「処方せん枚数は多いのに、薬剤師は少ない。調剤薬局の仕事が忙しくて、毎日が大変!」
「昼間に残った仕事をこなすために毎日残業している。仕事が辛い!」
病院・ドラッグストア・MR・研究職など、様々な職種に従事できる薬剤師。
調剤薬局は、仕事が比較的楽だというイメージを持たれることも多い働き口です。しかし、実際の仕事の忙しさは薬局の店舗によって大きく差があります。
今回の記事は調剤薬局の薬剤師向けに、仕事が激務だと感じる理由と解決のポイントを紹介します。
調剤薬局は激務?薬剤師の年齢別平均残業時間は?
調剤薬局の仕事が激務になるかどうかは、勤務地や薬剤師自身の役職に左右されます。働く環境によって、業務量や残業時間が大きく変わるのです。
全国的な平均残業時間については、厚労省から毎月発表されていますが、概ね月10時間前後といったところです。
例えば、令和6年4月分結果確報における所定外労働時間は「10.5時間」でした。
薬剤師に限定するとどうでしょうか。
薬剤師のデータは、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」に薬剤師の平均残業時間が記載されています。令和5年度における企業規模別のデータは以下の通りです。
薬剤師の月あたりの平均残業時間 | ||
企業規模10人以上 | 企業規模1,000人以上 | |
全年齢 | 10時間 | 15時間 |
20 ~ 24歳 | 6時間 | 9時間 |
25 ~ 29歳 | 11時間 | 15時間 |
30 ~ 34歳 | 13時間 | 16時間 |
35 ~ 39歳 | 12時間 | 19時間 |
40 ~ 44歳 | 7時間 | 13時間 |
45 ~ 49歳 | 7時間 | 11時間 |
50 ~ 54歳 | 8時間 | 14時間 |
55 ~ 59歳 | 11時間 | 21時間 |
厚生労働省|賃金構造基本統計調査>令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 第5表
平均残業時間は、従業員数が10人以上の会社では月10時間、1,000人以上の会社では月15時間という結果でした。
これは病院やドラッグストアで働く薬剤師を含めた数値ですが、従業員数が多い会社であるほど、残業時間も長くなりやすい傾向があります。
大手調剤薬局やドラッグストア併設の調剤薬局では、拡大戦略によって店舗数が増加している会社が増えています。必要な人員も多く、従業員の勤務時間が長くなりやすいのかもしれません。
調剤薬局が激務になる理由とは?
調剤薬局の仕事は、その日の受付処方せん枚数や、患者様からの急な相談など、予測のできない要素で溢れています。
門前の病院によって終了時間が左右され、残業が発生しやすい環境でもあるでしょう。
調剤薬局の業務が忙しいと感じる理由を5つ紹介します。
1日に受け付ける処方箋枚数が多い
外来対応の忙しさは、受付する処方せん枚数に影響します。
薬局の門前に大病院がある、あるいは複数のクリニックがあると、1日あたりの処方せん枚数も増加することに。
薬剤師が薬歴を書き上げる時間も、必然的に長くなるでしょう。薬歴の記入が勤務時間を圧迫し、他の業務に影響を及ぼします。
勤務時間中に書き終わらず、やむなく残業した経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、処方せん枚数は季節によっても左右されます。耳鼻科や呼吸器内科の門前薬局では、冬季に患者様が増えるため、残業が発生しやすくなります。
在宅・施設対応で忙しい
在宅・施設でのお薬の管理も大事な仕事です。
しかし準備や移動の時間も含めると、薬局の業務を大きく圧迫することになります。
患者様1件あたりにかかる時間が人によって大きく異なることも不確定要素の一つです。
状態が安定している患者様であれば、定期的なお薬のお渡しだけで完結する場合もあるでしょう。患者様の状況によっては、急変などの臨時対応が必要になり、ケアマネージャーや担当医師から急な要請を受けることもあります。
薬局に勤務する人員が足りない
薬剤師過剰と叫ばれて数年が経ちましたが、現場の感覚と合わないと感じる方が多いのではないでしょうか。慢性的な人手不足に悩む調剤薬局はまだまだ多いです。
大手チェーン薬局であれば、他店舗との兼ね合いもあり、急なヘルプを依頼されて人員が足りなくなることも。
また、調剤薬局は女性が多い職場です。妊娠出産などのライフイベントによる休職・退職、子どもの体調不良による欠員が出やすい環境でもあります。
