
「在宅は大切な仕事だけど、自分ではやりたくない!」
「患者さんの自宅に入ることに、どうしても抵抗がある」
「薬局で働きたいけれど、在宅で残業が発生してしまうことが嫌だ」
こんな思いを抱えている薬剤師さんはいませんか?
薬剤師であっても、「在宅が苦手」「在宅に行きたくない・やりたくない」と考える方は多いものです。
この記事の結論
- 在宅業務がキツイ理由は①衛生環境 ②密なコミュニケーション ③休憩・休日中の対応 ④健康管理のプレッシャーの4つ
- 在宅を楽にするコツは、認知症のBPSD(行動・心理症状)を学ぶことと、薬剤師として割り切ること
- どうしても嫌なら無理をせず、外来中心の働き方・在宅のない薬局・ドラッグストア・企業・パート/派遣で活躍しよう
- 在宅のために薬剤師が潰れてはいけない
在宅業務では、外来での投薬に比べて患者さんとより密に接します。
やりがいを得られる反面、患者さんや他の医療従事者とのコミュニケーションに苦しみ、大きなストレスを抱えてしまう人もいるのです。
薬剤師の仕事は在宅だけではありません。
在宅業務を行っていない職場への転職
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在宅医療の今後の流れ|薬局で在宅が求められる2つの理由
在宅医療を始める医療機関・薬局は増加しており、患者さんからのニーズも高まっています。
なぜ在宅訪問業務がこれほど重要とされているのかを見ていきましょう。今後の医療の方向性も見えてくると思いますよ~。
①地域包括ケアシステムの推進
一番大きい流れとしては「地域包括ケアシステム」が挙げられます。
地域包括ケアシステムとは、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、高齢者が重度な要介護状態になっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けられるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供する体制のことです。厚生労働省が推進しています。
この中で薬局・薬剤師に期待されている大きな役割が在宅医療です。厚生労働省が示した「患者のための薬局ビジョン」でも、かかりつけ薬局の機能として『24時間対応・在宅対応』が挙げられているのは皆さんご存じの通りでしょう。
この流れを受けて、調剤報酬改定では在宅医療にまつわる加算が強化される傾向にあります。
また、日本では急激に高齢化が進んでいますが、処方箋の伸び率は鈍化していることをご存じでしょうか。
厚生労働省|居宅療養管理指導(R2.8.19)
今後は外来で処方箋を受け付けるだけでは、以前のような利益は見込めないと想定されます。そのため、加算が強化されている在宅医療にシフトせざるを得ない薬局が多数を占めているのです。
②高齢化による在宅ニーズの増加
二つ目の流れは、やはり高齢化でしょう。日本では後期高齢者の割合が急激に増加しています。
それに伴い、自立して活動が行えない人の割合も増加することが予想されているのです。
病院や薬局に通うことができない人は、薬を手に入れるために薬剤師の在宅訪問を希望されるでしょう。経腸栄養剤などの重い薬を運ぶことができず、薬剤師に依頼する場合もあります。
身体的な衰えがあっても自分の家で住み続けるために、在宅のニーズはどんどん増えているのです。
「地域包括ケアシステム」と「高齢化」という二つの要素によって、今後も在宅医療へのシフトはますます加速していくと予想されます!
やりがいはあるけれど、在宅はキツイ!4つの理由
ニーズが高まる在宅医療ですが、現場で働く薬剤師にとっては良いことばかりではありません。中には在宅が原因で、多くのストレスを抱えてしまう人もいます。在宅がキツイと言われる理由は何でしょうか?
