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2020年6月29日、「パーキンソン病」を対象疾患とするオンジェンティス(オピカポン)が承認されました!
小野薬品工業|ニュースリリース
基本情報
製品名 | オンジェンティス錠25mg |
一般名 | オピカポン |
製品名の由来 | 薬が効く時間(ON-Time)、 日常生活における活動状態(ON-State)から命名 |
製造販売 | 小野薬品工業(株) |
効能・効果 | レボドパ・カルビドパ又はレボドパ・ベンセラジド塩酸塩との 併用によるパーキンソン病における症状の 日内変動(wearing-off現象)の改善 |
用法・用量 | 1日1回経口投与(詳細は記事内参照) |
収載時の薬価 | 972.00円 |
オンジェンティスは新規のCOMT阻害薬に分類されていますので、類薬にはコムタン(一般名:エンタカポン)がありますね。
今回はパーキンソン病とオンジェンティス(オピカポン)の作用機序についてご紹介します。
パーキンソン病とは
パーキンソン病は、脳内の「黒質」という部分のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患で、難病に指定されています。1)
特徴的な症状としては、
- 安静時の振戦(手足が震える)
- 筋固縮(筋肉が固くなる)
- 無動(動きが遅くなる)
- 姿勢反射障害(体のバランスが悪くなる)
などがあります。
発症年齢は50~65歳に多いとされており、高齢になるほど発病率が増加する疾患です。
パーキンソン病の原因
現時点では原因不明とされていますが、何らかの遺伝子異常や環境因子が影響していると言われています。
パーキンソン病の各症状は、脳内(中枢)の神経細胞から分泌されるドパミン量が減少することで発現します。
パーキンソン病の治療
治療の基本は薬による薬物治療です。2)
薬物治療にはいくつかの種類がありますが、最も基本となるのが
- L-ドパの補充
です。
ドパミンは、チロシン→L-ドパを経由して脳(中枢)の神経細胞内で合成されます。
直接ドパミンを補充したとしても、ドパミンは血液脳関門を通過できないため脳内に入ることが出来ません。
そのため、ドパミンの前駆物質であるL-ドパ(血液脳関門を通過できる)を補充することでドパミンの合成を促します。
しかし、L-ドパは末梢血において、DDC(ドパ脱炭酸酵素)によって約70%が代謝され、ドパミンに変換されてしまいます。
その他、10%はCOMTと呼ばれる酵素によって3-OMDに代謝され、血液脳関門を通過することができます。しかし3-OMDが多くなると血液脳関門通過時にL-ドパと競合してしまうため、中枢のL-ドパ量が減少するといわれています。
そこでL-ドパ治療時にはDDC(ドパ脱炭酸酵素)を選択的に阻害する「ドパ脱炭酸酵素阻害薬(DCI)」が併用されることが多いです。
最近ではL-ドパとDCIの配合剤も登場していますので、基本は配合剤が使用されていますね。
- ネオドパストン配合錠/メネシット配合錠:DCIのカルビドパ配合
- イーシー・ドパール配合錠/マドパー配合錠:DCIのベンセラジド
L-ドパの補充の他、ドパミンアゴニスト(ドパミン受容体刺激薬)が使用されることもあります。
-
ハルロピテープ(ロピニロール)の作用機序:ニュープロパッチとの違い【パーキンソン病】
続きを見る
L-ドパ治療とウェアリング・オフ現象
L-ドパは投与すると比較的速やかに代謝され、体内から消失してしまいます。
パーキンソン病の初期では、神経細胞内にドパミンが貯蓄されていますので、L-ドパの効果も長期間続き(オン状態)、症状もコントロールできます。
しかし、パーキンソン病が進行すると、貯蓄されていたドパミンが消費されていきますので、L-ドパで補充しても、効果が長続きしなくなってしまいます。
このため、L-ドパの効果が無くなる時間(オフ状態)が生じてしまい、次のL-ドパを補充する前にパーキンソン病の症状が発現してしまいます。
L-ドパ+DCIを投与していても上記の現象が起こってしまう場合、末梢でのCOMTが優位になっていて、3-OMDが増加していると考えられています。3-OMDはL-ドパの中枢への移行を阻害しますので、中枢でのL-ドパの量が減っているというわけですね。
この場合、L-ドパ+DCIに加えてCOMT阻害薬を併用して治療を行っていきます。これまでCOMT阻害薬にはコムタン(一般名:エンタカポン)しかありませんでしたが、ここに新たにオンジェンティスが加わります!!
