1.中枢神経系

ビムパット(ラコサミド)の作用機序と副作用【てんかん】

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2020年12月25日ビムパット(ラコサミド)の効能・効果に「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の強直間代発作に対する抗てんかん薬との併用療法」を追加することについて承認されました!また、成人・小児、共に上記適用で使用可能となります。

 

ビムパットは元々、

  • てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)

の成人に対して適応を取得しており、2019年1月8日には同効能・効果の小児適応も取得しています。

 

また、剤形・規格としては以下ですね!

  • 錠剤50mg/100mg
  • ドライシロップ10%
  • 点滴静注100mg/200mg

 

木元 貴祥
木元 貴祥
ドライシロップと点滴静注は小児の適応拡大時に追加されていますよ。

 

今回はてんかんとビムパット(ラコサミド)の作用機序についてご紹介します。

 

てんかんとは

日本におけるてんかん患者は約100万人と報告されています。

通常、脳の神経は興奮抑制がバランスよく働くことで正常な状態を保っています。

 

しかし、何らかの原因で興奮系の神経が強く働いたり、抑制系の神経の力が弱まることで、激しい電気的乱れ(過剰興奮)が生じます。

そうすると脳は適切に情報を受け取ることや、命令ができなくなり、体の動きをコントロールできなくなります。

これが、てんかんによる発作の発生機序です。

 

てんかんの種類

てんかんは、発作のタイプによって、「部分てんかん」(約60%)と、「全般てんかん」(約40%)に大別されています。

部分てんかんは、脳の一部が興奮することで引き起こされ、全般てんかんは脳の全体もしくは大部分が興奮することで引き起こされます。

 

特に、全般てんかんの中でも重篤な発作型の一つでもある“強直間代発作”は、突然の転倒による重篤なけがの恐れがあるほか、その発作頻度は「てんかん患者の予期せぬ突然死」の最も重要な危険因子とされ、てんかんの中でも極めて重篤な発作型の一つです。

 

また、てんかんの発作症状が持続したり、意識障害があるまま短時間で反復したりする状態が「てんかん重積状態」です。こちらについては別記事で解説しますね。

ブコラム口腔用液(ミダゾラム)の作用機序・特徴【てんかん】

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脳の興奮系と抑制系

脳の興奮系と抑制系のバランスは以下の神経によって調整されています。

  • 興奮系神経:グルタミン神経
  • 抑制系神経:GABA(γ-アミノ酪酸)神経

 

グルタミン神経から分泌されるグルタミン酸が「NMDA受容体」や「AMPA受容体」に結合することで脳が興奮します。

一方、GABA神経から分泌されるGABAが「GABA受容体」に結合することで脳の興奮が抑制されます。

 

通常、てんかん発作時には興奮系の神経(グルタミン神経)が強く働いているため、

  • 興奮系神経を抑制する
  • 抑制系神経の働きを亢進する

といった治療が必要になります。

 

ビムパット(一般名:ラコサミド)の作用機序

グルタミン神経内のグルタミン酸は、SV2A(シナプス小胞タンパク質2A)と呼ばれる部位に蓄積されています。

グルタミン神経に存在する「Na+(ナトリウム)チャネル」からNa+が流入すると、SV2Aからグルタミン酸が放出されます。

 

ビムパットは、「Na+(ナトリウム)チャネル」を選択的に阻害することでNa+の神経内への流入を阻害する薬剤です。

その結果、SV2Aからのグルタミン酸放出が抑制され、てんかん症状の改善効果が得られると考えられます。

 

同様の作用機序を有する他の抗てんかん薬(ラミクタール、レキシン、アレビアチン、等)もありますが、ビムパットはこれらの薬剤と比較してNa+チャネルの不活性化時間が長いといった特徴がありあす。

 

エビデンス紹介

ビムパットは単剤としても他剤との併用療法としても使用可能です。

 

単剤の根拠(成人)

単剤の根拠となった試験はビムパットとカルバマゼピン徐放錠を直接比較した国際共同第Ⅲ相臨床試験です。1)

主要評価項目である「6か月間発作消失率」はビムパット群で74%、カルバマゼピン徐放錠群で70%という結果であり、カルバマゼピン徐放錠群に対するビムパット群の非劣性が証明されています。

 

併用療法の根拠(成人)

他剤との併用療法の根拠となった試験は、中国と日本で行われた第Ⅲ相臨床試験です。2)

既存の抗てんかん薬で十分な発作抑制効果が得られない部分発作を有するてんかん患者さんを対象に、ビムパット(200mg or 400mg)もしくはプラセボを上乗せした際の有効性・安全性を検証した試験です(両群共に1~3剤の既存のてんかん薬と併用)。

 

本試験の主要評価項目は「観察期間に対する維持期間の28日あたりの部分発作回数変化量」です。

試験群 ビムパット
200mg/日群
ビムパット
400mg/日群
プラセボ群
観察期間に対する
維持期間の28日あたりの
部分発作回数変化量
-3.33 -4.50 -1.22
プラセボ群に対する減少率 29.4%
p<0.001
39.6%
p<0.001
-

 

このようにビムパットは単剤・併用療法共に臨床試験で効果が証明されています。

 

副作用

主な副作用として、めまい、疲労、傾眠、頭痛、悪心、などが報告されています。

 

まとめ・あとがき

ビムパットはこんな薬

  • てんかんの部分発作に使用できる
  • ナトリウムチャネルを選択的に阻害する
  • SV2Aからのグルタミン酸放出を抑制する
  • 単剤、併用として使用できる

 

近年、新たな抗てんかん薬が登場してきています。

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治療選択肢が増えることは患者さんにとって朗報ですが、薬剤の使い分け等の検討が進めば興味深いと感じます。

 

以上、本日はてんかんに対する新たな治療選択肢としてビムパット錠をご紹介いたしました♪

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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