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2026年8月26日、厚労省の薬事審議会・医薬品第一部会にて、「ナルコレプシー」などを対象疾患とするウエキクス錠(ピトリサント)の承認可否が審議される予定です!
現時点では未承認のためご注意ください。
基本情報
| 製品名 | ウエキクス錠5mg/20mg |
| 一般名 | ピトリサント塩酸塩 |
| 製品名の由来 | |
| 製薬会社 | ヴィアトリス製薬(株) |
| 効能・効果 | ●ナルコレプシー ●持続陽圧呼吸(CPAP)療法等による気道閉塞に対する治療を実施中の閉塞性睡眠時無呼吸症候群に伴う日中の過度の眠気 |
| 用法・用量 | |
| 収載時の薬価 | |
| 発売日 |
エキクスは、国内初のヒスタミンH3受容体拮抗薬/逆作動薬です!
脳を直接叩いて起こす中枢神経刺激薬とは異なり、ウエキクスは脳が本来もっているヒスタミン神経系のブレーキを外すことで自然な覚醒を促す、まったく新しいメカニズムの薬剤ですね。
今回はナルコレプシーと閉塞性睡眠時無呼吸症候群の概要とともに、ウエキクス(ピトリサント)の作用機序・エビデンスについて解説します。
ナルコレプシーとは
ナルコレプシーは、日中の耐えがたい眠気(睡眠発作)を主症状とする睡眠障害(過眠症)の代表的疾患です。
主な症状は以下の通りで、青年期から若年成人期にかけて現れ、その後は生涯続くと言われています。1)
- 日中の過度の眠気(重度)
- 情動脱力発作(突然の一時的な筋力低下の発作)
- 入眠時または覚醒時の幻覚
- 睡眠麻痺
- 夜間の睡眠障害(頻繁な覚醒など)
ナルコレプシーは大きく2つのタイプに分類されます。
- タイプ1:強い感情(大笑い、怒りなど)をきっかけに全身の力が抜ける情動脱力発作(カタプレキシー)を伴い、髄液中のオレキシンが著しく低下している。
- タイプ2:カタプレキシーを伴わず、オレキシン濃度も正常範囲内。
ナルコレプシータイプ1に対しては、近年、オレキシン受容体作動薬のオーゼイフル(オベポレクストン)が登場しました。
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オーゼイフル(オベポレクストン)の作用機序【ナルコレプシー】
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ナルコレプシーの原因と脳内ヒスタミンの働き
脳内のヒスタミンは、アレルギーのイメージとは異なり、日中に私たちを目覚めた状態に保つ覚醒性の神経伝達物質として働いています。視床下部のヒスタミン神経が覚醒を促し、ヒスタミンH1受容体が刺激されると脳が興奮・覚醒します。
この覚醒システムの上流には、覚醒を維持する神経ペプチド「オレキシン」が存在します。
特にナルコレプシータイプ1では、自己免疫などの原因により視床下部のオレキシン産生神経が破壊されてオレキシンが著しく欠乏し、それと連動するヒスタミン量が減少し、ヒスタミン神経系も十分に働きにくくなっています。その結果、覚醒が維持できず、日中の強い眠気やカタプレキシーなどの症状が引き起こされると考えられています。

治療
ナルコレプシーの治療は、主に以下のような対症療法が中心です。
- 日中の眠気に対する治療:モダフィニル、メチルフェニデート、ペモリンなどの精神刺激薬(中枢神経刺激薬)や覚醒促進薬
- カタプレキシーに対する治療:クロミプラミン、SNRI(適応外)、SSRI(適応外)
しかし、既存の薬物療法は症状を緩和する対症療法に過ぎず、効果が不十分であったり、依存性や副作用(精神的リスク、心血管系への影響など)の懸念があったりしました。
今回ご紹介するウエキクスは、依存性の懸念が少なく規制物質に該当しない非中枢刺激薬として、新たな治療選択肢が期待されていますね。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(SAS:sleep apnea syndrome)は、睡眠中の10秒以上、呼吸が停止(気流停止)し、体内の酸素不足を引き起こす疾患です。2)
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea:OSA):呼吸努力を伴う
- 中枢性睡眠時無呼吸症候群(central sleep apnea: CSA):呼吸努力を伴わない
SASの大半はOSAで、睡眠中に気道周辺の筋肉が弛緩することで上気道が虚脱・閉塞し、無呼吸や低呼吸を繰り返す状態です。
また、OSAの発症には加齢や顎顔面の形態なども関係しますが、最も重要な危険因子は「肥満」とされています。
