3.呼吸器系

スピオルト レスピマット(チオトロピウム/オロダテロール)の作用機序【COPD】

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2015年9月28日、厚労省は「慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解」を効能・効果とするスピオルトレスピマット28吸入、同レスピマット60吸入(一般名:チオトロピウム臭化物水和物/オロダテロール塩酸塩)を承認しました。

 

本剤は、

  • 長時間作用性抗コリン薬(LAMA)のチオトロピウム
  • 長時間作用性β2刺激薬(LABA)のオロダテロール

を配合した薬剤です。

 

ちなみに、LAMAは“ラマ”、LABAは“ラバ”と読みます。

今回は慢性閉塞性肺疾患(COPD)とスピオルトの作用機序についてご紹介します。

 

慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは

慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)とは、喫煙を主な原因として発症する肺の炎症性疾患です。

基本的には不可逆的の慢性疾患で、徐々に症状が進行していきます。

 

主な症状は、咳、痰や動作時の呼吸困難などで、患者さんのQOLが著しく低下するだけでなく、症状の進行によって、やがては呼吸不全を起こし、生命を脅かす可能性のある病気です。

 

ではここで、COPDがどのような症状か体験してみたいと思います。

まず息を大きく吸って下さい。そのまま吐かずに吸って吸って吸って・・・・。

ちょっと吐いて下さい。

そしたらまた吸って吸って吸って・・・。ちょっと吐いてください。これを繰り返します。

このような状態がずっと続くのがCOPDの主な症状だとお考えください。

 

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の原因と病態

COPDの最大の原因は喫煙です。

喫煙者の15~20%がCOPDを発症すると言われています。従って、発症予防としては「禁煙」が最も効果的です。

 

喫煙によって気管支に炎症が生じ、それに伴い気管支平滑筋の収縮や肥厚(平滑筋が厚くなってしまう)してしまいます。

また、喫煙による痰も絡みやすくなり、次第に気管支は狭窄していってしまいます。

 

進行してしまうと、酸素を取り込む肺胞自体も炎症によって破壊され、呼吸機能が低下していってしまいます。

呼吸機能が低下しすぎてしまうと、人工呼吸器を用いることもあります。

 

気管支平滑筋の収縮と弛緩(拡張)

通常、気管支平滑筋の収縮や弛緩(拡張)は副交感神経と交感神経によって調節されています。

  • 副交感神経:平滑筋の収縮
  • 交感神経:平滑筋の弛緩(拡張)

 

副交感神経から産生される「アセチルコリン」が平滑筋の「アセチルコリンM3受容体」に作用することで平滑筋が収縮します。

また、交感神経から産生される「ノルアドレナリン」が平滑筋の「アドレナリンβ2受容体」に作用することで平滑筋が弛緩(拡張)します。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療

COPDの治療の基本は気管支拡張薬による薬物療法が中心です。

主な気管支拡張薬には以下があります。

  • 抗コリン薬
  • β2刺激薬
  • テオフィリン薬

 

また、上記薬剤は基本的には「吸入」で使用し、長時間持続タイプのものが使用されます。

 

抗コリン薬の長時間持続タイプを「LAMA」、β2刺激薬長時間持続タイプを「LABA」と呼んでいます。

治療を開始する際には、LAMAやLABAを単剤から使用していきますが、最近ではLAMAの単剤が第一選択として推奨されています。

 

単剤で治療効果が不十分な場合に併用療法(LAMA+LABA)が検討されますが、症状や重症度によっては最初から併用療法が行われることもあります。

その他にも症状に応じて吸入ステロイド薬が適宜併用して使用されることもあります。

 

今回ご紹介するスピオルトはLAMAとLABAを配合した薬剤です!

 

スピオルト レスピマット(チオトロピウム/オロダテロール)の作用機序

スピオルトは、

  • 長時間作用性抗コリン薬(LAMA)のチオトロピウム
  • 長時間作用性β2刺激薬(LABA)のオロダテロール

を配合した薬剤です。

 

チオトロピウムの作用機序

チオトロピウムは抗コリン薬に分類されています。

アセチルコリンM3受容体を遮断することで気管支平滑筋の収縮を抑制し、気管支を拡張するといった作用機序を有しています。

 

オロダテロールの作用機序

オロダテロールはβ2刺激薬に分類されています。

アドレナリンβ2受容体を刺激することで気管支平滑筋を弛緩(拡張)させるといった作用機序を有しています。

 

このように、スピオルトはLAMAとLABAを配合することで、共に気管支を拡張させるといった作用機序を有しています。

これによって、COPDで狭窄した気管支を広げ、呼吸機能の緩和が期待されています。

スピオルトの副作用と注意事項

主な副作用として、口渇などが報告されています。

 

また、本剤は抗コリン薬のチオトロピウムを配合していることから、下記の患者さんには投与禁忌です。

  • 閉塞隅角緑内障の患者さん
  • 前立腺肥大等による排尿障害がある患者さん

共に、抗コリン作用によって、悪化する可能性があるためです。

 

スピオルトの用法・用量

スピオルト1回2吸入を1日1回吸入投与します。

なお、吸入する時間帯は、なるべく同じ時間帯に吸入することが望ましいとされています。

 

あとがき

LAMA/LABA配合薬はすでにウルティブロ吸入用やアノーロエリプタが販売されているため、スピオルトは3剤目になります。

 

最後に・・・COPDは喫煙をしなければほぼ発症しない病気です。もし喫煙されている方がいらっしゃれば、今のうちから禁煙をお勧めいたします☆

以上、今回はCOPDとスピオルト レスピマットの作用機序についてご紹介しました。

 

2019年には4製品目のLAMA/LABA配合剤も承認されましたので、4製品の比較表も下記記事で紹介しています。

ビベスピ(LAMA/LABA)の作用機序:ウルティブロ、アノーロとの違い・比較【COPD】

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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