過量な薬歴記入に時間外の電話相談。薬局薬剤師の仕事が時間内に終わらず、やむなく残業をすることは稀ではありません。
しかし残念なことに、その残業に対して給料が支払われず、「サービス残業」になりながら働いている薬剤師もいます。
サービス残業は法律違反です。今の薬局で働き続けることは、将来大きなリスクになります。

現在の働き方に疑問を抱える薬剤師は、ぜひ読んでみてくださいね♪
サービス残業はなぜ違法なのか?薬剤師の自主的な残業も法律違反!
サービス残業とは、本来残業代を支払われるべき時間外の労働に対して、賃金が支払われないことです。
薬剤師を含め、原則、日本の労働者(正社員、契約社員、パート、アルバイトなど、就業形態を問わず)には労働基準法という法律が適用されます。これは労働の最低基準を設けた法律です。
確かめよう労働条件|労基法は、働く人みんなに適用されるのですか。
法で定められた時間を超えて労働できるのは、原則として月45時間、かつ年360時間までと規定されています。
特別な事情で月45時間を超えて働く必要がある場合、特別条項という規定を設けた会社のみ働くことができます。その場合も、労働者の残業が月30時間を超える場合、会社は時間外労働に対して150%の割増賃金を支払わなければなりません。
大企業のみならず、調剤薬局を含めたすべての中小企業がこの法律の対象です。

労働時間としてカウントされないサービス残業では、残業時間が月60時間を超えていても割増賃金は適用されません。
サービス残業が判明した場合は、企業に対して「6か月以下の懲役」または「30万円以下の罰金」が科されます。サービス残業が労働者による自主的なものであったとしても同様です。
悪質であれば、厚生労働省によって企業名が公表されることもあり、会社のイメージダウンは避けられないでしょう。
薬剤師が疲弊!調剤薬局でサービス残業が発生する原因とは
どうして調剤薬局でサービス残業が発生するのでしょうか?
主な原因を紹介します。
朝の掃除や開店準備のため、始業時刻より早く出勤しなければならない
上司から、店舗の掃除・準備を行うよう指示されているのに、その時間に対し給料が支払われていないということはありませんか?

朝の掃除が会社(≒上司や管理薬剤師など)から指示されているものであれば、その時間は労働時間とみなされるため給料が発生します。
一方、掃除への参加・不参加に対する評価や罰則がなされない場合は、「所定労働時間外」となり、休憩時間と同じ扱いであるため給料は発生しません。
薬局にこのような雑務についての規定が無く、無償で行うことが当然とされているケースもあります。仮に、週5日働く薬剤師が毎日330分早く店舗に出勤する場合、月に10時間のサービス残業です。
勤怠管理システムによって、残業代が発生する最低時間が定められている
「タイムレコーダーで記録した残業に対して、30分単位で残業代を支払う。30分に満たない場合は切り捨てとする」
薬局の就業規定で、このように定められていることがあります。
薬剤師の勤務時間が17時までの場合、17時29分まで残業をしていたとしても、規定の30分を超えていないため残業代は発生しません。このような就業規定は労働基準法第24条の「賃金全額払いの原則」に違反します。

労働時間を会社の都合で切り捨てる処理は認められず、本来であれば1分単位で残業代が支払われるべきです。
「就業規定で定められているから残業代は発生しないよ」などと上司に言われることもありますが、会社の就業規定よりも労働基準法のほうが優先されます。
このケースも立派なサービス残業ですよ!!
かかりつけ薬剤師指導料・地域支援体制加算による24時間対応がある
加算の対応に苦労していませんか?
かかりつけ薬剤師指導料や地域支援体制加算を算定する場合、薬剤師は薬局の営業時間外でも、電話で患者様からの相談に応じなければなりません。
会社によっては薬剤師にノルマを課し、何十件ものかかりつけ薬剤師指導料を算定するよう指示することがあります。
それにも関わらず、ノルマ達成のインセンティブがないうえに、時間外対応時の給料が支払われない場合も。患者様に頼られるやりがいを感じていたとしても、プライベートの時間を圧迫されるストレスはかなりのものです。
薬歴記入のためやむなく残業しても、給料が発生しない
薬剤師が薬歴を勤務時間内に書き終えることができず、薬局の閉店後に残業して記入することがあります。
ブラックな調剤薬局の場合、上司が薬剤師に対してタイムカードを切った後の記入を促したり、薬剤師が休日にサービス残業をして記入したりするケースが散見されます。「あなたが遅いのが悪い」など、個人のスキルを理由にし、無償で残業をさせる行為は当然違法です。
中には薬剤師1人あたりの処方箋枚数が40枚を超える薬局など、店舗の人員が足りていないことが原因になっていることも。