①患者さんの自宅の衛生環境が良いとは限らない

在宅が大きなストレスになる理由の1つ目は、患者さんの自宅環境が不衛生である場合です。中には、びっくりするような生活環境で暮らしている患者さんもいます。
特に認知症を患っている患者さんの場合、衛生環境が悪くなるケースが多いです。
私が体験したケースでは、ゴミが散らかっている、家の中に虫がいる、お手洗いの処理ができていない…とさまざまでした。
このような患者さんの担当になった場合は、在宅が辛いと思う可能性が高いでしょう。
②患者さんや医療従事者と密に接しなければならない
在宅がキツイと感じる理由の2つ目は、患者さんや他の医療従事者とのコミュニケーションが増えることです。
在宅の現場では、日常生活に密着した情報収集が重要です。患者さんとの距離が近くなる分、雑談など、薬と関係のない話をする機会も増えます。
コミュニケーションを取るのは患者さんだけではありません。医師やケアマネジャーさん、ヘルパーさん、訪問看護師さんといった、さまざまな職種と接する機会が増えます。場合によっては、薬剤師側から処方の提案をすることもあるでしょう。
③休憩中・休日中の対応を余儀なくされる
在宅訪問を行う以上、休憩時間中・休日中の対応を覚悟しなければいけません。
在宅を始めると、患者さんからさまざまな連絡をいただくようになります。薬の質問、薬を紛失した、体調変化、次の受診について…。普段の生活でも、いつ電話がかかってくるか気になってしまいます。
患者さんの体調が急変したときは、急いで薬を届けに行かなければなりません。在宅を担当していないときに比べると、自由な時間が減る可能性は考慮しなければならないでしょう。
④患者さんの健康維持に対するプレッシャーが大きい
在宅は、薬剤師が薬を届けるだけでは意味がありません。患者さんの日常に接し、微妙な体調の変化を見極め、大きな病気を予防することも重要な役割です。
- 「睡眠薬が追加になったけれど、転倒リスクを高めるような薬は他にないかな?」
- 「この薬の副作用が疑われるから、休薬を相談しようかな」
上記のように、薬の副作用を防ぐことはもちろん、将来のリスクを見極めて薬剤師から医師に相談を持ちかけることが重要になってきます。
薬剤師にとって意義がある業務であることは間違いありません。その分、プレッシャーも大きいものです。
私が処方変更を提案するときは、薬について勉強し、本当に間違いないかを吟味してから提案していますよ~。
患者さんの健康を自分が担っていることに対するストレスは、人によっては非常に辛いものかもしれませんね。
辛い在宅が楽になった!在宅を楽しくする2つのコツ
「在宅は苦手だけれど、今の職場ではどうしても在宅を担当しないといけない」
「どうすれば、在宅が楽しくなるのかな?」
在宅が嫌だと思っていても、どうしても業務から離れられない人もいるはずです。
①認知症が原因なら、行動・心理症状(BPSD)について学ぼう
- 「会話中、ちょっとしたことで怒られてしまった!」
- 「すぐに不安になってしまい、会話が成り立たない」
認知症の患者さんの場合、上記のようにコミュニケーションに悩んで、在宅が辛いと思った時期がありました…。
しかし、しっかり認知症について学んで対策を取ることで、改善を目指すことができましたよー!
認知症の主な症状は、認知にまつわる脳機能の障害である『中核症状』と、精神症状や行動障害を中心とする『行動・心理症状(BPSD)』に分かれます。
| 分類 | 主な症状の例 |
| 中核症状 | もの忘れ(記憶障害)、言葉が出てこない、日時や場所がわからない(見当識障害)、段取りができない(実行機能障害) |
| 行動・心理症状(BPSD) | 興奮・暴言、妄想、不安、抑うつ、徘徊、不潔行為、睡眠障害 |

家族や医療従事者とのコミュニケーションで問題になりやすいのは、中核症状よりもBPSDです。
厚生労働省の『かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン』では、まず非薬物的な対応を優先し、BPSDの原因となり得る薬剤(抗コリン作用を持つ薬など)がないかを確認・見直すことが推奨されています。
抗精神病薬などの向精神薬は、それでも改善しない場合に、リスクとベネフィットを考慮して慎重に検討するものと位置づけられています。
薬剤師としては、BPSDを悪化させている薬がないかを確認し、医師に減薬や変更を提案することが大きな役割です。
自分の取り組みによって患者さんの症状が徐々に和らいでくると、コミュニケーションが取りやすくなり、日々の在宅が苦痛ではなくなるでしょう。家族や他の医療従事者に感謝され、自分のモチベーションにもつながります。
②感情移入しすぎない!あくまでも薬剤師として割り切る
在宅訪問を始めたばかりのころは、どうしても在宅が苦手でした。毎週患者さんの家に行く日が億劫だった時期もあります。
患者さんに理不尽な対応をされたときも、他の医療従事者との意見交換で緊張しているときも、自分は「かっこいい薬剤師だ!」と思い込んで、あくまでも素の自分を出さないようにしました。
薬剤師の仮面を被って接すれば、患者さんに感情移入しすぎることなく、あくまでも「仕事だ」と割り切って在宅に取り組むことができます。
苦労した場面でも、素の自分の感情は一旦棚に上げて、薬剤師として物事を俯瞰するように努めました。
たとえ心の中では嫌だと感じていても、経験を積むうちに、患者さんや他の医療従事者から頼られるようになります。自分の取り組みで患者さんのQOLが改善し、感謝の言葉をいただいたときは、非常に嬉しいものです。
辛いと思っていても、薬剤師として割り切って接することで、だんだんと業務の魅力に気づくこともありましたよー!
