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2022年1月20日、「片頭痛」を効能・効果とするレイボー錠(ラスミジタン)が承認されました!
日本イーライリリー|ニュースリリース
基本情報
製品名 | レイボー錠50mg/100mg |
一般名 | ラスミジタンコハク酸塩 |
製品名の由来 | 特になし |
製薬会社 | 製造販売:日本イーライリリー(株) 販売:第一三共(株) |
効能・効果 | 片頭痛 |
用法・用量 | 通常、成人にはラスミジタンとして1回100 mgを片頭痛発作時に経口投与する。 ただし、患者の状態に応じて50 mg又は200 mgを投与することができる。 頭痛の消失後に再発した片頭痛発作に対し、本剤を再投与することができるが、 24時間以内の総投与量は200 mg以内とすること。 |
収載時の薬価 | 50mg:324.70円 100mg:570.90円 |
発売日 | 2022年6月8日新発売(HP) |
5-HT1F受容体作動薬で、新規作用機序を有していますね!既に海外では「REYVOW」として承認されています。
片頭痛発作の急性期治療薬として使用するため、選択肢が増えるのは朗報だと思います!
今回は片頭痛とレイボー(ラスミジタン)の作用機序・エビデンスについて紹介していきます。
片頭痛とは
片頭痛は日本人の約10%(約1000万人)に認められる疾患です。
年代としては20歳~40歳代、性別は女性に多いとされています(男:女=1:4)。
もしかしたら今ご覧の方々でも経験されたことがあるかもしれません。
症状としては
- ズキズキと脈打つような痛み
- 頭の片側に急に起こる
- 一度発症すると4~72時間くらい持続する
が特徴的です。
人によっては前兆症状として
- 目のちらつき(キラキラした感じ)
- 視野が狭くなる
- しびれ
- 言語障害
といった症状が現れることもあります。
片頭痛を発症しやすい要因として、
- ストレス
- 睡眠不足
- 高血圧
- ホルモンバランスの乱れ
などが知られていますね。
片頭痛の原因:三叉神経血管説
片頭痛の原因は、明確には解明されていませんが、
- 血管説(セロトニン説)
- 神経説
- 三叉神経血管説
などが提唱されています。1)
最近では、最も有力なのは「三叉神経血管説」と言われています。
何らかの原因で三叉神経が刺激されると、「CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)」などの血管作動性物質が分泌されることが知られています。
CGRPは血管拡張作用がある物質で、血管のCGRP受容体に作用すると、血管の過度な拡張によって周囲の神経が圧迫されて痛みを生じます。
その他にもCGRPは炎症反応を増強させたり、痛みを増強させる作用もあるため、これらの作用によって片頭痛が引き起こされます。
このように血管の過度な拡張と炎症反応によって片頭痛が生じると考えられています。
片頭痛の治療
片頭痛の治療薬には、
- 急性期治療薬(片頭痛の治療目的)
- 予防薬(片頭痛の予防目的)
があります。
急性期治療薬 (片頭痛の治療目的)
今起こっている片頭痛を速やかに消失させる目的の薬です。
重症度に応じて、
- 軽度~中等度:アセトアミノフェン、NSAIDsなど
- 中等度~重度:トリプタン製剤
の使用が推奨されています。
ただし、軽度~中等度の頭痛でも、アセトアミノフェンやNSAIDsの効果が無い場合、トリプタン製剤に変更することもあります。
-
【片頭痛】トリプタン製剤の作用機序と薬剤一覧まとめ比較・使い分け
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吐き気や嘔吐を併発している場合、制吐薬(プリンペランやナウゼリン等)を併用します。
今回ご紹介するレイボーは急性期治療の新たな選択肢ですね!
特に、トリプタン製剤が禁忌とされている脳心血管疾患の既往患者さんなどでは、レイボーが優先的に使用されていくと予想されますね。
予防薬 (片頭痛の予防目的)
片頭痛発作が月に2回以上または6日以上ある場合、予防療法が行われることがあります。1)
主に使用される薬剤は以下です。
- カルシウム拮抗薬
- 抗てんかん薬
- β遮断薬
- 抗うつ薬
- 漢方薬
2021年には新たな予防薬としてCGRP関連抗体薬も登場してきました。
-
エムガルティ(ガルカネズマブ)の作用機序:アジョビ・アイモビーグとの違い【片頭痛】
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レイボー(ラスミジタン)の作用機序・特徴
レイボーは末梢および中枢のセロトニン5-HT1F受容体作動薬です。2)
末梢の三叉神経終末にはセロトニン5-HT1F受容体が存在していて、これが刺激されることでCGRPの分泌が抑制されることが知られています。
レイボーは三叉神経終末のセロトニン5-HT1F受容体を刺激することでCGRPの分泌を抑制し、血管の過度な拡張や炎症・痛みを抑える薬剤ですね!
