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2020年6月29日、「尋常性乾癬」を対象疾患とするイルミア皮下注(チルドラキズマブ)が承認されました。
サンファーマ|ニュースリリース
基本情報
製品名 | イルミア皮下注100mgシリンジ |
一般名 | チルドラキズマブ(遺伝子組換え) |
製品名の由来 | 特になし |
製造販売 | サンファーマ(株) |
効能・効果 | 既存治療で効果不十分な尋常性乾癬 |
用法・用量 | 通常、成人にはチルドラキズマブ(遺伝子組換え)として、 1回100mgを初回、4週後、以降12週間隔で皮下投与する。 |
収載時の薬価 | 487,413円 |
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【乾癬】生物学的製剤の一覧と作用機序/特徴のまとめ
続きを見る
作用機序はIL-23のp19サブユニット阻害ですので、既に乾癬で承認・販売されている
と同じですね。
また、イルミアの維持投与期間中の投与間隔は12週毎のため、スキリージやステラーラと同じく最大の投与間隔で治療可能です。
今回は乾癬とイルミア(チルドラキズマブ)の作用機序・特徴についてご紹介します。
皮膚のターンオーバー
通常、皮膚は外からの刺激・乾燥等を防御したり、細菌・ウイルスの侵入を防ぐといった免疫機能を司っています。
構造としては、表面から順に、
- 表皮
- 真皮
- 皮下組織
の3層に分かれています。
また、表皮はさらに
- 角質層
- 顆粒層
- 有棘層
- 基底層
の4層から構成されています。
皮膚はその機能を保つため、基底層で常に新しい細胞が作られています。
基底層で新しくできた細胞は徐々に角層へと押し上げられ、最終的には垢となって剥がれ落ちます。
このような皮膚の細胞サイクルを「ターンオーバー(分化)」と呼び、通常、約28~40日サイクルで繰り返されています。
乾癬とは
乾癬の患者さんでは、慢性の炎症を伴う何らかの原因で上記のターンオーバーのサイクルが4~5日と極端に短くなっています。
そのため、皮膚が盛り上がったような状態(“肥厚”と呼びます)になり、赤い発疹(“紅斑”と呼びます)を伴うことを特徴とします。
また、皮膚の一部がかさかさになって剥げ落ちる(“落屑”と呼びます)こともあります。
乾癬の分類
乾癬は5つの種類に分類されていますが、約9割は「尋常性乾癬」です
- 尋常性乾癬
- 関節症性乾癬
- 滴状乾癬
- 乾癬性紅皮症
- 膿疱性乾癬
乾癬性紅皮症や膿疱性乾癬は非常に稀ですが、発症すると症状が厳しいため、重症になることが多いです。
乾癬の原因
明確な原因は不明確ですが、
- 遺伝的素因
- 環境要因(ストレス、食生活、肥満等)
などによって、免疫機能が異常になることで発症すると考えられています。
何らかの原因によって、マクロファージ等が産生する炎症性サイトカイン(IL-12、IL-23、TNFα)等によって炎症が引き起こされ、乾癬の症状が発現します。
IL-23はヘルパーT細胞の一種であるTh17を活性化し、Th17が産生する「IL-17A」も乾癬の発症と維持に重要であると考えられています。
乾癬の重症度と治療
乾癬の重症度は皮膚の症状や状態、患者さんが感じる不便さ、等を指標に「軽症」、「中等症」、「重症」の3つに分けられています。
重症度に応じて、以下の4つの治療が単独もしくは組み合わせて行われますが、中心となるのは外用療法です。
- 外用療法(塗り薬)
- 光線療法(紫外線照射)
- 内服療法(経口薬)
- 生物学的製剤治療(注射薬)
外用療法(塗り薬)には、ステロイド外用薬や活性型ビタミンD3外用薬が用いられます。
内服療法(経口薬)には、チガソン(一般名:エトレチナート)等のビタミンA誘導体の他、免疫抑制薬やPDE4阻害薬のオテズラ(一般名:アプレミラスト)が重症度に応じて使用されます。
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オテズラ(アプレミラスト)の作用機序【乾癬/ベーチェット病】
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そして生物学的製剤治療(抗体薬)は基本的には、以下のような患者さんにしか使用することができません。1)
- 外用療法、光線療法、内服療法で改善しない患者さん
- 乾癬性関節炎で痛みが激しい患者さん
- 乾癬性紅皮症や膿疱性乾癬等の重症な患者さん
また、生物学的製剤治療は日本皮膚科学会で定められた病院でのみ治療ができます。1)
イルミア(チルドラキズマブ)の作用機序と特徴
IL-23はp40サブユニットとp19サブユニットと呼ばれるタンパク質から構成されています。
イルミアは、マクロファージ等の産生するIL-23のp19サブユニットを特異的に阻害する抗ヒトIL-23p19モノクローナル抗体製剤です!
