ラブリズマブ)の作用機序:ソリリスとの違い【PNH】
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それではここから、クライジェファが関与する「補体活性化経路」についてご紹介します。
補体活性化経路
補体(Complement)とは、生体が病原菌などを排除する際に、抗体抗原反応などを補助する免疫システムです。
補体にはいくつかの種類があり、C1~C9で表されます。
詳細は割愛しますが、免疫が活性化する際に、「レクチン経路」、「古典的経路」、「第二経路」と呼ばれる経路によって、補体の「C3」が産生・活性化されます。
この補体C3は、補体C5を「C5a」と「C5b」に分解します。

重症筋無力症では、自己抗体が大量に産生されている状態のため、体内の免疫反応が活性化されています。それに伴い、補体活性化経路も過剰に活性化されている状態です。
そのため、補体C5aやC5bによって、様々な炎症反応や神経筋接合部の筋肉側の細胞破壊が引き起こされ、歩行しづらい、話しづらい、飲みこみづらい、呼吸しづらいといった深刻な症状を呈してしまいます。
また補体C5bは、その後も補体C6と複合体を形成し、いくつかの反応を引き起こした後に、細胞破壊も引き起こします。
ヒトIgG抗体とナノボディ(VHH抗体)
通常、国内の抗体薬と言えば、ヒトのIgG抗体を応用した医薬品ですよね。
IgG抗体は重鎖と軽鎖から構成されています。また、抗原との結合部位はFab領域と呼ばれ、この部位も重鎖と軽鎖から構成されています。
医薬品によっては、Fab領域のみのものもありますよね。例えば、加齢黄斑変性に使用するルセンティス(ラニビズマブ)やベオビュ(ブロルシズマブ)が代表です。
そして、ラクダ科の一部の動物が産生する抗体は、ヒトの抗体と構造が異なっていて、重鎖のみで構成されています(重鎖抗体)。
重鎖抗体の抗原結合部位のみを分離したものが「ナノボディ」です。3)
ナノボディというのはAblynx社の登録商標で、
- 「VHH抗体(variable domain of heavy chain of heavy chain antibody)」
- 「シングルドメイン抗体」
と呼ばれることもありますね。

ナノボディは通常のIgG抗体と比べて分子量が小さいため、従来なら作用できなかった部位にも作用が期待されている技術ですよー!
既に関節リウマチ領域では、ナノボディ製剤としてナノゾラ(オゾラリズマブ)が承認されています。
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ナノゾラ(オゾラリズマブ)の作用機序・特徴【関節リウマチ】
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クライジェファ(ゲフルリマブ)の構造と作用機序・特徴
クライジェファは以下の2つのナノボディを組み合わせた二量体構造を有しています。3)
- 抗T補体C5ナノボディ
- 抗血清アルブミンナノボディ

クライジェファは補体C5と結合し、重症筋無力症の原因となる補体C5の働きを抑制します。

作用機序的にはソリリス(エクリズマブ)やユルトミリス(ラブリズマブ)と同様ですね。
エビデンス紹介:PREVAIL試験
根拠となった臨床試験をご紹介します(PREVAIL試験)。4)
本試験は、現在の標準治療で十分な効果が得られない全身型重症筋無力症患者さん(抗AChR抗体陽性)を対象に、クライジェファとプラセボの有効性を比較した第Ⅲ相臨床試験です(日本人を含む)。
主要評価項目は「MG-ADLスコアのベースラインから26週時点までの変化量*」とされ、結果は以下の通りでした。
| 試験群 | クライジェファ群 | プラセボ群 |
| MG-ADLスコアのベースラインから 変化量 |
-4.2 | -2.6 |
| p<0.001 | ||
*MG-ADLスコア:重症筋無力症の重症度を評価するスコアで、合計点数が高いほど重症
副作用
正式承認後に更新予定です。
補体に関与する薬剤に共通する副作用として、髄膜炎菌感染症がありますので、クライジェファでも同様に注意が必要だと思われます。
用法・用量
正式承認後に更新予定です。
収載時の薬価
現時点では未承認かつ薬価未収載です。
まとめ・あとがき
クライジェファはこんな薬
- 全身型重症筋無力症(gMG)に用いる補体C5阻害薬
- 補体C5と血清アルブミンに結合する「二重結合ナノボディ」
- 週1回・在宅で自己皮下注射が可能
- 髄膜炎菌感染症に注意(投与前ワクチン接種が重要)
同様の位置付けで使用できるヒフデュラ(エフガルチギモド)やジルビスク(ジルコプラン)やリスティーゴ(ロザノリキシズマブ)との使い分けも気になるところですね。
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リスティーゴ皮下注(ロザノリキシズマブ)の作用機序【重症筋無力症】
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以上、今回は重症筋無力症とクライジェファ皮下注(ゲフルリマブ)の作用機序、エビデンスについて解説しました~!
参考資料・論文等
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