在宅をどうしてもやりたくない!と感じたときの対処法5つ
上記を実践しても、どうしても在宅が受け入れられないと感じる人もいます。そんな薬剤師さんに伝えたいことは、決して無理をしてはいけないということ。
いくら患者さんのためとはいえ、自分自身が消耗してしまっては元も子もありません。「どうしても無理…」と感じた際は、早めに行動しましょう。
ここからは、「在宅をどうしてもやりたくない!」と感じた場合の対処法を5つ紹介します。まずは選択肢を一覧で比較してみましょう。
| 選択肢 | 在宅の少なさ | ポイント・注意点 |
| ①会社に相談し外来メインで働く | △ | 転職不要。在宅以外での貢献を示すことが必要 |
| ②在宅をしていない薬局に転職 | ○ | 大病院や小児科・整形外科・眼科の門前が狙い目 |
| ③調剤併設型ドラッグストアに転職 | ○ | OTC販売や品出しなど業務は多種多様 |
| ④薬局以外(製薬企業・卸など)に転職 | ◎ | 調剤から離れる。リモートワーク可の求人も |
| ⑤パート・派遣薬剤師として働く | ◎ | 時間の自由度は高いが、雇用の安定性は正社員より低い |
①会社に相談し、外来メインで働く
まずは、所属している薬局の上司に相談することです。在宅がどうしても辛いこと、在宅に行くことに抵抗があることをしっかり伝えましょう。
その際のポイントは、「なぜ在宅が嫌なのか」「その代わりに自分がどう薬局に貢献できるのか」をしっかり伝えることです。
嫌だと伝えるだけで終わらせず、在宅以外の場面で自分がどう活躍できるのかを明確にしたうえで相談しましょう。
- 学校薬剤師の業務を担当する
- 糖尿病療養指導士などの資格を取り、外来で生活習慣病の指導ができるようになる
- かかりつけ薬剤師指導料を多く算定する
外来でこそ輝ける薬剤師もたくさんいます。在宅で消耗するよりも、自分に合った方法で働くことが重要です。
例えばかかりつけ薬剤師として患者さんの薬を一元管理し、薬による健康被害や体調悪化を防ぐことは、在宅と同じぐらい大切な業務です。
かかりつけの患者さんが多い薬剤師は、その分外来で指導に当たる機会が増えます。外来メインで働ける可能性が高まるかもしれませんね。
②在宅に力を入れていない・在宅を行っていない薬局に転職する

2つ目の方法は、在宅そのものを行っていない薬局に転職することです。意外とありますよ~。具体的には「大病院の門前薬局」と「小児科・整形外科・眼科の門前薬局」ですね。
大病院の門前薬局
大病院の門前薬局には、日々多くの患者さんが来局されます。必然的に調剤、外来対応、薬歴の記入が優先され、在宅を受け入れる余裕がない薬局もあるのです。
私が学生実習でお世話になった薬局は、県内でも有数の大きさを誇る病院の門前でした。その薬局は外来機能に特化しており、在宅を担当している薬剤師はいなかったのです。
在宅の依頼があった際は、近隣にあるグループ薬局に相談していました。「門前薬局は外来中心」「近隣薬局は在宅中心」と、薬局同士で棲み分けがなされていたのです。
そのため、在宅を希望しない薬剤師さんは、大病院の門前を中心に求人を探して転職することが一つの方法です。
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小児科・整形外科・眼科の門前薬局
病院からの依頼を受けて在宅が始まるケースもあります。そのため、門前の医療機関の診療科によっても、在宅の依頼を受ける数が左右されるのです。
在宅の依頼を受けることが多い診療科は内科です。慢性期の生活習慣病を治療している高齢者が多く、年齢を重ねるにつれて在宅に移行する人も多いと考えられます。
反対に、在宅が少ないのは小児科・整形外科・眼科です。これらの医療機関では医師が在宅医療に対応していない場合が多く、薬局への依頼も少ないです。