SASの診断および重症度の判定には、睡眠1時間あたりの無呼吸と低呼吸の総数を示す「無呼吸低呼吸指数(AHI)」が用いられ、以下の通りです。1)
SASの重症度
- 軽症:5≦AHI<15
- 中等症:15≦AHI<30
- 重症:AHI≧30
治療
SASの治療法には、気道の確保を目的とした以下のようなアプローチがあり、患者の重症度や病態に合わせて選択されます。1)
- CPAP(持続気道陽圧)治療:睡眠時に鼻マスクなどから持続的に陽圧の空気を送り込み、気道を押し広げる治療法。OSAによって日中の眠気が強い症例や、中等症〜重症の患者において第一選択として推奨。
- OA(口腔内装置)療法:睡眠中に専用のマウスピースを装着し、下顎を前方に移動させることで気道を確保する。主にCPAP治療の適応とならない軽〜中等症の患者や、CPAPが使用できない患者に提案される。
- 減量療法:肥満はOSAの最大の原因であるため、肥満を伴う患者には食事療法や運動療法による減量の併用が推奨。体重の減少は上気道の構造的な負担を和らげ、無呼吸を直接的に軽減させる効果があることが示唆されている
- 体位療法:仰向け(仰臥位)で寝ると無呼吸が悪化する患者に対し、横向き(側臥位)で睡眠をとるよう指導して無呼吸を軽減させる補助的な治療法。
- 手術療法:CPAPやOAが使用できず、扁桃肥大などの解剖学的な異常がある場合、気道を広げるための耳鼻咽喉科的手術や顎顔面形成術が検討されることがある
BMIが27kg/m2以上の中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)に対しては、ゼップバウンド(チルゼパチド)が使用されることもあります。
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今回ご紹介するウエキクスは、CPAP(持続気道陽圧)治療を実施中のOSAに伴う日中の過度の眠気に対して効果が期待されています!
ウエキクス(ピトリサント)の作用機序
ウエキクスは、ヒスタミンH3受容体に選択的に結合する拮抗薬/逆作動薬です。
ヒスタミン神経のシナプス前部にあるH3受容体は、放出されたヒスタミンが結合すると「もう十分放出したのでストップ」というネガティブフィードバック(自己抑制)をかけ、ヒスタミンの合成・放出を抑制する“ブレーキ”として働いています。
ウエキクスは、ヒスタミンH3受容体を遮断すると共に、逆作動作用*によってブレーキを解除して覚醒を促すと考えられています。
*逆作動作用:H3受容体はアゴニストがなくてもシグナルを出す「恒常活性」を持つ。ウエキクスは受容体を不活性型に安定化させ、この恒常活性による抑制シグナルも低下させる。

エビデンス紹介
根拠となった主な臨床試験は、以下の第Ⅲ相臨床試験です。
- HARMONY 1/HARMONY CTP試験3):ナルコレプシーを対象
- HAROSA III試験4):睡眠時無呼吸症候群を対象
詳細は割愛しますが、いずれの臨床試験においてもウエキクスよる眠気尺度の改善が認められていました!
副作用
正式承認後に更新予定です。
臨床試験では、主な副作用として頭痛、不眠(睡眠障害)、悪心、不安などが報告されていました。
用法・用量
正式承認後に更新予定です。
収載時の薬価
現時点では未承認かつ薬価未収載です。
まとめ・あとがき
ウエキクスはこんな薬
- 国内初のヒスタミンH3受容体拮抗薬/逆作動薬
- ナルコレプシーと、CPAP治療中でも残存するOSAの日中の眠気の2つが対象
- H3受容体(ブレーキ)を外して脳内ヒスタミンを回復させ、自然な覚醒を促す
- 依存性の懸念が少ない非中枢刺激薬
脳を直接刺激するのではなく、本来の覚醒システムであるヒスタミン神経系のブレーキを外すという新しいアプローチは、日中の耐えがたい眠気に悩む多くの患者さんにとって、新たな治療選択肢として期待できるのではないでしょうか。
以上、今回はナルコレプシーと閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の概要とともに、ウエキクス(ピトリサント)の作用機序・エビデンスについてご紹介しました!
引用論文・資料等
- MSDマニュアル|ナルコレプシー
- 日本呼吸器学会|睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020
- HARMONY 1/HARMONY CTP試験:CNS Drugs. 2021 Dec;35(12):1303-1315.
- HAROSA III試験:J Sleep Res. 2025 Jun;34(3):e14373.
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