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2023年3月27日、「原発性手掌多汗症」を対象疾患とするアポハイドローション(オキシブチニン)が承認されました!
久光製薬|ニュースリリース
基本情報
製品名 | アポハイドローション20% |
一般名 | オキシブチニン塩酸塩 |
製品名の由来 | 特になし |
製造販売 | 久光製薬(株) |
効能・効果 | 原発性手掌多汗症 |
用法・用量 | 1日1回、就寝前に適量を両手掌全体に塗布する。 |
収載時の薬価 | 20% 1g:545.80円 ※1本の内容量4.5mL(約4.32g) |
発売日 | 2023年6月1日新発売(HP) |
アポハイドの有効成分のオキシブチニンは抗コリン薬に分類されていて、過活動膀胱の治療薬等でも使用されています。
原発性局所多汗症のうち、「原発性腋窩多汗症」については、最近以下の2製品が承認されていますね。
「原発性手掌多汗症」については、アポハイドが初の抗コリン外用薬です。
これまで治療法が限られていましたので、選択肢が広がることが期待されますね。
原発性局所多汗症とは
多汗症は全身の発汗が増加する全身性多汗症と、体の一部に限局して発汗量が増加する局所性多汗症に分類されています。1)
特に基礎疾患や温熱刺激・精神的な負荷等がないにも関わらず、原因不明で仕事に支障がある程の大量の発汗を生じる状態を原発性(特発性)局所多汗症と呼んでいます。主な発汗部位としては以下ですね。
- 手のひら(原発性手掌多汗症)
- 足の裏(原発性足底多汗症)
- わきの下(原発性腋窩多汗症)
- 頭や顔(原発性頭部顔面多汗症)
原発性手掌多汗症の治療
原発性手掌多汗症の治療は塩化アルミニウムの外用が最も推奨されています。1)
塩化アルミニウムを行っても症状が改善しないような重度な手掌多汗症の場合、ボトックス(一般名:A型ボツリヌス毒素)の注射が行われることもありますが、手掌多汗症に対しては保険適応外です(腋窩多汗症は保険適応あり)。
-
ボトックス(A型ボツリヌス毒素)の作用機序と副作用【痙攣性発声障害】
続きを見る
また、内服薬の抗コリン薬としてプロ・バンサイン錠(一般名:プロパンテリン)などが使用されることもありますが、全身性の副作用(例:口渇、便秘、尿閉、せん妄など)の懸念がありました。
ちなみに、アポハイドの有効成分と同じポラキス錠(一般名:オキシブチニン)は過活動膀胱にしか適応を有していないため、多汗症に対しては適応外です。
この他、レーザー治療、神経ブロック、交感神経遮断術などもありますが、十分なエビデンスはありません。
原因:アセチルコリンとエクリン腺
汗を分泌する器官を「汗腺」と呼んでいますが、以下の2つに大別されています。
- エクリン腺:全身に存在し、交感神経(コリン作動性)により支配されている。
- アポクリン腺:局所に存在し、交感神経(アドレナリン作動性)やホルモン等に支配されている。
アポハイドが関係するのは主にエクリン腺ですので、こちらを中心に解説していきます。
エクリン腺は交感神経によって支配されていますが、神経終末からはアセチルコリンが放出されているといった特殊な器官です。(通常、交感神経支配の神経終末はノルアドレナリンが放出)
アセチルコリンがエクリン腺のアセチルコリン受容体(ムスカリンM3受容体)に結合することで発汗が促進されていると考えられています。
アポハイド(オキシブチニン)の作用機序・特徴
アポハイドは、主にエクリン腺のムスカリンM3受容体を選択的に遮断する抗コリン薬です。
アセチルコリンが作用できなくなる結果、エクリン腺からの発汗が抑えられて原発性手掌多汗症の症状改善効果が得られるということですね。
また、アポハイドは外用薬(塗り薬)のため、全身性の副作用軽減も期待されていますが、薬物動態を確認すると、結構吸収されていそうでした…。
本剤塗布時の全身曝露量は、オキシブチニン塩酸塩経口剤3mg単回投与時の全身曝露量を超えることがある。
エビデンス紹介
根拠となった臨床試験は、12~77歳の原発性手掌多汗症患者さん(HDSSが2以上かつ手掌の発汗量が一定以上)を対象に、アポハイドまたはプラセボを両手掌部に1日1回(就寝前)5プッシュした際の有効性と安全性を検討した国際第Ⅲ相試験です2)。
主要評価項目の「4週時点における発汗量のレスポンダー(ベースラインから発汗量が50%以上改善)の割合」は、アポハイド群で52.8%(76/144例)、プラセボ群で24.3%(34/140例)であり、プラセボ群と比較してアポハイド群で有意に高かったとされています(p<0.001)。
副作用
1~5%未満に認められる副作用として、適用部位皮膚炎、適用部位そう痒感、適用部位湿疹、皮脂欠乏症、口渇などが報告されています。
重大な副作用としては、
- 血小板減少(頻度不明)
- 麻痺性イレウス(頻度不明)
- 尿閉(頻度不明)
が挙げられていますので、特に注意が必要です。
こちらは、アポハイドの臨床試験では特に認められていませんでしたが、他のオキシブチニン製剤(経口剤など)で認められていることから、注意喚起のために設定されています。
前述のように、アポハイドは局所外用薬ですが、全身曝露量はオキシブチニン塩酸塩経口剤3mg単回投与時の全身曝露量を超えることがあるとのことですので、全身の抗コリン作用には要注意ですね!
用法・用量
1日1回、就寝前に適量を両手掌全体に塗布します。
なお、1回の塗布量は、両手掌に対しポンプ5押し分を目安とすることとされています。
収載時の薬価
収載時(2023年5月24日)の薬価は以下の通りです。
- アポハイドローション20% 1g:545.80円(1日薬価:242.60円)
算定の根拠については、以下で解説しています。
-
【新薬:薬価収載】11製品(2023年5月24日)
続きを見る
なお、アポハイドは1本4.5mL(4.32g)です。発売当初はmL表記しかありませんでしたが、その後、添付文書が更新されてg表記も併記されるようになりました。
エクロック・ラピフォートとの違い・一覧表
原発性局所多汗症のうち、「原発性腋窩多汗症」については、最近以下の2製品が承認されています。
適応症や剤形が異なる他、アポハイドのみ禁忌や特定の背景を有する患者に関する注意(旧、慎重投与)の項目が多いです。
この理由は、重大な副作用の項目と同様、他のオキシブチニン製剤(経口剤など)で認められていることから設定されているようです。
まとめ・あとがき
アポハイドはこんな薬
- 原発性手掌多汗症に使用する外用の抗コリン薬
- エクリン腺のM3受容体を選択的に遮断し、発汗を抑制させる
- 他のオキシブチニン製剤(経口剤など)で認められている全身性の抗コリン作用による副作用に注意
これまで原発性手掌多汗症では、塩化アルミニウム外用以外の有効な治療選択肢が少なかったのですが、アポハイドが新たな治療選択肢として期待されています。
以上、今回は原発性手掌多汗症とアポハイドローション(オキシブチニン)の作用機序について解説しました。
参考論文・資料など
- 日本皮膚科学会|原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版
- アポハイドローション 電子添文
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