1.中枢神経系

抗酒薬(嫌酒薬)の作用機序【アルコール依存症】

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今回はアルコール依存症抗酒薬(嫌酒薬)の作用機序についてご紹介します。

現在までに抗酒薬は、

  • シアナマイド(一般名:シアナミド)
  • ノックミン(一般名:ジスルフィラム)

が販売されています。

 

アルコール依存症とは

二十歳以上の方でしたら一度はお酒を経験したことがあると思います。

お祝い事や会食など多くの場面でお酒を経験することがあり、生活・文化の一部として親しまれています。

お酒は「百薬の長」とも言われ、適度な飲酒は健康に良いと言われていますが、多量・長期間のお酒はがんの発症リスクを高めたり、死亡リスクを高めてしまいます。

 

アルコール依存症とは、大量のお酒を長期間飲み続けることで、お酒がないといられなくなる状態のことを言います。

常にアルコールが体内にないと不安やイライラしてしまい、アルコールが抜けると離脱症状として頭痛・嘔気・下痢・手の震え・発汗・動悸などの身体面の症状も現れてしまいます。

この症状を抑えるために、またお酒を飲んでしまう、といったサイクルを繰り返してしまいます。

 

アルコール依存症の患者さんは国内で約80万人以上と推定されていますが、予備軍も含めると約440万人にもなると考えられています。

 

アルコール(エタノール)の代謝

体内に摂取したアルコール(エタノール)は肝臓の「アルコール脱水素酵素」によって「アセトアルデヒド」に代謝されます。アセトアルデヒドは毒性が強く、悪酔い二日酔いなど「不快な症状の原因物質」です。

次いで、アセトアルデヒドは「アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)」によって、無毒な酢酸に分解されます。

ALDHは人によって、生まれつき活性具合が異なる(遺伝子多型)ことが知られています。

ALDHの活性が弱いと、お酒が弱くなりますし、ALDH活性が無いと、全くお酒が飲めません(いわゆる下戸タイプ)。

抗酒薬(嫌酒薬)の作用機序

抗酒薬は、アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)を阻害する薬剤です。

抗酒薬を服用してお酒を飲むと、アセトアルデヒドが体内に蓄積されてしまいます。

その結果、顔が赤くなったり、吐き気や頭痛、不快感を引き起こし、非常に辛い思いをします。

 

お酒を飲むとこのような辛い症状が出てしまうため、次第にお酒が嫌いになり、飲酒欲求が低下していくと考えられています。

 

抗酒薬(嫌酒薬)服用時の注意事項

抗酒薬を服用している時には、少量のアルコールを含むお菓子(例:ウイスキーボンボン、栄養ドリンク)や化粧品の使用に注意する必要があります。

少量のアルコールでも飲酒時と同様、不快な症状が出てしまうためです。

 

類薬とあとがき

アルコール依存症に使用できる類薬としては、レグテクト(一般名:アカンプロサート)があります。

レグテクトは、中枢神経系に作用し、グルタミン酸作動性神経活動を抑制することで飲酒欲求を抑える薬剤で、「断酒薬」と呼ばれています。

断酒の意志のある患者さんに対して、「断酒の維持」を補助する目的で使用されます。

詳しくは以下の記事をご参照ください。

 

2018年には、「減酒」をコンセプトとした新規のアルコール依存症治療薬であるセリンクロ(一般名:ナルメフェン)も登場しました!

 

今後、アルコール依存症治療の選択肢の幅が広がっていくのではないでしょうか。

 

以上、今回はアルコール依存症抗酒薬(嫌酒薬)の作用機序についてご紹介しました。

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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