みなし残業代以上の時間外労働が発生している
管理薬剤師やエリアマネージャーに対し、みなし残業(固定残業)代を支給する薬局があります。
常に一定の残業代が支払われるため、薬剤師側のメリットにも繋がる制度です。しかし中には、残業代が月何時間の残業を想定したものかを規定していない薬局もあります。
本来であれば、定められた時間を超えた時点で、超過分の残業代が支払われるべきです。
にも関わらず、「みなし残業代が固定給に含まれているのでいくら働いても残業代は一定」とされてしまえば、管理者がやむなくサービス残業をすることになります。

薬剤師のサービス残業が抱えるリスク
調剤薬局でサービス残業が横行している現状は改めなければなりません。
薬剤師が今の働き方を続けると、どんなリスクがあるのかを考えてみましょう!
薬局が更に人手不足になるリスク
薬局が所属する薬剤師を無償で労働させることは労働基準法違反。
サービス残業が薬剤師による自主的なものであったとしても、会社は罰則を受け、営業継続が厳しくなります。当然、転職を検討する人も増えるでしょう。
サービス残業が横行していることが外部に伝われば、患者様のイメージダウンはもちろん、今後の採用も難しくなるかもしれません。

薬剤師自身の健康のリスク
薬剤師によるサービス残業が続けば、やがて自分自身の健康を損ないます。
中には非常にタフで、バリバリ仕事することを生きがいにする薬剤師もいるかもしれません。
しかしサービス残業が常態化した働き方を、長く続けることができるでしょうか?
長時間の労働により、薬剤師が体を壊したり、うつになったりして働けなくなることは本末転倒です。薬剤師として長期間働き続けるためには、「長時間働き続けない」ことも必要になります。
自己成長できなくなるリスク
家に帰って、自分のために勉強をする時間はありますか?
近年は専門性が高く、薬局の加算に繋がる専門資格もあります。自分の給料アップのためにも、患者様のためにも自己研鑽は欠かせません。
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認定薬剤師取得までの費用は?制度概要・メリットと申請までの手順を解説
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しかしサービス残業が続けば、これから先に必要になる知識を学んだり、仕事を振り返ったりする時間を持つことはできないでしょう。
所属する薬局で長時間働くだけでは、薬剤師としての将来の成長は無く、自分のキャリアを歩むことも難しくなります。
これら3つのリスクを避けるために、早めに今の働き方を変えようとする決意が必要です。
調剤薬局でのサービス残業を解消する5つの方法!
サービス残業改善のために薬剤師ができることを紹介します。
はじめに、サービス残業を解消することは、個人の力では非常に難しいと認識しましょう。
サービス残業が横行する『ブラック薬局』の現状は、薬剤師一人が変わるだけではどうにもなりません。
経営者、役職者、そして多くの薬剤師が一斉に意識を変えなければ、改善は難しいものです。現状を変えようとして逆に疲弊しないよう、一人で思い悩まないことを覚えておいてください。

サービス残業の時間や仕事内容を『見える化』する
自分が月に何時間サービス残業をしているか把握していますか?
また、時間外労働が発生しているとすれば、それはどの業務によるものでしょうか?
改善の第一歩は、サービス残業の具体的な時間や、その仕事の内訳を把握することです。
自分の残業時間と、その際の業務内容をメモなどに書き留めておきましょう。

サービス残業がいつ、なぜ起きているのかを具体的に探り、客観的な評価ができるようにするのです。
薬剤師の同僚や、後輩にもサービス残業について聞いてみるのもよいかもしれません。
サービス残業が常態化しているのは、自分だけでしょうか。それとも、所属する薬局の薬剤師全員でしょうか。他店の薬局でも同様のことが起きているのでしょうか。
様々な視点でサービス残業の実態を把握できれば、今後上司と相談する上で非常に役立ちます。
サービス残業に対する要望を明確にする
サービス残業を『見える化』できました。
次は「自分の労働環境をどのように変えたいのか」を考えてみましょう。
- 「薬歴の記入で、どうしても毎日1時間程度残業が発生する。この時間をタイムカードを切らずに給料が発生するようにしたい」
- 「できる薬剤師1人に仕事が集中している。マニュアルを作って店舗の皆に仕事を割り振れるようになれば、個人のサービス残業の時間が減るかもしれない」
- 「自分の所属する店舗だけ飛びぬけて残業時間が長い。別の店舗に異動したい」
などなど、箇条書きで書きだしてみると良いですね。
本来あってほしい薬局の姿がクリアになったかと思います。
サービス残業は当然法律違反ですが、人事部や経営者の問題だと一くくりに考えてはいけません。
「それは現場の薬剤師で対応すべき問題だ」と上司に判断されてしまえば、対処はますます難しくなります。
要望を吟味し、薬局の中で改善が可能なものか、上司の協力が必要なものかを見極めてみましょう。
仕事の属人化を減らす
残業時間の削減が、現場で対処できるような内容であれば、まずは周りの人たちと協力して改善に取り組んでみましょう。
労働時間削減のキーポイントは、仕事の属人化を減らすことです。
属人化とは、その仕事が特定の人間にしか出来ず、個人に仕事が集中することを指します。
かかりつけ薬剤師や在宅対応など、薬剤師の仕事は属人化が起こりやすいものです。
自分でなくてもできる仕事については、自分以外の薬剤師、もしくは医療事務さんに任せられないかを考えてみましょう。
薬局にマニュアルが無く、自分しかその仕事のやり方を把握していないだけかもしれません。
本当に自分にしか出来ない仕事に集中することができれば、日中の仕事の分量に余裕ができ、残業時間の短縮にも繋がります。
直属の上司や人事部門に相談する
自分たちでどうにも対処できない点については、まずは直属の上司に相談してみましょう。
相談するポイントは、
- 月あたり何時間サービス残業が発生しているのか
- どのような仕事を行っているのか
- どうすれば改善すると考えているのか
を具体的に説明することが望ましいです。
現状をただ説明するだけではなく、サービス残業をどのように変えてほしいのか、薬剤師側の要望も伝えましょう。
サービス残業が直属の上司から直接指示されていることもあります。
その場合は、人事部門など、上司のさらに上の人間に相談をすることが必要です。
サービス残業について相談し、正しく給料を支払ってほしいと伝えるのは勇気のいることです。
しかし、上の人間は現場の労働状況について把握しているつもりでも、実は把握できていない、ということはよくあります。会社全体が良い方向に向かうためにも、一度相談をしてみましょう。
それでも改善がなければ転職を検討する
現場でできる限りの労働時間削減を行い、上司や人事部門にも相談し、手を尽くしてもサービス残業は一朝一夕には解決しないと思われます。
何よりサービス残業が常態化しており、経営者が現状を変えようとしていないことが非常に問題です。
初めに申し上げたように、所属する薬剤師の意識が一斉に変わらなければ、会社は変わりません。

