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ゾレア(オマリズマブ)の作用機序【慢性蕁麻疹・アレルギー性鼻炎】

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2019年12月11日、ゾレア皮下注用(一般名:オマリズマブ)の効能・効果に「季節性アレルギー性鼻炎」を追加することが承認されました!

ノバルティスファーマ|ニュースリリース

 

これでゾレアの効能・効果は以下のようになります。

  • 気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)
  • 特発性の慢性蕁麻疹(既存治療で効果不十分な患者に限る)
  • 季節性アレルギー性鼻炎(既存治療で効果不十分な重症または最重症患者に限る)

 

木元 貴祥
木元 貴祥
今後は季節性アレルギー性鼻炎ということで、いわゆる「花粉症」への適応拡大ですね。

 

その後、2024年3月8日には、

  • ペン製剤
  • 300mgの新規規格

の剤形追加が承認されています。

 

今回は慢性蕁麻疹を中心に、ゾレア(オマリズマブ)の作用機序についてご紹介いたします♪

 

蕁麻疹とアレルギー

皮膚が赤くなって痒みを伴うような軽い蕁麻疹はご経験された方、多くいらっしゃると思います。私も子供の頃に腕や足に汗をかいて痒くなった経験があります・・。

 

ヒトの皮膚の表面には角層(表皮の最外層)があり、外部の刺激物などの侵入からからだを守る役目をしています。

 

角層の下に表皮と真皮がありますが、真皮には蕁麻疹の原因となるヒスタミンなどを蓄えている肥満細胞(マスト細胞とも呼ばれます)が存在します。

 

この肥満細胞は、B細胞の産生するIgE抗体とよく結合して存在しています。

 

何らかのアレルギー物質(アレルゲン)が体内に入ると、アレルゲンは肥満細胞のIgE抗体と結合します。そうすると肥満細胞が活性化され、ヒスタミンなどのアレルギー性物質が放出されます。

 

このヒスタミンが皮膚の毛細血管に作用すると、血液成分が血管外へ漏れ出して皮膚にミミズ腫れ、ブツブツ(膨疹)や赤み(紅斑)が生じ、また、皮膚に存在する神経に作用してかゆみを生じます。

いわゆる、アレルギー反応が引き起こさ、これが蕁麻疹の原因となります。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
花粉症の原因も同じくアレルギー反応ですね。

 

特発性の蕁麻疹

このような蕁麻疹を引き起こしやすい刺激として、汗、薬物、物理的刺激(こすれ、圧迫、冷感、温熱)、食品、等が挙げられます。

食物アレルギーによる腫れや痒みも蕁麻疹の一種です。

 

上記のように原因が特定できればよいのですが、蕁麻疹患者さんの70%以上は原因が特定できないと言われています。これを「特発性の蕁麻疹」と呼んでいます。

このタイプの蕁麻疹は毎日のように症状があらわれます。

 

発症して1ヵ月以内のものを急性蕁麻疹、1ヵ月以上持続するものを慢性蕁麻疹といいます。

 

治療法

薬物治療としては、痒み等の原因物質であるヒスタミンを抑制するため、ヒスタミンH1受容体拮抗薬が使用されます。

しかし、上記で効果不十分な場合は、適応外使用としてヒスタミンH2受容体拮抗薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬が併用されるほか、重症例にはステロイド経口薬の短期的使用や免疫抑制剤も使用されることがあります。

 

ヒスタミンH1受容体拮抗薬については、以下の記事をご参照ください。

ルパフィン(ルパタジン)の作用機序と特徴【アレルギー性鼻炎】

続きを見る

 

ゾレア(オマリズマブ)の作用機序

今回ご紹介するゾレアは、B細胞の産生するIgE抗体に結合してその働きを阻害する薬剤です☆

ゾレアによってIgE抗体を阻害すると、肥満細胞とIgEが結合できなくなります。

 

そうすることによって、アレルゲンが肥満細胞のIgEと結合できなくなるため、肥満細胞の活性を抑制でき、ヒスタミンの放出を抑制するといった作用機序を有しています。

木元 貴祥
木元 貴祥
その結果、そう痒・膨疹といった症状を抑制すると考えられています。

 

あとがき

これまで、蕁麻疹でヒスタミンH1受容体拮抗薬が効かなかった場合の薬剤は限られていましたが、ゾレアでその選択肢が広がることは朗報ではないでしょうか♪

 

木元 貴祥
木元 貴祥
また、花粉症への適応拡大も承認されましたので、期待大です。

 

ただし、投与対象となる患者さんや投与期間については最適使用推進ガイドラインで規定されていますので、ご注意ください。誰でも投与できるわけではありません。

投与の要否の判断にあたっては、以下に該当する患者であることを確認する。

  • 鼻アレルギー診療ガイドラインを参考にスギ花粉による季節性アレルギー性鼻炎の確定診断がなされている
  • 本剤初回投与前のスギ花粉抗原に対する血清特異的 IgE 抗体がクラス 3 以上(FEIA 法で 3.5 UA/mL以上又は CLEIA 法で 13.5 ルミカウント以上)である
  • 過去にスギ花粉抗原の除去と回避を行った上で、医療機関において鼻アレルギー診療ガイドラインに基づき、鼻噴霧用ステロイド薬及びケミカルメディエーター受容体拮抗薬による治療を受けたものの、コントロール不十分な鼻症状が 1 週間以上持続したことが診療録、問診等で確認できる
  • 12 歳以上で、体重及び初回投与前血清中総 IgE 濃度が投与量換算表で定義される基準を満たす
  • 投与開始時点において、季節性アレルギー性鼻炎とそれ以外の疾患が鑑別され、本剤の投与が適切な季節性アレルギー性鼻炎であると診断されている

【出典】最適使用推進ガイドライン(医薬品)|オマリズマブ(遺伝子組換え)>季節性アレルギー性鼻炎

 

臨床試験1)では、重症花粉症患者さんに対して、経口抗ヒスタミン薬および鼻噴霧用ステロイド薬への上乗せ効果が確認されていました!

1)国内第Ⅲ相臨床試験:第75回米国アレルギー・喘息・免疫学会議(AAAAI)年次総会

 

花粉症については、舌下剤による減感作療法の治療選択肢もありますので、患者さんに応じて使い分けが必要そうですね。

シダキュアスギ花粉舌下錠の作用機序【花粉症】

続きを見る

 

以上、今回は蕁麻疹を中心にゾレア(一般名:オマリズマブ)の作用機序についてご紹介いたしました☆

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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