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今回は5-FU系の薬剤であるティーエスワン(TS-1)の作用機序についてご紹介します。
効能・効果
- 胃がん
- 結腸・直腸がん
- 頭頸部がん
- 非小細胞肺がん、
- 手術不能又は再発乳がん
- 膵がん
- 胆道がん
- ホルモン受容体陽性かつHER2陰性で再発高リスクの乳癌における術後薬物療法(2022年11月24日承認)
TS-1の一般名は「テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム」ですが、略名で「S-1」と呼ばれることもあります。
主成分のテガフールは5-FUと呼ばれる抗がん剤のプロドラッグで、5-FUと同じ作用機序によって抗腫瘍効果を発揮すると考えられています。
TS-1は5-FUを改良した配合剤で様々ながんに対して使用されています!
がん細胞の増殖メカニズム:DNAの複製
がん細胞は細胞分裂を繰り返して無秩序に増殖することが知られています。
細胞分裂を行う際に必要なプロセスとして「DNAの複製」があり、がん細胞はDNAを2倍量に増やしてから細胞分裂が行われます。
DNAを構成する物質として「塩基」と呼ばれるものがあり、以下の4種類が存在しています。
- アデニン(A)
- チミン(T)
- グアニン(G)
- シトシン(C)
複製の際には、二本鎖DNAが解かれて一本鎖DNAになり、その後ポリメラーゼ等によって複製が行われて二本鎖DNAが完成します。
このようなプロセスを経てがん細胞の細胞分裂と増殖が行われています。
がん細胞の増殖メカニズム:転写・翻訳
がん細胞が増殖する際にはタンパク質の合成も必要となります。
がん細胞のタンパク質合成は以下のプロセスで行われます。
- DNAからmRNAの合成(転写)
- mRNAからたんぱく質の合成(翻訳)
mRNAを構成する塩基はDNAと少し異なり、チミン(T)の代わりにウラシル(U)が用いられています。(その他のA、G、CはDNAもmRNAも共通です)
- アデニン(A)
- ウラシル(U)
- グアニン(G)
- シトシン(C)
DNAからmRNAの転写が行われる際にはA、U、G、Cが材料となってmRNAが合成されます。
その後、mRNAを元にして翻訳が行われることで、がん細胞のタンパク質合成が完了します。
5-FUの作用機序
5-FUが体内に投与されると、体内で活性代謝物の「FdUMP」と「FUTP」に変換されます。
それぞれ以下のように作用機序が異なっています。
- FdUMP:DNAの複製を阻害
- FUTP:RNA(mRNA)の機能障害
FdUMPによるDNAの複製阻害
DNAを構成するチミンは「チミジル酸シンターゼ(TS)」と呼ばれる酵素によって合成されています。
5-FUから変換されたFdUMPは体内の「活性型葉酸」と「TS」と複合体を形成することでTSの働きを阻害します。
その結果、DNA複製の際に必要なチミンの合成が阻害され、がん細胞の複製・細胞増殖が抑制されると考えられています。
FUTPによるRNAの機能障害
5-FUから変換されたFUTPはRNAの構成塩基である「ウラシル」と類似した構造を有しています。
そのため、FUTPはウラシルの代わりにがん細胞のmRNAに取り込まれ、それによってmRNAの機能障害が引き起こされると考えられます。
ティーエスワン(TS-1)配合剤の中身
ティーエスワン(TS-1)は以下の薬剤を配合した配合剤です(数字は配合のモル比)。
- テガフール(主成分):1
- ギメラシル(5-FUの分解抑制):0.4
- オテラシル(5-FUの消化管毒性軽減):1
ティーエスワン(TS-1)の作用機序と特徴
主成分であるテガフールは5-FUのプロドラッグであり、肝臓のCYP2A6によって徐々に5-FUへと変換されます。そのため作用時間の延長が期待されます。
作用機序については前述の5-FUと同じように働きます。
5-FUは体内では非常に不安定であり、すぐに肝臓の「ジヒドロピリミジン脱水素酵素(DPD)」によって分解されてしまいます。
ティーエスワン(TS-1)に配合されているギメラシルはDPDを選択的に阻害する物質です。
DPDが阻害されることによって5-FUの分解が抑制されて血中濃度が維持される結果、長時間に渡って5-FUの抗腫瘍効果が得られると考えられます。
また、5-FUは消化管の「オロテートホスホリボシルトランスフェラーゼ(OPRT)」によってFUMPに変換されることで消化管毒性が強く出てしまいます。
ティーエスワン(TS-1)に配合されているオテラシルはOPRTを選択的に阻害する物質です。
OPRTが阻害されることによって5-FUによる消化管毒性が軽減されると考えらえます。
以上をまとめると下図のようになります。
このようにティーエスワン(TS-1)は、
- 5-FUのプロドラッグであるテガフール
- 5-FUの分解を抑制するギメラシル
- 5-FUの消化管毒性を軽減するオテラシル
を配合することで5-FUを改良した薬剤ですね!
ティーエスワン(TS-1)の剤形
剤形には以下があります。
- カプセル剤
- 顆粒剤
- OD錠
昔はカプセル剤しかなく、服用が難しい場合もありましたが、OD錠も登場したことから服用は非常に楽になりました。
あとがき
ティーエスワン(TS-1)は現在でも肺がん、大腸がん、胃がん、膵臓がん、胆道がん、頭頸部がん、乳がんに対して広く使用されている薬剤です。
単剤だけではなく、様々な抗がん剤(例:シスプラチン、オキサリプラチン、イリノテカン、タキサン系薬剤)と併用して使用されることもありますので、患者さんがどのような治療を行っているのか、医師と連携して確認することが大切ですね。
経口剤で簡便な治療ではありますが、副作用(血液毒性や消化管毒性など)にも注意が必要ですし、患者さんの飲み忘れといったコンプライアンスの確認も重要です。
以上、今回はよく用いられている経口抗がん剤であるティーエスワン(TS-1)について、作用機序と特徴をご紹介しました☆
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