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2022年6月20日、「再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫」を対象疾患とするダルビアス(ダリナパルシン)が承認されました。
ソレイジア・ファーマ|ニュースリリース
基本情報
製品名 | ダルビアス点滴静注用135mg |
一般名 | ダリナパルシン |
製品名の由来 | 一般名であるダリナパルシン(Darinaparsin)と、 ダリナパルシンが有機ヒ素化合物であることから、ヒ素の元素記号である「As」を 組み合わせて「Darvias(ダルビアス)」とした。 |
製薬会社 | 製造販売:ソレイジア・ファーマ(株) 販売:日本化薬(株) |
効能・効果 | 再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫 |
用法・用量 | 通常、成人にはダリナパルシンとして1日1回300mg/m2(体表面積)を 1時間かけて5日間点滴静注した後、16日間休薬する。 この21日間を1サイクルとして投与を繰り返す。 なお、患者の状態により適宜減量する。 |
収載時の薬価 | 31,692円 |
発売日 | 2022年8月22日新発売(HP) |
ダルビアスは有機ヒ素化合物に分類されている新規化合物で、ヒ素を含んだ医薬品としては、無機ヒ素化合物のトリセノックス点滴静注(三酸化二ヒ素)に次ぐものです。
今回は末梢性T細胞リンパ腫とダルビアス(ダリナパルシン)の作用機序について解説します。
末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)
末梢性T細胞リンパ腫(“PTCL”と略されます)は、血液腫瘍の一種ですが、あまり聞きなれない疾患かもしれません。
血液中にはご存知の通り、「白血球」と呼ばれる細胞が存在し、主に免疫を司っていますが、大きく“顆粒球”と“リンパ球”に分類されます。
- 顆粒球:「好中球」、「好酸球」、「好塩基球」の3つの総称
- リンパ球:「T細胞」、「B細胞」、「NK細胞」の3つの総称
今回ご紹介するPTCLは、血球細胞の中でも「リンパ球のT細胞」が異常増殖することで発症する疾患です。
症状としては、リンパ節の腫れやしこり、発熱、大量の寝汗、体重減少などがみられることがあります。
基本的な治療は抗がん剤の多剤併用による化学療法で、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロンの4種類の薬剤を用いるCHOP療法が一般的に行われています。1)
このCHOP療法で腫瘍細胞が消えた(完全奏効)場合、治療は終了で、以後は経過観察のみです。
ただし、CHOP療法で治療効果が認められなかった難治性の場合、または完全奏効後に再発した場合には、次に使用できる薬剤は限られていました。
類薬として、以下の薬剤も使用可能ですね。
- ジフォルタ(プララトレキサート):ジヒドロ葉酸還元酵素阻害薬
- イストダックス(ロミデプシン):HDAC阻害薬
- ハイヤスタ(ツシジノスタット):HDAC阻害薬
- エザルミア(バレメトスタット):EZH1/2阻害薬
ダルビアス(ダリナパルシン)の作用機序
ダルビアスは有機ヒ素化合物で、腫瘍細胞に作用すると、活性酸素の増加、およびミトコンドリア障害作用を引き起こします。
その結果、シトクロムCの増加や、タンパク質分解酵素のカスパーゼが増加し、アポトーシスが誘導されると考えられています。
エビデンス紹介:SP-02L02試験
根拠となった臨床試験は、日本を含むアジア圏で行われた第Ⅱ相臨床試験です(SP-02L02試験)。2)
本試験は再発または難治性の末梢T細胞リンパ腫患者さんを対象に、ダルビアス単剤の有効性と安全性を検討した試験です。
主要評価項目は「6サイクル終了後の全奏効率」とされ、結果は19.3%(90%CI:11.2-29.9%)と、予め設定した下限値10%を超えたため、達成しています。
副作用
5%以上に認められる副作用として、味覚障害、末梢性感覚ニューロパチー、嘔吐、食欲減退、AST増加、ALT増加、疲労(倦怠感)、発熱などが報告されています。
重大な副作用としては、
- 骨髄抑制:貧血(12.3%)、好中球減少(12.3%)、血小板減少(12.3%)、白血球減少(4.6%)、リンパ球減少(4.6%)、発熱性好中球減少症(1.5%)等
- 感染症:肺炎(1.5%)、敗血症性ショック(1.5%)、帯状疱疹(1.5%)等
- 精神障害:せん妄(9.2%)、錯乱(3.1%)、幻覚(3.1%)、不眠症(3.1%)、不安(1.5%)、失見当識(1.5%)等
- 中枢神経障害:傾眠(3.1%)、浮動性めまい(3.1%)、脳梗塞(1.5%)、回転性めまい(1.5%)、認知障害(1.5%)等
- QT間隔延長(3.1%)
精神障害や中枢神経障害は特徴的な副作用ですかね。頻度は低いものの、いずれも休薬基準が設けられていますので、早めの対処が大切です。
用法・用量
通常、成人にはダリナパルシンとして1日1回300mg/m2(体表面積)を1時間かけて5日間点滴静注した後、16日間休薬します。この21日間を1サイクルとして投与を繰り返します。
患者の状態により適宜減量
収載時の薬価
収載時(2022年8月18日)の薬価は以下の通りです。
- ダルビアス点滴静注用135mg:31,692円(1日薬価:25,152円)
算定根拠については以下で解説しています。
-
【新薬:薬価収載】7製品(2022年8月18日)
続きを見る
まとめ・あとがき
ダルビアスはこんな薬
- 有機ヒ素化合物でミトコンドリア障害作用を有する
- 再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫に使用する
- 精神障害や中枢神経障害に注意が必要
再発・難治性の末梢性T細胞リンパ腫は治療選択肢が限られていたため、新たな治療の登場は朗報ではないでしょうか。
以上、今回は末梢性T細胞リンパ腫とダルビアス(ダリナパルシン)の作用機序について解説しました!
引用文献・資料等
- 造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版
- Blood (2021) 138 (Supplement 1): 1376.、ダルビアス点滴静注用 添付文書
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