PASSMED公式LINEの登録者特典|当サイトに掲載している図表の元データ&学習支援AI 薬科GPTをプレゼント♪
2023年3月27日、「発作性夜間ヘモグロビン尿症」を対象疾患とするエムパベリ皮下注(ペグセタコプラン)が承認されました!
Swedish Orphan Biovitrum Japan|ニュースリリース
基本情報
製品名 | エムパベリ皮下注1080mg |
一般名 | ペグセタコプラン |
製品名の由来 | Empathy、Empower |
製造販売 | 製造販売:Swedish Orphan Biovitrum Japan(株) 販売:旭化成ファーマ(株) |
効能・効果 | 発作性夜間ヘモグロビン尿症 |
用法・用量 | 通常、成人には、ペグセタコプランとして1回1080mgを週2回皮下投与する。 なお、十分な効果が得られない場合には、1回1080mgを3日に1 回の間隔で 皮下投与することができる。 |
収載時の薬価 | 488,121円 |
発売日 | 2023年9月4日(HP) |
エムパベリは、補体C3を阻害するPEG化ペプチド製剤です!
今回は発作性夜間ヘモグロビン尿症と共に、エムパベリ(ペグセタコプラン)の作用機序、エビデンス等について解説します。
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)とは
発作性夜間ヘモグロビン尿症(Paroximal Nocturnal Hemogrobinuria:PNH)は稀な疾患(患者さん数は約400人)ですが、重篤化することから難病に指定されています。1)
後天的な原因で酸素運搬等の役割を担う赤血球が壊される(溶血)ことで発症すると考えられており、主な症状としては以下があります。
- 早朝の赤褐色尿(ヘモグロビン尿)
- 嚥下障害
- 男性機能不全
- 腹痛
- 疲労
重症化すると以下のような重度の合併症を呈してしまう2)ため、早期の発見・治療が重要です。
- 血栓症:主要な死因の一つ
- 慢性腎臓病:2/3の患者さんが合併する
- 肺高血圧症
根治的な治療法としては造血幹細胞移植しかありませんが、重篤な骨髄不全やコントロール困難で致命的な血栓症に対して行われます。2)
通常は溶血症状に対してはユルトミリス(ラブリズマブ)やソリリス(エクリズマブ)などの抗補体C5抗体薬が使用され、加えてその他の症状に応じた対症療法を行います。
このように赤血球の破壊(溶血)が常に起こることで様々な症状・合併症を呈してしまうのが発作性夜間ヘモグロビン尿症ですね。
補体活性化経路と抗補体C5抗体薬による血管外溶血
PNHでは抗補体C5抗体薬がよく使用されていますが、しばしば効果不十分のことがあり、一部の患者さんでは血管外溶血を認めることがあります。3)
PNHの基本的な病態は「血管内」の溶血ですが、抗補体C5抗体薬による治療によって、「血管外」の溶血が生じてしまうのです。血管外というのは、主に脾臓や肝臓での溶血を指しますね。
補体(Complement)とは、生体が病原菌などを排除する際に抗体抗原反応などを補助する免疫システムです。補体にはいくつかの種類があり、C1~C9で表されます。
詳細は割愛しますが、免疫が活性化する際に、「レクチン経路」、「古典的経路」、「第二経路」と呼ばれる経路によって、補体の「C3」が産生・活性化されます。
この補体C3は、補体C5を「C5a」と「C5b」に分解します。
PNHでは、補体C5bによる赤血球の溶血が過剰に引き起こっているため、この働きを阻害する抗補体C5抗体薬が使用されます。
-
ユルトミリス(ラブリズマブ)の作用機序:ソリリスとの違い【PNH】
続きを見る
しかし、補体C5を阻害すると、その上流にあるC3やC3bが活性化してしまうことがあり、C3bが活性化すると脾臓などで血管外溶血が発現してしまいます。
今回ご紹介するエムパベリは、抗補体C5抗体薬で効果不十分な場合に使用できます!
