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2020年1月23日、「不眠症」を効能・効果とするデエビゴ(レンボレキサント)が承認されました!新規のオレキシン受容体拮抗薬ですね。
エーザイ|ニュースリリース
基本情報
製品名 | デエビゴ錠2.5mg/5mg/10mg |
一般名 | レンボレキサント |
製品名の由来 | Day(日中)+Vigor(活力)+Go(ready to go)が名称の由来である。 |
製造販売 | エーザイ(株) |
効能・効果 | 不眠症 |
用法・用量 | 通常、成人にはレンボレキサントとして1日1回5mgを就寝直前に経口投与する。 なお、症状により適宜増減するが、1日1回10mgを超えないこととする。 |
収載時の薬価 | 2.5mg:57.30円 5mg:90.80円 10mg:136.20円 |
オレキシン受容体拮抗薬としては2014年に登場したベルソムラ錠(一般名:スボレキサント)に次いで6年ぶり、2製品目となります。
今回とデエビゴ(レンボレキサント)の作用機序、そして類薬のベルソムラとの違い・比較について解説します。
不眠症とは
皆様もストレスや不安、緊張で夜眠れなくなった経験があるのではないでしょうか?
日本人を対象にした調査によれば、5人に1人(約20%)が「睡眠で休養が取れていない」、「何らかの不眠がある」と回答しているようです。1)
近年、ストレス社会ともいわれ、不眠症の患者さんは年々増加傾向にあります。
不眠の症状は以下の4つに分類されています。1)
- 入眠障害:なかなか寝付けない
- 中途覚醒:夜中に目が覚めてしまう
- 早期覚醒:朝早くに目が覚めてしまう
- 熟眠障害:睡眠が浅く、よく寝た気がしない
不眠症の原因と脳の興奮系・抑制系バランス
不眠は、以下のような様々な原因によって引き起こされます。
- ストレス(仕事、人間関係、家庭など)
- アルコール摂取
- 薬の服用
- 精神疾患(うつ病など)
- 生活習慣病
脳内には、「興奮系」と「抑制系」の神経が存在しています。
通常はバランスよく存在していますが、上記のような原因によって、興奮系が優位となることで不眠症を発症すると考えられています。
興奮系には「オレキシン」と呼ばれる物質が関与しており、抑制系には「GABA(γ-アミノ酪酸)」が関与しています。
脳内の神経から分泌されるオレキシンが「オレキシン受容体」を刺激することで脳が興奮・覚醒すると考えられています。2)
不眠症の治療
不眠症の治療には、
- 非薬物療法:生活改善、適度な運動、お酒を控える等
- 薬物療法
があります。
まずは、非薬物療法として日常生活の見直しや生活改善(お酒を控える、ストレスを減らす)、入眠環境を整える、 などの改善を心がけます。
非薬物療法を行っても改善しない場合、症状や程度に合わせて以下のような薬物療法が行われますが、日本神経治療学会のガイドラインでは以下の記載があります(一部改編)。3)
薬物療法 | 作用機序 | 副作用 | 依存性 | コメント |
ベンゾジアゼピン系 睡眠薬 |
GABA増強 抑制系の増強 |
持ち越し 健忘 せん妄 転倒 依存 |
あり | 使用頻度多い |
非ベンゾジアゼピン系 睡眠薬 |
GABA増強 抑制系の増強 α1選択性 |
あり | 第一選択 | |
メラトニン受容体作動薬 | メラトニン受容体作動 体内リズムの調整 |
少ない | ない | 睡眠覚醒リズム調子作用に 優れるリズム調製 |
オレキシン受容体拮抗薬 | オレキシン受容体遮断 覚醒系の遮断 |
(少ない) | (ない) | 覚醒系を抑制 |
抗ヒスタミン薬 | ヒスタミン受容体遮断 | 持ち越し効果 体重増加 |
なし | 早期に耐性形成 |
今回ご紹介するデエビゴは「オレキシン受容体拮抗薬」に分類されている薬剤です!
なお、いずれの薬剤も最低用量から開始し、副作用を最小限に抑えながら効果が得られるように慎重に増減して治療を行っていきます。
デエビゴ(レンボレキサント)の作用機序
デエビゴはオレキシン受容体を選択的に遮断する薬剤です!
