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2023年3月8日、「ヒトパピローマウイルス感染に起因する疾患の予防」を対象疾患とするシルガード9水性懸濁筋注の新用量追加が承認されました!
これまでは「3回接種」でしたが、3歳以上15歳未満の女性に対して、「2回接種」が可能になります。
MSD|ニュースリリース
基本情報
製品名 | シルガード9水性懸濁筋注シリンジ |
一般名 | 組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン(酵母由来) |
製品名の由来 | 扁平上皮内病変(Squamous Intraepithelial Lesion:SIL)から守る(Guard)ことに加え、 本剤は 9つの HPV 型を含むことから SILGARD®9 と命名された。 |
製造販売 | MSD(株) |
効能・効果 | ヒトパピローマウイルス6、11、16、18、31、33、45、52及び58型の 感染に起因する以下の疾患の予防 ・子宮頸がん(扁平上皮細胞がん及び腺がん)及び その前駆病変(子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)1、2及び3並びに上皮内腺がん(AIS)) ・外陰上皮内腫瘍(VIN)1、2及び3並びに腟上皮内腫瘍(VaIN)1、2及び3 ・尖圭コンジローマ |
用法・用量 | 9歳以上の女性に、1回0.5mLを合計3回、筋肉内に注射する。 通常、2回目は初回接種の2カ月後、3回目は6カ月後に同様の用法で接種する。 9歳以上15歳未満の女性は、初回接種から6~12カ月の間隔を置いた合計2回の接種とすることができる。 |
シルガード9は2015年に申請されていましたが、HPVワクチンの積極的な接種勧奨の一時差し控えを受けて審査が止まっていました。その後、2020年7月21日に正式に承認を取得しています。
また、2021年11月26日にようやく積極的勧奨が再開され、2023年4月1日より定期接種が可能になりました!!!!
厚労省|第41回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 資料
今回は子宮頸がんとHPVワクチン予防接種の状況、そしてシルガード9の作用機序・エビデンスについて解説していきます。
子宮頸がんとHPV(ヒトパピローマウイルス)
子宮は女性の骨盤内にある臓器で、大きさは成人女性で鶏の卵程度です。
子宮は下部にある筒状の「子宮頸部」と、上部にある袋状の「子宮体部」に分類されています。1)
子宮頸がんはその名の通り、子宮頸部から発生する悪性腫瘍ですね。
年間約1万人が罹患して約2,800人が死亡していると言われていて、患者数・死亡者数とも近年漸増傾向にあります。2)
このような子宮頸がんの95%以上は、ヒトパピローマウイルス(HPV:Human papillomavirus)による感染が原因です。1-2)
従って、子宮頸がん予防のためにHPVのワクチン接種が世界各国・WHO等で推奨3)されています。しかしながら日本ではワクチンの予防接種がなかなか進まなかったという問題点もあります。
【出典】厚生労働省|リーフレット:HPV ワクチンの接種を検討している お子様と保護者の方へ
ワクチンで予防しても100%発症を抑えることは困難ですので、もちろん通常のがんと同様、検診等で早期発見することも大切です。
HPVワクチンの予防接種
HPVは180種類以上の型が見つかっているため、その全てに対してワクチンを接種することは困難です。
そこで、発がんに特に強く関わっていると言われている高リスクな型(16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68、73、82)4)を中心にワクチンが接種されます。(ただし、高リスク全てをカバーできるわけではない)
現在、国内では以下の2種類のHPVワクチンが承認・販売されています。
HPVワクチン | 価* | 対応する型 |
サーバリックス | 2価 | 16型、18型 |
ガーダシル | 4価 | 6型、11型、16型、18型 |
*価:対応する型の数
今回ご紹介するシルガード9は、ガーダシルに新たに5つの型(31、33、45、52、58)を追加した9価のワクチンです!!
対応する型としては、6型、11型、16型、18型、31型、33型、45型、52型、58型の9個ですね。
これによって90%以上の子宮頸がんを予防できると推定されています!2)
積極的な接種勧奨の一時差し控え(2013年6月)
日本では2013年4月よりHPVワクチンは定期接種となって、積極的に推奨されていました。
しかし、子宮頸がん予防ワクチン接種後に、複合性局所疼痛症候群などの慢性の痛みを伴う事例や、関節痛が現れた事例などの報告があり、緊急に専門家による検討が行われました。
その結果、定期接種の実施を中止するほどリスクが高いとは評価されませんでしたが、ワクチンとの因果関係を否定できない持続的な疼痛が子宮頸がん予防ワクチン接種後に特異的に見られたことから、定期接種を積極的に勧奨すべきではないとされ、一時差し控えの措置となりました。
厚生労働省|ヒトパピローマウイルス感染症の定期接種の対応について(勧告)
実際に報告されていた重篤な副反応は厚労省のHPに載っていますが、頻度は低いです。
病気の名前 | 主な症状 | 報告頻度※ |
アナフィラキシー | 呼吸困難、じんましんなどを症状とする重いアレルギー | 約96万接種に1回 |
ギラン・バレー症候群 | 両手・足の力の入りにくさなどを症状とする末梢神経の病気 | 約430万接種に1回 |
急性散在性脳脊髄炎 (ADEM) | 頭痛、嘔吐、意識の低下などを症状とする脳などの神経の病気 | 約430万接種に1回 |
複合性局所疼痛症候群 (CRPS) | 外傷をきっかけとして慢性の痛みを生ずる原因不明の病気 | 約860万接種に1回 |
※2013年3月までの報告のうちワクチンとの関係が否定できないとされた報告頻度
2021年11月26日より再開→2022年4月から実施
2021年11月26日に厚労省から健発1126第1号「ヒトパピローマウイルス感染症に係る定期接種の今後の対応について」が発出されたため、積極的な接種勧奨が再開されました!!!