夕方以降は子どものお迎えがあり、夜間の勤務ができない薬剤師も多いです。夜間の人員が確保できず、常勤の薬剤師に負担が集中することが考えられます。
薬の在庫管理や薬局の売上管理
管理薬剤師やエリアマネージャーの場合、患者様との対応以外にも仕事が発生します。
薬局を維持するための、薬の在庫管理、売上の管理、シフト作成など人員マネジメントや、本部への資料の作成など。
その仕事は多岐にわたり、対応には多くの時間が必要になると考えられます。
役職がつくと仕事が増える分、会社からもらう給料も多くなるものです。しかし、普段の外来と並行してマネジメント業務を行うことで、慢性的な残業が発生し、苦しい思いをしている役職者がたくさんいます。
ノルマの多さによる疲弊
勤務する会社によっては、薬剤師にノルマを課す場合があります。
代表的なものは『かかりつけ薬剤師』の件数です。
かかりつけ薬剤師の件数が増えるほど、その薬剤師が対応する患者様の数が増えます。場合によっては、患者様から業務時間外の相談を受ける場合も。
ノルマが達成できない場合は上司から指導を受けることもあり、心理的に大きな負担となるでしょう。
それ以外の加算は、服薬情報提供書(トレーシングレポート)を病院に送付することが要件になっているものが多く、書面の作成にも多くの時間がかかります。
岐阜大学医学部附属病院 薬剤部|トレーシングレポート(服薬情報提供書)>服薬情報提供書(がん化学療法)
ノルマを達成できても、自分の給料に反映されない場合も多く、大きな業務負担になることは間違いありません。
激務はどうすれば改善できる?自分でできる対策
環境に左右される要因については、自分ではどうしようもできません。
ならば、まずは自分でできる対策から考えてみましょう!
薬歴を短縮するには、入力の効率化とメモを活用!
すべての薬剤師が取り組む必要があり、残業の原因になりやすいのが薬歴です。
薬歴を書くためには、
- 患者様の画面を開く
- 薬剤情報を見て会話の内容を思い出す
- SOAPを記入する
というプロセスをたどります。
薬剤師が薬歴を速く書くことができるのは、患者様に薬をお渡しした直後です。とはいえほとんどの薬剤師は、薬歴を外来終了後にまとめて書いているのではないでしょうか。
文字入力が遅い場合は、少しずつブラインドタッチに挑戦しましょう。PCに単語登録ができる場合は、使用頻度の高い単語を登録することで、記入の時間短縮が可能です。
会話内容を素早く思い出すため、調剤録の裏面をメモとして使用するという手段もあります。患者様に薬を渡した直後、数行程度のメモを残すだけでも、薬歴のスピードが上がりますよ。
他医療機関との連携では、必要な工程を削減できるかチェック!
加算を得るための服薬情報提供書や吸入薬指導報告書、在宅実施の報告書など、病院に送付する書類は様々です。
作成する書類の数自体を減らすことは難しいため、ひとつの仕事が終わるまでに必要な工程を減らせないか考えてみましょう。
例を挙げると、単純な残薬調整であれば、疑義照会なしで薬局で日数変更をしてもよいといった取り決めです。
当日中に患者様のIDと、変更した薬の内容を簡単なメモにまとめ、病院の受付の方に渡すだけでよいと医師と合意しているため、薬局・病院双方の業務軽減になっています。
業務効率化のためのツールを導入するのも効果的です。
最近の薬歴ソフトには、患者様の情報画面から直接情報提供書を作成する機能や、作成した書類をPCからFAXできる機能など利便性が高いものが増えています。お薬相談がチャット上で完了するアプリなどもあり、重なると大きな負担軽減につながるでしょう。
どうしても対応が出来ない場合は、店舗の状況を上司に共有しよう!
現場の薬剤師だけでは対応が難しい課題もあります。慢性的な人材不足などは、その最たるもの。
その場合は1人で悩まずに、上司に店舗の状況を報告しましょう。
現場が疲弊していても、その状況が伝わっておらず、対応がおろそかになっているかもしれません。
その際に大切なのは、「これ以上は現場ではどうしようもできない」ということをしっかり伝えることです。対策を行ったうえでも激務が続くことを共有し、改善対応を依頼しましょう。
今の勤務先がしんどい、といった気持ちがあれば、思いきって店舗異動をお願いしてみるのも1つの手です。環境が変わることで業務負担が改善され、前向きに仕事できるかもしれませんよ。
それでも難しければ、転職を検討しよう!