また、中枢の同受容体に作用することで痛みのシグナル伝達を抑制するとも考えられています。
トリプタン製剤との違い:血管への作用や禁忌項目
ちなみに、トリプタン製剤は三叉神経終末5-HT1D受容体と血管内皮細胞5-HT1B受容体の作動薬です。
-
【片頭痛】トリプタン製剤の作用機序と薬剤一覧まとめ比較・使い分け
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血管内皮細胞5-HT1B受容体が刺激されると血管が収縮しますが、レイボーは5-HT1B受容体への作用がほぼ無いため、血管収縮に影響を与えないといった特徴があります。2)
添付文書抜粋(薬理学的特性)
ラスミジタンは5-HT1F受容体に対し、血管収縮と関連する5-HT1B受容体、及び5-HT1D受容体よりも440倍以上高い親和性を示す(in vitro)。
ラスミジタンは、ウサギ伏在静脈、ヒト冠状動脈、内胸動脈及び硬膜動脈(ex vivo)並びにイヌ冠状動脈及び頸動脈(in vivo)に対して収縮作用を示さなかった。
従って、トリプタン製剤で禁忌とされている
- 心筋梗塞
- 虚血性心疾患
- 脳血管障害
- 一過性脳虚血性発作の既往
- 末梢血管障害
- コントロールされていない高血圧症
などの患者さんに対してはレイボーが期待できるのではないかと考えます。
実際にレイボーの禁忌は「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」のみです。その他、TmaxやT1/2について、以下の表にまとめましたので、ご参考にしていただければ幸いです。
エビデンス紹介:SAMURAI試験とSPARTAN試験
根拠となる臨床試験の一部をご紹介します。主には海外で行われた「SAMURAI試験」と「SPARTAN試験」が根拠で、両試験共にデザインは同じため、合算して報告されています。3)
両試験は月に3〜8回の片頭痛発作を伴う18歳以上の患者さん(MIDASスコア11以上=中等度以上)を対象に、レイボーとプラセボを比較する第Ⅲ相試験です。
2つ以上の心血管危険因子を有する患者さん、予防薬の併用、トリプタン製剤の併用も許容されていました。
主要評価項目は「2時間後の痛みの軽減割合」とされ、いずれのレイボー投与量でもプラセボと比較して有意な軽減が認められています。
副作用
1%以上に認められる副作用として、動悸、回転性めまい、悪心、疲労(無力症を含む)、異常感(ゆったり感、酩酊感を含む)、筋力低下、浮動性めまい(18.8%) 、嗜眠(倦怠感、不快感を含む)、錯感覚、傾眠(鎮静、過眠症を含む) 、感覚鈍麻 、協調運動障害(歩行障害、不器用等を含む)などが報告されています。
重大な副作用としては
- セロトニン症候群(0.1%未満)
が挙げられていますので、特に注意が必要です。異常が認められた場合には投与を中止し、体冷却、水分補給等の全身管理とともに適切な処置を行うこととされています。
用法・用量
通常、成人にはラスミジタンとして1回100mgを片頭痛発作時に経口投与します。ただし、患者の状態に応じて50mg又は200mgを投与することも可能です。
頭痛の消失後に再発した片頭痛発作に対し、再投与することができますが、24時間以内の総投与量は200mg以内とすることとされています。
収載時の薬価
収載時(2022年4月20日)の薬価は以下の通りです。
- レイボー錠50mg:324.70円
- レイボー錠100mg:570.90円(1日薬価:570.90円)
算定根拠については以下をご参考ください。
-
【新薬:薬価収載】8製品+再生医療等製品(2022年4月20日)
続きを見る
まとめ・あとがき
レイボーはこんな薬
- 5-HT1F受容体作動薬でトリプタン製剤ではない
- 三叉神経終末からのCGRP放出を抑制する
- 血管収縮には影響を与えない(禁忌が少ない)
片頭痛は近年、CGRP関連抗体薬等も登場し、薬剤開発が活発化しています。
-
エムガルティ(ガルカネズマブ)の作用機序:アジョビ・アイモビーグとの違い【片頭痛】
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急性期の治療薬としてはトリプタン製剤が長く使用されていますが、心血管障害や脳血管障害の患者さんには使用し辛く、新たな治療選択肢が望まれていました。
-
【片頭痛】トリプタン製剤の作用機序と薬剤一覧まとめ比較・使い分け
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以上、今回は片頭痛とレイボー(ラスミジタン)の作用機序・エビデンスについて紹介しました!
参考資料・論文等
- 日本頭痛学会|慢性頭痛の診療ガイドライン2013、CGRP 関連新規片頭痛治療薬ガイドライン(暫定版)
- J Headache Pain. 2020 Jun 10;21(1):71.
- SAMURAI試験とSPARTAN試験:J Headache Pain. 2019 Jul 24;20(1):84.
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