ただし、まれに『小児在宅』を実施している医療機関・薬局もあります。在宅が行われているかどうか、転職前に必ず確認しておきましょう。
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③調剤併設型のドラッグストアに転職する

おすすめの転職先として、調剤併設型ドラッグストアも挙げられます。ドラッグストアは、まだまだ在宅に対応していない店舗が多いことが理由です。
また、ドラッグストアは調剤薬局と違い、昼の中抜けの時間がないことも多いため、在宅訪問に取り組みにくいと考えられます。
大手ドラッグストアでは在宅訪問を受け入れる体制を整えている企業もありますが、まだまだ少数派です。転職の際は、ドラッグストアも視野に入れて就職先を探すことがおすすめです。
ドラッグストアの求人を探す場合も薬進キャリアサポートが一押しです。
④薬局以外(製薬企業、卸など)に転職する

薬剤師の資格が活かせるのは、薬局・ドラッグストアだけではありません。以下のような職場で働いている薬剤師もたくさんいますよ~!
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- 製薬企業・卸の内勤職
- 物流センター
- 予備校講師
調剤以外の働き方やリモートワークについては別の記事で解説していますので、ぜひご確認ください。
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⑤パート薬剤師、派遣薬剤師として働く
働き方を変えることで、在宅訪問をせずに働くことも可能です。おすすめの働き方は、パート薬剤師もしくは派遣薬剤師です。パート薬剤師として時短勤務で働けば、時間の制約があるため、日中に在宅訪問を任されることは少なくなります。
また、派遣薬剤師は契約期間に応じてさまざまな店舗を移動するため、在宅訪問を任されることは非常にまれですね。
パート薬剤師・派遣薬剤師であれば、在宅で休日の対応を迫られることもないため、自分の時間を満喫することができるでしょう。ただし、正社員と比較して雇用は安定していません。
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在宅が辛い薬剤師に関するよくある質問
在宅が辛い・やりたくない薬剤師に関するよくある質問をまとめてみました。
薬剤師が在宅を辛いと感じる理由は何ですか?
在宅を断ることはできますか?
在宅がない薬局はどうやって探せばよいですか?
ドラッグストアなら在宅はありませんか?
認知症の患者さんとのコミュニケーションが辛いときはどうすればよいですか?
まとめ:在宅を辞めたい場合は無理せずにやめよう
以上、在宅訪問をどうしてもやりたくない薬剤師さんのために、対処法について解説しました。
在宅は、超高齢社会を迎えている日本にとって欠かせない業務であり、患者さんのニーズも高いことは間違いありません。
しかし、決して在宅のために、薬剤師が潰れてはいけないと感じています。辛い業務に耐え続けて体力的・精神的に疲弊してしまうよりも、自分の適性に合った職場で働くほうがずっと有意義です。悩んでいる人は、この記事の内容を参考にしてみてくださいね。
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参考文献
- 厚生労働省|地域包括ケアシステム
- 厚生労働省|かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン
- 厚生労働省|居宅療養管理指導(R2.8.19)
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