上司に相談しても、状況が改善されない場合もあります。人員の兼ね合いで店舗異動が難しいときもあるでしょう。
そんなときは転職で、会社を変えるのがおすすめです。
薬剤師の待遇が悪い、ノルマが過剰すぎる、といった状況は、職場を変えなければ原因改善にはなりません。
転職は大きな決断でしょう。
しかし激務で苦しむ状況が続けば、将来的には体調不良につながる可能性もあり、非常に危険です。
転職を迷っている場合であっても、まずは自分の労働環境について転職エージェントに相談することで、心理的な負担の軽減にも繋がりますよ。
薬局が抱える課題を解決するには?自分で対応できるかを見極めよう!
自分の勤務する薬局がどんな課題を抱え、どのような対策が可能かを考えてみましょう。
職場の問題を解決するための考え方には様々なものがありますが、ここではトヨタ自動車で採用されている『なぜなぜ分析』という手法を紹介します。
これは問題に対し、「なぜこうなっているのか」という問いを5回繰り返すことで、原因を究明するプロセスのことです。製造業のみならず、医療現場での事故を回避する手法としても用いられています。
【課題】毎日残業している
(なぜ①)なぜ残業が発生しているのか?・・・薬歴が書き終わらないから
(なぜ②)なぜ薬歴が書き終わらないのか?・・・一件に時間がかかりすぎるから
(なぜ③)なぜ時間がかかるのか?・・・入力が遅いから
ここで多くの人は、入力の遅さを改善しようと考え、タイピングの練習といった対策をとりがちです。
しかしブラインドタッチを身につけても、残業時間が変わらなかったとします。
ここからもう少し踏み込んで、「なぜ」と問い続けるのがポイントになります。
(なぜ④)なぜ入力が遅いのか?・・・SOAPの中でAを書くのが遅いから
(なぜ⑤)なぜAが書けないのか?・・・取り扱っている薬の知識が不足していて、患者様に効果的な質問ができていないから
より深い原因特定をする事ができ、知識不足や患者様とのコミュニケーションスキルが課題だとわかりました。表面的な原因に惑わされないために、『なぜなぜ分析』は非常に効果的です。
例えば、薬局の人手不足が大きな原因となっているのであれば、薬剤師一人の裁量で変えることはできません。
分析で浮かび上がった原因に対し、自分では対応できないと結論できた場合は、外部に助けを求めたり、労働環境を変えたりすることが最も有効です。
環境を変えて自分らしく働こう!希望の条件は転職エージェントと相談を!
激務にならない薬局に転職するには、どうすればいいのでしょう?
まずは、自分が働きたい薬局の希望の条件を明確にすることです。
そして、希望先の1日あたりの処方箋枚数や、1日に勤務している薬剤師の数、近隣医療機関の情報をきちんと把握しましょう。
こういった情報は、会社の求人情報を直接確認するだけではわからないもの。転職エージェントに相談することで、教えてもらえる場合が多いですよ。
事前に把握できないときは、会社との面接時に、採用担当者に確認しましょう。自分の理想の職場と、実際の職場とのギャップが少なくなるよう、事前にきちんと確認しておくことが大事です。
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上記記事でも紹介していますが、調剤薬局に転職したい!と思ったときに利用したい転職サイトは、『薬剤師トップエージェント』です。
スタッフによるきめ細やかなサービスで、希望の条件に必ずマッチした就職先を提案してくれます。
押し売りは一切なく、ミスマッチが起きそうなら転職を勧めません。これまで100名以上の利用者がいらっしゃいますが、未だに1年以内の早期退職・離職者は0名です。
自分の勤務先について客観的な目線を持つためにも、一度現在の状況を相談してみるのがおすすめです。
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ブログ紹介記事
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調剤薬局の仕事量は、自分の働く環境や役職によって大きく左右されます。
もしも自分が薬局の激務に疲れ、生活に影響が出ているのであれば、勇気を出して現状を変えてみましょう。