1.中枢神経系

ユプリズナ(イネビリズマブ)の作用機序【NMOSD】

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2021年3月23日、「視神経脊髄炎スペクトラム」を対象疾患とするユプリズナ(イネビリズマブ)が承認されました!

田辺三菱製薬|ニュースリリース

基本情報

製品名 ユプリズナ点滴静注100mg
一般名 イネビリズマブ(遺伝子組換え)
製品名の由来 特になし
製造販売 田辺三菱製薬(株)
効能・効果 視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経脊髄炎を含む)の再発予防
用法・用量 通常、成人には、イネビリズマブ(遺伝子組換え)として
1 回300mg を初回、2 週後に点滴静注し、
その後、初回投与から6 カ月後に、以降6 カ月に1 回の間隔で点滴静注する。
収載時の薬価 3,495,304円

効能又は効果に関連する注意(抜粋)

  • 抗アクアポリン4(AQP4)抗体陰性の患者において有効性を示すデータは限られている。本剤は、抗AQP4抗体陽性の患者に投与すること。

 

視神経脊髄炎スペクトラムは近年新薬開発が活発です。2019年にはソリリス(エクリズマブ)、2020年にはエンスプリング(サトラリズマブ)がそれぞれ登場してきていますね。

 

今回は視神経脊髄炎スペクトラムとユプリズナ(イネビリズマブ)の作用機序について解説します!

 

視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)とは

中枢神経の神経線維が変性・脱落すること(脱髄)が原因で引き起こされる疾患を総称して「中枢神経系炎症性脱髄疾患」と呼んでいます。1)

 

この中で特に視神経や脊髄神経が脱髄して引き起こされる疾患が視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)と呼ばれるものです。

NMOSD:Neuromyelitis optica(NMO) spectrum disorder

 

国内では10万人に3.42人が発症する2)と言われていて、難病に指定されています。1)

 

視神経・脊髄神経の障害のため、症状としては

  • 視覚障害(視力低下・視野欠損、失明など)
  • 運動機能障害

などを発現し、重篤な場合、痙攣や意識混濁、片麻痺といった致死的になることもしばしばあります。

 

原因

NMOSDは抗アポクリン4抗体(AQP4抗体)がその発症に重要とされています。

 

マクロファージやTh2細胞(ヘルパーT細胞の一種)から放出されるサイトカインは様々ありますが、その中でもIL-6による炎症反応がAQP4抗体産生細胞(B細胞)を活性化させます。

 

その結果、AQP4抗体が体内で過剰に産生されてNMOSDを発症すると考えられています。

視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)の原因:抗アポクリン4(AQP4)抗体による発症

 

ただし、NMOSDの全例にAQP4抗体が産生されているわけではなく、一部、産生されていないNMOSDもあるようです。

 

治療

根本的な治療法はなく、ステロイドの大量投与(ステロイドパルス療法)や血液浄化療法といった対症療法が中心です。

 

ステロイドパルス療法で改善が認められても、何度も再発を繰り返してしまいます。そのため、免疫抑制薬などが投与されますが、再発後の治療法として有効なものはありませんでした。

 

2020年には新規の治療薬としてエンスプリング(サトラリズマブ)が登場してきていますね。

エンスプリング(サトラリズマブ)の作用機序・リサイクリング抗体の特徴【NMOSD】

続きを見る

 

今回ご紹介するユプリズナはAQP4抗体陽性のNMOSDに対して特に治療効果が期待されています。

 

ユプリズナ(イネビリズマブ)の作用機序

AQP4抗体産生細胞(B細胞)の細胞膜にはCD19と呼ばれるタンパク質が発現していることが知られています。

ユプリズナはCD19に特異的に結合し、その働きを阻害するモノクローナル抗体薬です!

 

また、ユプリズナは抗体の定常領域(Fc領域)の「フコース」が除去されていて、抗原と結合した抗体をNK細胞が発見(攻撃)しやすくなるといった特徴があります。

 

つまり、ユプリズナにはADCC活性(抗体依存性細胞傷害活性)があるため、免疫細胞がユプリズナの結合したAQP4抗体産生細胞(B細胞)を直接攻撃し、循環血液中から除去すると考えられています。

ユプリズナ(イネビリズマブ)の作用機序:抗CD19抗体+ADCC活性

 

エビデンス紹介:N-MOmentum試験

根拠となった臨床試験(N-MOmentum試験)を一つご紹介します。3)

本試験はレスキュー療法を必要とする少なくとも1回の発作または少なくとも2回の発作の病歴があるNMOSD患者さんを対象に、プラセボ群とユプリズナ群を比較する第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験です。

AQP4抗体の有無は問わず。

 

主要評価項目は「NMOSD発作割合」とされ、AQP4抗体陽性の患者さんの結果は以下の通りでした。

ユプリズナ群 プラセボ群
NMOSD発作割合 12% 39%
HR=0.272 [95%CI: 0.150-0.496]
p<0.0001

 

一方、AQP4抗体陰性の患者さんではユプリズナの治療効果が認められなかったという結果でした。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
従って、AQP4抗体陽性の患者さんで使用されていくと予想されます。

 

副作用

1%以上5%未満に認められる副作用として、頭痛、貧血、リンパ球数減少、好中球減少症、咳嗽、悪心、下痢、脱毛症、関節痛、末梢性浮腫などがあります。

重大な副作用としては、

  • Infusion reaction(12.0%)
  • 感染症(12.4%)
  • 進行性多巣性白質脳症(PML)(頻度不明)

が挙げられていますので特に注意が必要ですね。

 

用法・用量

通常、成人には、イネビリズマブ(遺伝子組換え)として1 回300mg を初回、2 週後に点滴静注し、その後、初回投与から6 カ月後に、以降6 カ月に1 回の間隔で点滴静注します。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
半年に1回の投与はいいですね!

 

ちなみに、類薬のエンスプリングは維持期にも月1回の投与が必要です。

エンスプリング(サトラリズマブ)の作用機序・リサイクリング抗体の特徴【NMOSD】

続きを見る

 

収載時の薬価

収載時(2021年5月19日)の薬価は以下の通りです。

  • ユプリズナ点滴静注100mg:3,495,304円

 

算定根拠については以下をご覧ください。

【新薬:薬価収載】13製品+再生医療等製品(2021年5月19日)

続きを見る

 

まとめ・あとがき

ユプリズナはこんな薬

  • CD19に対するモノクローナル抗体薬
  • ADCC活性によってAQP4抗体産生細胞(B細胞)を除去する
  • 維持期には6か月に1度の投与

 

これまでNMOSDは治療選択肢が少なかったのですが、新たな治療選択肢が加わったことは朗報ではないでしょうか。

 

以上、今回は視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)とユプリズナ(イネビリズマブ)の作用機序・エビデンスについて解説しました!

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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