オレキシン受容体には
- オレキシン1受容体
- オレキシン2受容体
がありますが、デエビゴは両方の受容体に対して遮断作用を有します(ベルソムラも同じ)。
オレキシンがオレキシン受容体に結合することを阻害し、脳の興奮・覚醒を抑制する結果、睡眠作用を促すといった作用機序を有しています。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬との作用機序の違い
ベンゾジアゼピン受容体作動性(ベンゾジアゼピン系)の睡眠薬は、抑制系のGABAの働きを高める働きがあります。
抑制系を亢進させることで、覚醒を無理やり抑えるといった作用機序で睡眠を促していました。
それに対し、オレキシン受容体拮抗薬は興奮系の働きを直接抑制することができるので、より自然な睡眠を促すことが可能と考えられています。
また、オレキシン受容体拮抗薬はベンゾジアゼピン受容体作動性の睡眠薬と比較して依存性(リバウンドや半跳性不眠)や副作用が少ないことも特徴です。3)
エビデンス紹介:SUNRISE 1試験・SUNRISE 2試験
根拠となった臨床試験はいくつかありますが、主には以下の2試験があります。
- SUNRISE 1試験:55歳以上の不眠症患者さんを対象にデエビゴ(5mg or 10mg)とゾルピデム徐放製剤とプラセボを比較する海外第Ⅲ相試験4)
- SUNRISE 2試験:18歳から88歳の不眠症患者さんを対象にデエビゴ(5mg or 10mg)とプラセボを比較する国際共同第Ⅲ相試験(日本人を含む)
SUNRISE 1試験は既に論文で公開されていますので、簡単にご紹介します。
本試験は55歳以上の不眠症患者さんを対象にデエビゴ(5mg or 10mg)とゾルピデム徐放製剤とプラセボを比較する国際共同の第Ⅲ相試験です。4)
ゾルピデム除法製剤は国内未承認
主要評価項目は「客観的睡眠潜時*のベースラインからの変化」とされ、結果は以下の通りでした。
プラセボ群 | ゾルピデム徐放製剤 | デエビゴ 5mg群 |
デエビゴ 10mg群 |
|
客観的睡眠潜時*の ベースラインからの変化 |
–6.5分 | –12.6分 | –16.6分 | –19.5分 |
プラセボとの有意差検定 | - | - | p=0.009 | p<0.001 |
ゾルピデムとの有意差検定 | - | - | p=0.02 | p<0.001 |
*睡眠潜時:消灯あるいは就床時刻から睡眠開始までの時間
プラセボもしくはゾルピデム徐放製剤と比較しても共に有意に睡眠潜時を短くしていますね!
副作用
主な副作用として、傾眠(10.7%)、頭痛(4.2%)、倦怠感(3.1%)等が報告されています。
用法・用量
通常、成人にはレンボレキサントとして1日1回5mgを就寝直前に経口投与します。なお、症状により適宜増減しますが、1日1回10mgを超えないこととされています。
ただし、CYP3A4を阻害する薬剤と併用することで血中濃度が上昇する恐れがありますので、添付文書には以下の記載があります。
CYP3Aを中程度又は強力に阻害する薬剤(フルコナゾール、エリスロマイシン、ベラパミル、イトラコナゾール、クラリスロマイシン等)との併用は、患者の状態を慎重に観察した上で、本剤投与の可否を判断すること。なお、併用する場合は1日1回2.5mgとすること。
収載時の薬価
収載時(2020年4月22日)の薬価は以下の通りです。
- デエビゴ錠2.5mg:57.30円
- デエビゴ錠5mg:90.80円(1日薬価:90.80円)
- デエビゴ錠10mg:136.20円
算定根拠については以下の記事をご確認ください。
-
【新薬:薬価収載】8製品(2020年4月22日)
続きを見る
デエビゴとベルソムラの違い・比較:一包化が可能に!
ベルソムラでは一包化ができませんでしたが、デエビゴは一包化が可能です(下表:無包装状態の安定性試験5))ので、この点はメリットかと思います!
2024年には、新規のオレキシン受容体拮抗薬のクービビック(ダリドレキサント)が登場したため、3製品の比較表について、以下の記事で解説しています。
-
クービビック(ダリドレキサント)の作用機序:ベルソムラ・デエビゴとの違い【不眠症】
続きを見る
まとめ・あとがき
デエビゴはこんな薬
- オレキシン受容体拮抗薬で、オレキシン受容体を遮断することで覚醒系を抑制する
- 類薬にはベルソムラ(スボレキサント)がある
- 一包化が可能
2014年にベルソムラ(スボレキサント)が日本において世界初のオレキシン受容体拮抗薬として承認を取得し、大きな話題となっていました。
以上、今回は不眠症とデエビゴ(レンボレキサント)の作用機序について、そして類薬のベルソムラとの違い・比較について解説しました!
ご参考にしていただければ嬉しいです。
引用論文・資料等
- e-ヘルスネット|不眠症
- Pharmacol Rev. 2012 Jul;64(3):389-420.
- 日本神経治療学会|不眠・過眠と概日リズム障害の診療ガイドライン
- SUNRISE 1試験:JAMA Netw Open. 2019 Dec 2;2(12):e1918254.
- デエビゴ錠 インタビューフォーム
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