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2024年9月24日、「月経困難症」を効能・効果とするアリッサ配合錠が承認されました!
富士製薬工業|ニュースリリース
基本情報
製品名 | アリッサ配合錠 |
一般名 | エステトロール水和物/ドロスピレノン |
製品名の由来 | Alyssumの花を語源とし、花言葉の“美しさを超えた価値”“飛躍”に 由来するほか、女性名をイメージした名称 |
製薬会社 | 製造販売:富士製薬工業(株) 情報収集・提供:エムスリー(株) |
効能・効果 | 月経困難症 |
用法・用量 | 1日1錠を毎日一定の時刻に 定められた順に従って(ピンク色錠から開始する)28日間連続経口投与する。 以上28日間を投与1周期とし、出血が終わっているか続いているかにかかわらず、 29日目から次の周期の錠剤を投与し、以後同様に繰り返す。 |
収載時の薬価 | 1シート:5,056.80円 |
発売日 | 2024年12月3日(HP) |
アリッサ配合錠は、天然型エストロゲンのエステトロール(E4)を含有する国内初の新薬ですね!
既存のエチニルエストラジオール(EE2)含有の月経困難症治療薬と比較して、血管内皮細胞や肝臓への影響が少ないため、血栓症のリスクが低いことが期待されています。
今回は月経困難症とアリッサ配合錠の作用機序についてご紹介します。
月経困難症と症状
月経とは、いわゆる“生理”のことをいいます。
月経の際には通常、
- 下腹痛
- 腰痛
- 吐き気
- 頭痛
- 下痢
- 食欲不振
- お腹の張り
- うつ状態
- イライラ感
等が症状として現れますが、この症状が日常生活に支障をきたすほど酷くなった状態を「月経困難症」と呼んでいます。
月経困難症は原因によって以下の二種類に分類されています。
- 機能性月経困難症:思春期の若年女性に多く、原因疾患が存在しないにも関わらず症状が出る
- 器質性月経困難症:直接的な原因疾患が存在する(例:子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症など)
国内では約800万人以上の月経困難症患者さんがいらっしゃると推定されていますが、医療機関を受診している割合は約10%程と言われています。
子宮内膜症等が原因で引き起こされている場合もあるため、我慢せずに早めの受診が望ましいと思います。
ホルモンと月経困難症の原因
月経は子宮の内側の膜(子宮内膜)が剥がれ落ちて、それに伴って出血が起こる現象です。
月経は通常1か月の周期で起こり、この周期のことを「月経周期」と呼んでいます。
月経周期は複数のホルモンが複雑に作用することで調節されています。
以下に簡単なホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の体内濃度の変動を掲載しています。
排卵の少し前から受精に備え、プロゲステロン濃度が徐々に上昇し、子宮内膜が厚くなっていきます。
受精しない場合、エストロゲンとプロゲステロン濃度が急激に下がり、これをきっかけに子宮内膜が剥がれ落ちて月経となります。
さらに月経期間中にはプロスタグランジンと呼ばれる炎症物質が生成され、子宮を収縮させています。
月経困難症ではプロスタグランジンの過剰生成によって子宮が過度に収縮し、非常に強い痛みを伴います。
このように月経困難症は、体内ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)のバランス、そしてプロスタグランジンによって引き起こされると考えられています。
月経困難症の治療
治療の基本は以下のような薬物治療です。1)
- 非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)
- 低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP:low dose estrogen progestin)
- 漢方薬、鎮痙薬
- LNG-IUS(レボノルゲストレル放出子宮内システム:ミレーナ):LEPのアドヒアランスが不良な場合や血栓症リスクがある場合に使用されることがある
今回ご紹介するアリッサ配合錠はLEPに分類されていますね。
アリッサ配合錠の作用機序
アリッサ配合錠は、
- 天然型エストロゲンのエステトロール(E4)
- 合成黄体ホルモンのドロスピレノン
を配合した低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)です。
アリッサを投与することで、体内の黄体/卵胞ホルモン濃度が一定に保たれます。
また、ホルモン変動が抑制されることで、子宮収縮や痛みの原因物質であったプロスタグランジンの生成が抑制されます。
その結果、子宮収縮の緩和・痛みの緩和作用も得られると考えられます。
特徴:肝臓への影響が少ないため、血栓症のリスクが低い
天然型のエストロゲンにはE1~E4の4種類が知られています。2)
J Mammary Gland Biol Neoplasia. 2021 Sep;26(3):297-308.
