5.内分泌・骨・代謝系

リクラスト(ゾレドロン酸)の作用機序と副作用【骨粗鬆症】

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厚労省は2016年9月28日、「骨粗鬆症」を効能・効果とするリクラスト点滴静注液5mg(一般名:ゾレドロン酸水和物)を承認したと発表がありました!

その後、2022年8月20日には、通気針が不要となることによる使用時の簡便性を期待した「バック製剤」が承認されています(ニュースリリース)。

製薬会社

  • 製造販売元:旭化成ファーマ(株)
  • 提携先:ノバルティス ファーマAG

 

リクラストは1年に1回の投与で治療効果が発揮できる薬剤です。

 

今回は骨粗鬆症とリクラスト(ゾレドロン酸)の作用機序についてご紹介します。

 

骨の代謝(リモデリング)

骨には大きく以下の2つの役割があります。

  • 体の骨格維持
  • 電解質バランス(特にカルシウム)の維持

 

これらの役割を果たすために、骨は「リモデリング」と呼ばれる代謝を繰り返して、常に丈夫な骨が保たれています。

リモデリングに関わる細胞には、骨を壊す「破骨細胞」と骨を作る「骨芽細胞」が知られています。

破骨細胞が古くなった骨を壊し(“骨吸収”と呼びます)、壊された部分に骨芽細胞が新しい骨を作ります(“骨形成”と呼びます)。

 

このようなリモデリングがバランス良く行われることで、約2年で全身の骨が作り替えられと言われています。

 

骨粗鬆症とは

骨粗鬆症は、加齢やホルモンバランス等により、このリモデリングのバランスが崩れ、破骨細胞による骨吸収が過剰になって引き起こされます。

骨吸収が過剰に引き起こされると、骨はどんどんと脆くなり、骨折しやすくなります。

これが骨粗鬆症です。

 

そこで、骨粗鬆症の治療としては、この破骨細胞の働きを抑制させることが中心となります。

 

リクラスト(ゾレドロン酸)の作用機序

リクラストは破骨細胞に取り込まれて破骨細胞の働きを抑制する「ビスホスホネート製剤(BP製剤)」に分類されている薬剤です。

破骨細胞の働きが抑制されることで、リモデリングのバランスが保たれるようになり、骨粗鬆症の進行を抑制するといった作用機序です。

 

リクラストの用法・用量

これまで承認・発売されていたビスホスホネート系薬の中には4週間に1回投与の製剤や、その他、ヒト型モノクローナル抗体のプラリアは6か月に1回投与でしたが、今回紹介するリクラストは1年に1回の投与で効果を発揮します!!

 

成人には1年に1回ゾレドロン酸として5mgを15分以上かけて点滴静脈内投与します。

 

エビデンス紹介(ZONE試験)

根拠となった国内第Ⅲ相臨床試験(ZONE試験)をご紹介します。1-2)

原発性骨粗鬆症患者さんを対象に、リクラスト投与群とプラセボ投与群を比較した試験です。

 

本試験の主要評価項目は2年時点の「新規椎体骨折の累積発生率」で、2年時点の結果は以下の通りでした。

試験群 リクラスト群 プラセボ群
新規椎体骨折の
累積発生率
3.3% 9.7%
p=0.0029
非椎体骨折発生率 6.9% 12.3%
p=0.0292

 

このようにリクラストの1年毎の投与によって、骨折の発生率が減少していることが証明されました。

 

リクラストの副作用

主な副作用として発熱、関節痛、筋肉痛、倦怠感、インフルエンザ様疾患、血中カルシウム減少、頭痛などが報告されています。

 

稀に重大な副作用として顎骨壊死(がっこつえし)の報告もあります。

これは顎の骨が壊死していく副作用で、重篤な場合は手術する必要もあるため、早めの発見が重要です。

 

あとがき

骨粗鬆症の患者さんはなかなか来院することも苦労されるケースがあると思いますが、1年に1回の投与のため、患者さんのQOL向上にも期待できるのではないでしょうか♪

 

ただし、
次回までの投与間隔が1年と長いことから、患者さんの受診忘れが生じる可能性があります。

そこで患者さんには「投与記録を記載したカード」を配ることで受診忘れが生じないよう、対策が講じられています。

 

また、有効成分のゾレドロン酸は、がん領域でも使用されています。詳しくは以下の記事をご覧ください。

ゾメタ(ゾレドロン酸)の作用機序と副作用【がんの骨転移】

続きを見る

 

以上、本日は年1回投与の骨粗鬆症治療薬のリクラスト点滴静注液をご紹介しました。

 

引用文献・資料等

  1. ZONE試験:Osteoporos Int. 2017 Jan;28(1):389-398.
  2. リクラスト 添付文書

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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