エムパベリ(ペグセタコプラン)の作用機序
エムパベリは補体C3とC3bを特異的に阻害するように設計されたPEG化ペプチド製剤です。
特にC3bの働きを阻害することで、抗補体C5抗体薬によって活性化されたC3b経路の血管外溶血を抑制することができます。
エビデンス紹介:PEGASUS試験
根拠となった臨床試験をご紹介します(PEGASUS試験)。3)
本試験は、ソリリス(エクリズマブ)による治療にも関わらず、ヘモグロビン値が10.5g/dL未満のPNH患者さんを対象に、まずはエムパベリとソリリスを併用して投与する4週間の導入期間のあと、エムパベリ単剤を投与する群とソリリス単剤を投与する群を比較した国際共同第Ⅲ相臨床試験です(日本を含む)。
主要評価項目は「ヘモグロビン値のベースラインから16週時点までの平均変化量」とされ、結果は以下の通りでした。
エムパベリ群 | ソリリス群 | |
ヘモグロビン値の ベースラインから16週時点までの平均変化量 |
2.37g/dL | –1.47g/dL |
差:3.84g/dL(P<0.001) |
副作用
10%以上に認められる副作用として、注射部位紅斑が報告されています。
重大な副作用としては、
- 感染症(頻度不明)
- 髄膜炎菌感染症(頻度不明)
- 過敏症(2.5%)
が挙げられていますので、特に注意が必要です。
感染症については、生体防御に関与している補体経路を阻害するためですね。抗補体C5抗体薬と同様です。
用法・用量
通常、成人には、ペグセタコプランとして1回1080mgを週2回皮下投与します。
なお、十分な効果が得られない場合には、1回1080mgを3日に1回の間隔で皮下投与することも可能です。
収載時の薬価
収載時(2023年8月30日)の薬価は以下の通りです。
- エムパベリ皮下注1080mg:488,121円(1日薬価:139,463円)
算定根拠については、以下の記事で解説しています。
-
【新薬:薬価収載】7製品(2023年8月30日)
続きを見る
まとめ・あとがき
エムパベリはこんな薬
- 補体C3とC3bを特異的に阻害するPEG化ペプチド製剤
- 抗補体C5抗体薬による血管外溶血に対して効果が期待されている
PNHは抗補体C5抗体薬(ユルトミリス、ソリリス)による治療が行われ、治療成績は向上しましたが、しばしば血管外溶血が問題となっていました。
エムパベリは上記抗体薬とは異なる補体(C3・C3b)を阻害する作用を有するため、血管外溶血に対しても効果が期待されています。
以上、今回は難病の発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)とエムパベリ皮下注(ペグセタコプラン)の作用機序、エビデンス等についてご紹介しました!
参考資料・文献等
- 難病情報センター:発作性夜間ヘモグロビン尿症(指定難病62)
- 日本PNH研究会
- PEGASUS試験:N Engl J Med 2021; 384:1028-1037
\ 新薬情報オンラインの運営者が執筆! /
薬剤師におススメの記事
失敗しない薬剤師の転職とは?
数多く存在する薬剤師専門の転職エージェントサイト。
どこに登録したらいいのか悩むことも少なくありません。そんな転職をご検討の薬剤師さんに是非見ていただきたい記事を公開しました。
- 新薬情報オンラインの薬剤師2名が実際に利用・取材!
- 各サイトの特徴等を一覧表で分かりやすく掲載!
- 絶対にハズレのない厳選の3サイトを解説!
上手に活用してあなたの希望・条件に沿った【失敗しない転職】を実現していただけると嬉しいです!
-
薬剤師の転職サイト3選|評判・求人特徴とエージェントの質を比較
続きを見る
日々の情報収集に最適
-
薬剤師の勉強・情報収集に役に立つ無料サイト・ブログ8選