ちなみに、L-ドパ+DCI+コムタンの配合錠(スタレボ配合錠)も承認・販売されていますね。
ウェアリング・オフ(Wearing off)現象を伴う場合、MAO-B阻害薬(エクフィナ、アジレクト、エフピー)が使用されることもあります。以下の記事で3剤の比較についても考察していますので是非ご覧くださいませ~。
-
エクフィナ(サフィナミド)の作用機序:アジレクト/エフピーとの違い【パーキンソン病】
続きを見る
オンジェンティス(オピカポン)の作用機序・特徴
オンジェンティスはウェアリング・オフ現象を伴う場合に、L-ドパ+DCIと併用して使用します。
末梢のCOMTを選択的阻害することで末梢での3-OMDの産生を抑制し、効率よく中枢にL-ドパを移行させることが可能になります。
ちなみにCOMT阻害薬としては「第三世代」で、長時間作用型といった特徴があります!
副作用
主な副作用として、ジスキネジア(17.3%)、便秘(5.6%)、幻覚(4.4%)、起立性低血圧(4.2%)、体重減少(3.7%)、悪心(3.5%)、幻視(2.8%)、口渇(2.1%)、傾眠(2.1%)などが報告されています。
重大な副作用として、
- ジスキネジア(17.3%)
- 幻覚(4.4%)、幻視(2.8%)、幻聴(0.7%)、譫妄(0.5%)
- 傾眠(2.1%)、前兆のない突発的睡眠(1.2%)
が挙げられていますので特に注意が必要です。
用法・用量
レボドパ・カルビドパ又はレボドパ・ベンセラジド塩酸塩との併用して使用します。
通常、成人にはオピカポンとして25mgを1日1回、レボドパ・カルビドパ又はレボドパ・ベンセラジド塩酸塩の投与前後及び食事の前後1時間以上あけて経口投与します。
収載時の薬価
収載時(2020年8月26日)の薬価は以下の通りです。
- オンジェンティス錠25mg1錠:972.00円(1日薬価:972.00円)
算定根拠については以下の記事で解説しています。
-
【新薬:薬価収載】13製品(2020年8月26日)
続きを見る
オンジェンティスとコムタンの比較・違い
オンジェンティスとコムタンの比較表について作成してみました。
用法以外に特に大きく異なる点は無さそうですが、オンジェンティスでは重度の肝機能障害の患者さんに対して投与禁忌とされています。
まとめ・あとがき
オンジェンティスはこんな薬
- COMTを阻害することでL-ドパの3-OMDへの代謝を抑制し、中枢のL-ドパ量を回復させる
- 1日1回の経口投与が可能
- 類薬にはコムタン(エンタカポン)がある
パーキンソン病は未だ根治治療がなく、症状をいかにコントロールできるかが大切です。
オンジェンティスはウェアリング・オフ現象の改善が期待できることから、パーキンソン病患者さんの症状改善に寄与できると考えます。
コムタンは半減期が短く、L-ドパと同時に服用する必要がありますが、今ではL-ドパ+DCI+コムタンの配合錠(スタレボ配合錠)も使用できますので、オンジェンティスとどう使い分けられていくのか興味深いと感じますね。
以上、今回は新規COMT阻害薬のオンジェンティス(オピカポン)の作用機序・特徴・エビデンス等についてご紹介しました!
引用文献・資料等
- 難病情報センター | パーキンソン病(指定難病6)
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
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