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2012年6月29日、2型糖尿病治療薬のテネリア錠20mg(一般名:テネリグリプチン)が承認されました。
テネリアは「DPP-4阻害薬」に分類されています。
今回は糖尿病とテネリア(テネリグリプチン)の作用機序についてご紹介します。
生体内の血糖調節システム
通常、生体内では以下のいくつかのホルモン等によって血糖が一定に保たれています。
<血糖を上昇させる生体内物質>
- グルカゴン
- アドレナリン
- ノルアドレナリン
- コルチゾール
- 成長ホルモン
<血糖を下降させる生体内物質>
- インスリン
このように、血糖を上昇させる物質は数種類存在していますが、血糖を下降する物質はインスリンしかありません。
インスリンの作用とインクレチン
インスリンは膵臓から分泌されるホルモンです。
分泌されたインスリンは、細胞に作用することで血中のブドウ糖を細胞内に取り込む働きがあります。
この働きによって、血中のブドウ糖を下げる(血糖降下)作用を発揮しています。
また、インスリンの分泌を促進させる物質の一つに「インクレチン」と呼ばれるホルモンがあります。
インクレチンは食事が小腸を通過することで分泌されるホルモンで、血糖依存的なインスリン分泌促進作用があります。
血糖値が低い時にはインスリンの分泌を促進しないため、過剰に分泌されても低血糖になる恐れがありません。
しかし、インクレチンは「DPP-4」と呼ばれるタンパク質によって半減期1~2分ほどの早さで速やかに分解され、効果はすぐ失われます。
糖尿病とは
平成26年の厚労省調査によると、糖尿病の総患者数は316万6,000人であり、前回の調査よりも46万人以上増加しているようです。
糖尿病はその名の通り、血中ブドウ糖濃度が高い状態が慢性的に継続している病態です。
健康診断等で
- 空腹時血糖値が126mg/dL以上
- HbA1cが6.5%以上
の場合に疑われ、数回の検査を経て確定診断されます。
糖尿病には、
遺伝的要因が関与する「1型糖尿病」と、生活習慣などが関与する「2型糖尿病」に分類されています。
日本人では90%以上が「2型糖尿病」に分類されており、食生活・運動不足・肥満等が原因で、以下の理由で引き起こされると考えられています。
- インスリンの分泌低下:インスリン量が減っている
- インスリンの抵抗性増大:インスリンの効きが悪くなっている
糖尿病の治療
糖尿病治療は
- 食事療法
- 運動療法
- 薬物療法
を基本としますが、最も大切なのは食事療法と運動療法です。
食事/運動療法を2~3カ月続けても血糖値が下がらない場合、薬物療法が開始されます。
糖尿病治療薬
糖尿病治療薬にはいくつかの種類があり、年齢や肥満の程度、合併症、肝・腎機能等によって使い分けられます。
まずは経口血糖降下薬の少量から開始されることが多いです。
経口血糖降下薬には以下の種類があり、糖尿病の原因(インスリン分泌低下、抵抗性増大)によって使い分けられます。
<インスリン分泌低下を改善>
- スルホニル尿素(SU)薬:インスリン分泌促進
- グリニド薬:より速やかなインスリン分泌促進
- DPP-4阻害薬:インクレチン分解抑制によるインスリン分泌促進とグルカゴン分泌抑制
<インスリン抵抗性を改善>
- ビグアナイド薬:糖新生の抑制
- チアゾリジン薬:インスリンの感受性を向上
加えて、ブドウ糖の吸収を抑制する「α-グルコシダーゼ阻害薬」や、ブドウ糖の排泄を促進する「SGLT2阻害薬」等も使用されます。
テネリア(テネリグリプチン)の作用機序
テネリアはDPP-4阻害薬に分類されている薬剤です。
DPP-4阻害薬はこのインクレチンを分解するDPP-4を阻害することで、インクレチンの働きを維持させ、その結果、インスリン分泌が促進されて血糖値が降下する、といった作用機序を有しています。
用法・用量
テネリグリプチンとして20mgを1日1回経口投与します。なお,効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら40mg1日1回に増量することができるとされています。
なお、2018年11月28日に40mg製剤が薬価収載されています。
あとがき
テネリアは国内で5番手に登場したDPP-4阻害薬です。
今後もいくつかのDPP-4阻害薬の登場が予定されていますので、使い分け等が検討されれば興味深いと感じます。
2018年2月追記:
DPP-4阻害薬の一覧をまとめました。
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