一つの調剤薬局に長く勤めていると見えてきませんが、労働時間は調剤薬局によって様々です。働き方を変えたい!と思ったときは、なるべく早く行動しましょう。
サービス残業の無い職場に転職するには?
転職を検討するにあたって、転職先のサービス残業の実態を把握することは非常に難しいといえます。
なぜなら働く時間がブラックボックス化しており、残業をしている当人しか労働時間を把握できないためです。

転職先について正しい情報を得るためには、まずは転職エージェントに相談することをおススメします。
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薬剤師の転職サイト3選を選ぶなら?|評判とエージェントの質を比較
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転職エージェントは、様々な転職者をサポートしてきた経験から、希望先のサービス残業の実態についても把握していることがあります。
まずは自分の所属する薬局のサービス残業について、エージェントに相談してみることから始めてみましょう!
『薬剤師トップエージェント』で自分らしい薬剤師人生を
サービス残業を解消することはゴールではなく、自分らしい薬剤師人生を歩むためのスタートラインです。
長時間、会社のために働くことが成長につながるという意識は過去のものです。今の時代には合わない働き方ですよね…。
- 仕事に精を出した後はプライベートの時間のために余力を残す。
- 家族とリラックスした時間を過ごし、様々な場所に出かけ、興味のある分野について勉強をする。
そんな毎日を楽しむ余裕こそが、薬剤師としてのパフォーマンスにも繋がっていきます。
サービス残業の無い調剤薬局に転職したい!そう思ったときは、ぜひ『薬剤師トップエージェント』にご相談ください。過去実績として、残業がほぼない薬局や、1分刻みで残業代が請求可能な薬局求人がありましたよ。
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まとめ
本記事のまとめです!
本記事のまとめ
- サービス残業は違法:サービス残業は労働基準法違反!自主的な残業でも違法とみなされる。
- サービス残業が発生する原因:開店準備、勤怠管理システムの不備、24時間対応業務、薬歴記入、みなし残業制度の不備などがある。
- サービス残業のリスク:薬局の人手不足が進行、薬剤師の健康が損なわれる、自己成長の機会が減少するなど、長期的な悪影響がある。
- 解決策の提案:残業時間の可視化、具体的な改善要望の整理、業務の属人化を減らす取り組み、上司や人事部への相談などが必要。
- 転職の重要性:現職での改善が難しい場合は、サービス残業のない職場への転職もあり。
薬局薬剤師では、過量な薬歴記入に時間外の電話相談など、やむなく残業をすることは稀ではありません。しかし、残業代が支払われず「サービス残業」となることもしばしば。

もちろん、今の薬局で改善ができるようならそれが最善ですね。もし改善が見られない場合、早めの転職も視野に入れてもよいかもしれません。
本記事が、サービス残業に悩んでいるあなたのお役に立てれば嬉しく思います。
参考書籍・文献
- 残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか? 中原淳 (著), パーソル総合研究所 (著) (光文社新書)
- 完全残業ゼロの働き方改革 米村 歩 (著), 上原 梓 (著) (プチ・レトル社)
- これ一冊でぜんぶわかる! 労働基準法 2024-2025年版 今井 慎 (監修), 池田 優子 (監修), 新井 将司 (監修) (ナツメ社)