これまでのLEPで配合されていたエストロゲンは、E2のエストラジオールを改良したエチニルエストラジオール(EE2)で、子宮・卵巣のエストロゲン受容体だけでなく、血管内皮細胞や肝臓の受容体にも作用すると考えられています(凝固系の亢進)。
そのため、高用量になればなるほど血栓症のリスクが高まります。
E4のエステトロールは、胎児の肝臓にて産生され、胎盤を通じて母体中に移行する天然型のエストロゲンです。
エステトロールは血管内皮細胞や肝臓のエストロゲン受容体には作用しないと考えられているため、血栓症のリスクを低減しながら月経困難症の治療が可能だと期待されています!3)
ただし、アリッサの審査報告書4)では以下の記載があるため、本当に血栓症のリスクが低いかどうかについては確定的ではありません。
国内第Ⅲ相試験(FSN-013P-03 試験及び FSN-013P-04 試験)では血栓症の発現は認められていないが、既存の EP 配合剤による血栓症の発現リスクに関する公表文献(BMJ 2009; 339: b2890)等を踏まえると、本剤の国内第Ⅲ相試験(FSN-013P-03 試験及び FSN-013P-04 試験)は、本剤による血栓症の発現リスクの多寡を評価しうる規模であったということは困難であり、現時点で本剤が既承認の LEP 配合剤と比較して血栓症の発現リスクが低い薬剤であるとは判断できない。
したがって、本剤による血栓症の発現リスクについては、適切な注意喚起を行う必要があると考える。
用法・用量
1日1錠を毎日一定の時刻に定められた順に従って(ピンク色錠から開始する)28日間連続経口投与します。
以上28日間を投与1周期とし、出血が終わっているか続いているかにかかわらず、29日目から次の周期の錠剤を投与し、以後同様に繰り返します。
副作用
5%以上に認められる副作用として、月経中間期出血(74.8%)、重度月経出血(16.8%)、希発月経、骨盤痛、乳房痛、悪心、頭痛などが報告されています。
重大な副作用としては、
- 血栓症(四肢、肺、心、脳、網膜等)(頻度不明)
が挙げられていますので注意が必要です。
収載時の薬価
収載時(2024年11月20日)の薬価は以下の通りです。
- アリッサ配合錠 1シート:5,056.80円(1日薬価:180.60円)
以下の記事で算定根拠等について解説しています。
-
【新薬:薬価収載】17製品(2024年11月20日)
続きを見る
また、アリッサはシート単位の処方であり、28日間の投与(プレセボ含む)です。そのため、14日の処方日数の制限を「30日」にすることが了承されています。
あとがき
アリッサ配合錠はこんな薬
- 天然型エストロゲンのエステトロール(E4)を含有する
- 血管や肝臓には影響しないため、血栓症のリスク低減が期待(未確定)
- 28日1サイクルとして服用する
同様に月経困難症に適応を有する経口ホルモン製剤としては、
- ルナベル配合錠(一般名:ノルエチステロン/エチニルエストラジオール)
- ヤーズ配合錠(一般名:ドロスピレノン/エチニルエストラジオール)
- ヤーズフレックス配合錠(一般名:ドロスピレノン/エチニルエストラジオール)
- ジェミーナ配合錠(一般名:レボノルゲストレル/エチニルエストラジオール)
等があります。
上記配合錠に含まれるエストロゲンは、全てエチニルエストラジオール(EE2)でしたが、アリッサ配合錠は初のエステトロール(E4)を配合した薬剤です。
以上、今回は月経困難症とアリッサ配合錠の作用機序についてご紹介しました。
引用論文・資料等
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