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厚労省は2014年12月26日、以下を効能・効果とする新有効成分含有医薬品のタケキャブ錠10mg、同錠20mg(一般名:ボノプラザンフマル酸塩)を承認しました。
- 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、低用量アスピリン投与時・非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍または十二指腸潰瘍の再発抑制
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃MALTリンパ腫・特発性血小板減少性紫斑病・早期胃がんに対する内視鏡的治療後胃・ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助
その後、2022年3月16日にはタケキャブOD錠10mg/20mgが承認されています。
タケキャブは、既存のプロトンポンプ阻害薬(PPI)と異なり、「カリウムイオン競合型アシッドブロッカー」としてプロトンポンプを阻害するといった特徴があります☆
今回は胃・十二指腸潰瘍と逆流性食道炎を中心に、タケキャブ(ボノプラザン)の作用機序についてご紹介します。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍とは
胃や十二指腸は通常、粘膜に覆われて保護されています。
この粘膜が何らかの原因によって損傷し、深い部位まで組織が欠損した状態を「潰瘍」と呼んでいます。
胃潰瘍は40~60歳代に多く、十二指腸潰瘍は20~40歳代の比較的若い方に多いとされています。
症状としては、
- 心窩部痛
- 胸焼け
- 食欲不振
- 吐血
- 下血(タール便)
- 貧血
- 悪心・嘔吐
などがあります。
特に心窩部痛は胃・十二指腸潰瘍の典型的な症状です。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因
通常、胃や十二指腸は胃酸や消化酵素のような「攻撃因子」から粘膜を保護するための様々な「防御因子」が働いています。
これをバランス説と呼んでおり、健康な状態では両者がバランス良く働いています。
胃・十二指腸潰瘍では攻撃因子と防御因子のバランスが崩れ、攻撃因子が優勢となって発症します。
特にこのバランスを崩す二大要因は攻撃因子の「ヘリコバクターピロリ(H.ピロリ)感染」と「NSAIDs」であると言われています。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍の治療
H.ピロリ感染やNSAIDsの服用によって発症している場合、H.ピロリ除菌やNSAIDsの服用中止が第一選択です。
上記が原因ではない場合(例:ストレスや胃酸分泌過多)、以下の薬剤が使用されます。
- プロトンポンプ阻害薬(PPI)
- H2受容体拮抗薬
- ムスカリン受容体拮抗薬
- 胃粘膜保護薬 など
逆流性食道炎とは
逆流性食道炎は胃食道逆流症(GERD)と呼ばれ、近年増加している疾患です。
胃酸や酸性の胃内容物が食道や口の中まで逆流することで胸焼けや呑酸(すっぱい味がする)といった症状が現れます。
食後によくゲップが出て、酸っぱいと感じたことのある方も多いのではないでしょうか?
放置する方も多いかもしれませんが、長年罹患し続けると食道がんのリスクにもなりますので、早めの発見と治療が大切です。
逆流性食道炎の治療
治療の主体は薬物療法です。
胃酸の分泌を抑制するプロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2受容体拮抗薬が主に用いられますが、胃酸分泌抑制がより強力なPPIが第一選択薬として使用されます。
その他、症状に合わせて制酸剤、胃粘膜保護薬、消化管運動機能改善薬などを用いることもあります。
それではここから、PPIが関与する胃酸の分泌メカニズムについて説明します。
胃酸の分泌メカニズムとプロトンポンプ
胃酸(HCl)は、胃に存在している「壁細胞」と呼ばれる細胞から分泌されます。
壁細胞には、
- M3受容体
- H2受容体
- ガストリン(G)受容体
が存在しており、アセチルコリン、ヒスタミン、ガストリンがそれぞれの受容体に結合することで活性化されます。
活性化されると、壁細胞の「プロトンポンプ」に刺激が伝わり、カリウムイオン(K+)を細胞内に取り込むと同時に水素イオン(H+)を細胞外に放出します。
H+は細胞外で塩素イオン(Cl-)と結合して胃酸(HCl)になります。
タケキャブ(一般名:ボノプラザン)の作用機序
タケキャブは広義ではプロトンポンプ阻害薬(PPI)に分類されている薬剤です。
プロトンポンプのカリウムイオン(K+)が結合する部位を可逆的に阻害する「カリウムイオン競合型アシッドブロッカー」のPPIです。
その結果、カリウムイオン(K+)は壁細胞内に入ることができないため、水素イオン(H+)との交換ができなくなります。
このような作用機序によって、胃酸分泌を抑制するのがタケキャブです。
類薬との違い:タケキャブの特徴
同様の作用機序(PPI)を有する薬剤には、以下があります。
- パリエット(一般名:ラベプラゾール)
- オメプラール(一般名:オメプラゾール)
- オメプラゾン(一般名:オメプラゾール)
- タケプロン(一般名:ランソプラゾール)
- ネキシウム(一般名:エソメプラゾール)
これまでに使用されていた上記のPPIは酸による活性化が必要なため効果発現までに時間がかかるといった問題点がありました。
また、遺伝子多型のある肝薬物代謝酵素(CYP2C19)に影響を受けるため、患者さん個々人で血中濃度や代謝速度等にバラツキがあることも指摘されていました。
今回ご紹介したタケキャブは酸による活性化が不要のため、効果発現が速やかという特徴があります。
また、遺伝子多型のある肝薬物代謝酵素では代謝されないため、個々人の血中濃度や代謝速度のバラツキが少ないことも特徴です。
さらに、他のPPIとは違い腸溶性製剤ではないため、粉砕しても効力を維持できることも大きな特徴でしょう(粉砕時は遮光の必要あり)。
ヘリコバクターピロリ除菌では、ボノサップ(ボノプラザン・アモキシシリン・クラリスロマイシン)、ボノピオン(ボノプラザン・アモキシシリン・メトロニダゾール)として用いられていますが、ランサップ(ランソプラゾール・アモキシシリン・クラリスロマイシン)などのこれまでの薬剤よりも高い除菌成功率を誇っています(添付文書より)。
これも、効果発現が速やかであり、早期に胃酸分泌を抑制して胃内のpHが上昇するからだといわれています。
タケキャブの副作用
主な副作用には便秘、下痢、発疹、AST上昇、ALT上昇などが報告されています。
あとがき
これまでのPPIで指摘されていた問題点を克服した新規のPPIがタケキャブです。
既存のPPIで治療効果が得られなかった患者さんや、治療効果に即効性を求める患者さんにとっては良い治療選択肢ではないでしょうか。
以上、今回は胃・十二指腸潰瘍と逆流性食道炎を中心に、「カリウムイオン競合型アシッドブロッカー」のPPIであるタケキャブ(ボノプラザン)の作用機序についてご紹介しました。
2020年にはタケキャブと低用量アスピリンを配合したキャブピリンも登場!要チェックです。
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キャブピリン配合錠(ボノプラザン/アスピリン)の作用機序【血栓抑制】
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