IL-23の作用が阻害されることでIL-23の下流にあるTh17へのシグナル伝達を抑制します。
その結果、Th17関連の炎症反応が抑制され、乾癬の症状緩和が得られると考えられます。
同様の作用機序(IL-23のp19サブユニットを阻害)を有する生物学的製剤としてはスキリージ皮下注(リサンキズマブ)とトレムフィア皮下注(グセルクマブ)が既に承認・販売されています。
トレムフィアは8週間毎の投与ですが、スキリージとイルミアは12週毎の投与と、乾癬に使用する生物学的製剤としては最も投与頻度が少ないといった特徴がありますね!
他の生物学的製剤との違い
乾癬に用いる他の生物学的製剤には以下の種類があり、それぞれ作用機序が異なります。
- レミケード(一般名:インフリキシマブ):TNFα阻害
- ヒュミラ(一般名:アダリムマブ):TNFα阻害
- シムジア(一般名:セルトリズマブ):ペグ化TNFα阻害
- ステラーラ(一般名:ウステキヌマブ):IL-12とIL-23阻害
- トレムフィア(一般名:グセルクマブ):IL-23阻害(p19サブユニットを阻害)
- スキリージ(一般名:リサンキズマブ):IL-23阻害(p19サブユニットを阻害)
- コセンティクス(一般名:セクキヌマブ):IL-17A阻害
- トルツ(一般名:イキセキズマブ):IL-17A阻害
- ルミセフ(一般名:ブロダルマブ):IL-17受容体A阻害
投与間隔や自己注射について詳しくは以下の記事にまとめていますのでご参照ください。(イルミアも追記済!)
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【乾癬】生物学的製剤の一覧と作用機序/特徴のまとめ
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副作用
1~5%未満に認められる副作用として、上気道感染、ALT増加が報告されています。
重大な副作用として、
- 重篤な感染症(0.2%)
- 重篤な過敏症(頻度不明)
が挙げられていますので特に注意が必要です。
用法・用量、自己注射
通常、成人にはチルドラキズマブ(遺伝子組換え)として、1回100mgを初回、4週後、以降12週間隔で皮下投与します。
現時点では自己注射は不可です。
収載時の薬価
収載時(2020年8月26日)の薬価は以下の通りです。
- イルミア皮下注100mgシリンジ:487,413円(1日薬価:5,803円)
算定根拠については以下の記事で解説しています。
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【新薬:薬価収載】13製品(2020年8月26日)
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まとめ・あとがき
イルミアはこんな薬
- IL-23(p19サブユニット)を阻害する生物学的製剤(抗体薬)
- 12週毎の投与(維持投与期間中)
しかし、イルミアの適応症は「尋常性乾癬」のみですので、他の生物学的製剤よりも適応症が狭いのが少し残念ですね。今後の適応拡大に期待したいと思います!
乾癬領域では近年では相次いで新規の生物学的製剤が登場しています。
乾癬の生物学的製剤のまとめ記事もありますので、ご参考にしてもらえれば嬉しいです。
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【乾癬】生物学的製剤の一覧と作用機序/特徴のまとめ
続きを見る
以上、今回は乾癬とイルミアの作用機序・特徴についてご紹介しました。
引用文献・資料等
- 日本皮膚科学会:乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2022年版)
- reSURFACE 1試験/reSURFACE 2試験:Lancet. 2017 Jul 15;390(10091):276-288.
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