実際の接種の「積極的勧奨」は2022年4月から再開するよう自治体へ通知していますが、準備が整った自治体から順次再開してもOKとのことです。
また、同日にMSDより「ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症に係る定期接種の 積極的な接種勧奨の差し控え終了を受けて MSD株式会社のステートメント」が発出されています。
日本産科婦人科学会や各学会・団体からも多々声明が出され、ようやくの決着です。
WHOは繰り返し若い女性が本来予防し得るHPV関連がんのリスクにさらされている日本の状況を危惧し、安全で効果的なワクチンが使用されないことに繋がる現状の日本の政策は、真に有害な結果となり得ると警告しています。
日本産科婦人科学会は、先進国の中で我が国においてのみ将来多くの女性が子宮頸がんで子宮を失ったり、命を落としたりするという不利益が生じないためには、科学的見地に立ってHPVワクチン接種は必要と考え、HPVワクチン接種の積極的勧奨の再開を国に対して強く求める声明を4回にわたり発表してきました。
【出典】日本産科婦人科学会|子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために
シルガードも2023年4月1日より定期接種化されていますね。
シルガード9の作用機序・特徴
HPVは環状構造の二本鎖DNAウイルスに分類されています。
ウイルス表面(殻)はL1タンパク質によって形成されていて、それを補助するL2タンパク質が存在しています。そして内部には核とDNA(環状二本鎖DNA)があります。
シルガード9は上記のうち、L1タンパク質のみで形成されるウイルス様粒子(VLP:virus-like particle)を含有している薬剤です。
もちろん、シルガード9は核やDNAを有しないため、感染力は全くありません。
ワクチンとしてシルガード9を投与すると、体内の免疫細胞によってHPVに対する免疫を獲得します。その結果、将来HPVには感染しないと考えられますね。
エビデンス紹介:国際共同第Ⅱ/Ⅲ相試験
根拠となったのは日本を含む国際共同第Ⅱ/Ⅲ相試験です。5-6)
本試験は16~26歳の女性を対象に、ガーダシル(4価)とシルガード9(9価)による予防接種の効果・安全性を検討することを目的として実施されました。
詳細は割愛しますが、シルガード9はガーダシルと比較して、新たに追加された5つの型(31、33、45、52、58)に起因する子宮頸部、外陰、腟の高度病変の発症に対する有意な予防効果が示されていますね!
- ガーダシルの発症率:1,000人年あたり1.6例
- シルガード9の発症率:1,000人年あたり0.1例(有効率 96.7%,95%信頼区間 80.9~99.8)
有害事象については両群間で概ね同程度ですが、接種部位に関連する有害事象(疼痛、腫脹、紅斑など)はシルガード9で高かったとされています。
用法・用量
9歳以上の女性に、1回0.5mLを合計3回、筋肉内に注射します。通常2回目は初回接種の2カ月後、3回目は6カ月後に同様の用法で接種します。
また、9歳以上15歳未満の女性は、初回接種から6~12ヵ月の間隔を置いた合計2回の接種とすることができます。
副反応
重大な副反応として、
- 過敏症反応(アナフィラキシー反応(頻度不明)、気管支痙攣(頻度不明)、蕁麻疹(頻度不明)等)
- ギラン・バレー症候群(頻度不明)
- 血小板減少性紫斑病(頻度不明)
- 急性散在性脳脊髄炎(頻度不明)
が挙げられていますので注意が必要です。
これは類薬のガーダシルと同じですね。
シルガード9とガーダシル・サーバリックスとの違い・比較
まずは効能・効果や男女への適応が異なります。
各HPV型に起因する以下の疾患予防 | サーバリックス | ガーダシル | シルガード |
子宮頸がん及びその前駆病変 | 〇 | ○ | ○ |
外陰上皮内腫瘍及び膣上皮内腫瘍 | - | ○ | ○ |
肛門がん及びその前駆病変 | - | ○ (男女) |
- |
尖圭コンジローマ | - | ○ (男女) |
〇 (女性のみ) |
その他、対応する型の数も違いますね。
HPVワクチン | 価* | 対応する型 | 投与間隔 |
サーバリックス | 2価 | 16型、18型 | 初回、1か月後、6か月後 |
ガーダシル | 4価 | 6型、11型、16型、18型 | 初回、2か月後、6か月後 |
シルガード9 | 9価 | 6型、11型、16型、18型、 31型、33型、45型、52型、58型 |
初回、2か月後、6か月後 (9歳以上15歳未満の女性は初回と6~12か月の2回も可) |
*価:対応する型の数
まとめ・あとがき
シルガード9はこんな薬
- 9価のHPVワクチン(4価のガーダシル+5つの型)
- ガーダシルと比較して5つの型に対する悪性腫瘍の予防効果が示されている
ようやく承認され、海外と同じく標準治療の9価のHPVワクチンが日本でも使用可能となります!
以上、今回は子宮頸がんとHPVワクチン予防接種の状況、そしてシルガード9の作用機序・エビデンスについて解説しました。
参考資料・文献等
- がん情報サービス|子宮頸がん
- 日本産科婦人科学会|子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために
- WHO|Human papillomavirus (HPV)
- 日本性感染症学会|性感染症 診断・治療 ガイドライン 2016 (改訂版)
- 国際共同第Ⅱ/Ⅲ相試験:N Engl J Med 2015; 372 : 711 - 23.
- 国際共同第Ⅱ/Ⅲ相試験(最終報告):Lancet. 2017 Nov 11;390(10108):2143-2159.
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