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2018年5月14日、厚労省は「HIV感染症」を効能・効果とするアイセントレス錠600mg(一般名:ラルテグラビルカリウム)の新用量・剤形追加を承認しました。
製薬会社
- 製造販売元:MSD(株)
これまでアイセントレスには400mg錠(1日2回投与)しかありませんでしたが、600mg錠とすることで1日1回の投与での治療が可能となります。
今回はHIV感染症とアイセントレス(ラルテグラビル)の作用機序についてご紹介します。
AIDSとHIV
AIDS(エイズ)という言葉は一度は耳にしたことがあると思います。
正式名称は「後天性免疫不全症候群(Acquired immune deficiency syndrome:AIDS)」と呼ばれ、体内の免疫細胞が破壊されて後天的に免疫不全を引き起こす疾患です。
AIDSを引き起こす原因とされているウイルスが「ヒト免疫不全ウイルス(HIV)」です。
HIVに感染して数年の潜伏期間(無症状)を経た後にAIDSが発症すると言われています。
AIDSを発症すると全身倦怠感、体重の急激な減少、咳、発熱、発疹、といった風邪のような症状を呈します。
その後、普通では感染しないような日和見感染症(例:ニューモシスチス肺炎、カポジ肉腫、サイトメガロウイルス感染症)を合併し、生命に危機を及ぼします。
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染と増殖メカニズム
HIVの感染経路には以下の3つが知られています。
- 性的感染
- 血液感染
- 母子感染
HIVは一本鎖RNAを持つレトロウイルスで、単体では増殖できません。
従って、ヒト等の動物の細胞内に感染して増殖を行います。それではここから増殖メカニズムについてご説明します。
HIVの構造と吸着・膜融合・脱殻
HIVはエンベロープと呼ばれる外膜の中にカプシドがあり、その中にRNAが封入された構造を有しています。
HIVがヒト細胞に感染すると、
吸着⇒膜融合⇒脱殻というプロセスを経てヒト細胞内にウイルスRNAが放出されます。
ウイルスRNAの逆転写
ヒトの細胞内に放出されたウイルスRNAは「逆転写酵素」と呼ばれるウイルス酵素によって二本鎖DNAが合成されます。
合成されたウイルス二本鎖DNAはヒト細胞の核内へと運ばれていきます。
ヒトDNAへの組み込み(インテグラーゼ)
核内に運ばれたウイルスDNAは、そのままでは複製や転写・翻訳ができません。
そのためウイルスDNAは「インテグラーゼ」と呼ばれるウイルス酵素によって、ヒトDNAの中にウイルスDNAを組み込みます。
ウイルスDNAがヒトDNAに組み込まれることで、HIVに感染したヒト細胞が増殖する際にはウイルスDNAも一緒に増殖していってしまいます。
そしてウイルスDNAの遺伝情報を元に、転写・翻訳が行われ、ウイルスに必要なタンパク質も勝手に合成されていってしまいます。
以上がHIVの感染・増殖のメカニズムです。
HIV感染症の治療
HIV感染症は早期に行うことで、AIDSの発症までの期間を延長することができます。
ただし、HIVを完治させることは現代医学では難しいとされています。
主に使用される薬剤には以下の種類があり、これらを適宜併用した多剤併用療法が基本です。
- 核酸系逆転写酵素阻害剤(NRTI)
- 非核酸系逆転写酵素阻害剤(NNRTI)
- プロテアーゼ阻害剤
- 膜融合阻害剤
- インテグラーゼ阻害剤
特にキードラッグとされているのがインテグラーゼ阻害薬です。
初回治療の組み合わせとしては、以下のいずれかが患者さんの適正に併せて推奨されています。
- NRTI×2剤+INSTI×1剤
- NRTI×1剤+INSTI×1剤
- NRTI×2剤+PI×1剤+リトナビル(PI)
- NRTI×2剤+NNRTI×1剤
これらの多剤併用療法を原則、一生涯行うことでAIDSで死亡することはほとんど無くなったと言われています。
今回ご紹介するアイセントレスはインテグラーゼ阻害薬に分類されている薬剤です。
アイセントレス(一般名:ラルテグラビル)の作用機序
アイセントレスは前述のウイルスDNAがヒトDNAに組み込まれる際に関与している「インテグラーゼ」を特異的に阻害する薬剤です。
インテグラーゼが阻害されることで、ウイルスDNAをヒトDNAへ組み込むことができなくなり、その後の増殖プロセスが全てストップしてしまいます。
上記の作用機序によってHIVの増殖を抑制すると考えられています。
アイセントレス錠の用法・用量
今まで400mg錠しかなかったため、用法・用量は「1日2回経口投与」でした。
600mg錠の登場によって「1日1回経口投与」が可能となりました。
なお、「投与に際しては、必ず他の抗HIV薬と併用すること」とされていますので、基本的には他の抗HIV薬と併用して使用されます。
アイセントレス錠の副作用
主な副作用として発疹、吐き気、めまい、下痢、頭痛、不眠、疲労などが報告されています。
稀に皮膚粘膜眼症候群、過敏症、横紋筋融解症が発現する恐れもありますので注意が必要です。
類薬のテビケイとの違いと使い分け
同様の作用機序(インテグラーゼ阻害薬)を有する薬剤としてテビケイ(一般名:ドルテグラビル)があります。
テビケイは基本的には1日1回の投与ですが、アイセントレスは1日2回の投与であったため、服用回数の違いがありました。この点については両薬剤共に1日1回の投与となります。
アイセントレスは耐性が生じやすい一方で、テビケイは耐性が生じにくいとされています。
従って、アイセントレスに耐性を示した患者さんにもテビケイは使用することができます。
あとがき
アイセントレスはこれまで1日2回投与でしたが、1日1回投与で治療が可能となるため、患者さんにとっては服用回数が減り、コンプライアンスの向上が期待できるのではないでしょうか。
HIV感染症は完治(治癒)することが難しい疾患ですが、HIVの治癒に向けて様々な取り組みが世界中で行われています。
いつの日かHIVを根絶できるような時代が来ればいいなと願います。
以上、今回はHIV感染症とアイセントレス(ラルテグラビル)の作用機序についてご紹介しました。
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