病態・薬治

病態・薬治:脳血管系(15問)

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問1 脳血管障害に分類されるものを次の中から全て選べ。

① 脳内出血

② くも膜下出血

③ 一過性脳虚血性発作

正解は①②③でした!

【解説】

脳血管障害は、脳内出血や脳梗塞、くも膜下出血などの脳血管障害の総称である。

選択肢以外にも、頭蓋内出血、脳梗塞(アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳梗塞、ラクナ梗塞)などが分類される。

 

問2 脳への血液供給を行う血管として、正しいものを次の中から2つ選べ。

① 内頸動脈

② 橈骨動脈

③ 椎骨動脈

正解は①③でした!

【解説】

①正。 2本の内頸動脈が脳への血液の供給の血管である。

②誤。 橈骨動脈は腕にある動脈である。脳への血液供給の動脈ではない。

③正。 2本の椎骨動脈(やがて1本の脳底動脈となる)もまた脳への血液供給の血管である。

 

問3 ウィリス動脈輪はどのような構造になっているか。記載として正しいものを次の中から1つ選べ。

① 脳を1周する構造になっている

② 脳底部を囲む構造になっている

③ 脳に血液を送る動脈と脳から血液を送り出す静脈の構造になっている

正解は②でした!

【解説】

①誤。 脳を一周する構造ではない。

②正。 脳底部を囲んでいて、一部で血流が遮断されても別の経路から血液が供給できるようになっている。

③誤。 単なる動脈と静脈のような構造ではない。

 

問4 モヤモヤ病の原因と考えられている疾患はどれか。次の中から1つ選べ。

① ラクナ梗塞

② 一過性脳虚血発作

③ ウィリス動脈輪閉塞症

正解は③でした!

【解説】

①誤。 ラクナ梗塞が原因でモヤモヤ病は発症しないと考えられている。

②誤。 一過性でありモヤモヤ病とは関連がない。

③正。 モヤモヤ病の原因と考えられている。

 

問5 脳内出血が起こったことで二次的に発生するものとして誤っているものを次の中から1つ選べ。

① 血腫周辺の細胞の浮腫が起こる。

② 神経脱落症状が現れる。

③ 血圧が低下する。

正解は③でした!

【解説】

①正。 記述の通り。

②正。 記述の通り。

③誤。 脳内で出血が起こると脳内の血圧が下がる。代償的に脳内へ血流を確保するために血圧は上昇する。

 

問6 脳内出血の好発部位として、最も頻度の高いもの次の中から1つ選べ。

① 小脳

② 被殻

③ 視床

正解は②でした!

【解説】

脳内で出血が起こると出血部位に血腫が形成される。そして脳細胞の浮腫と破壊が起こる。脳圧が亢進し、神経脱落症状が生じる。

脳内出血の好発部位としては

被殻(レンズ核部) > 視床 > 小脳≒橋 となっている。

 

問7 脳内出血の症状に関する記述のうち正しいものを次の中から1つ選べ。

① 夜の睡眠中など安静時に突然発症する。

② 共同偏視は視床出血でみられやすい。

③ 脳浮腫は進行すると脳ヘルニアを生じるため危険である。

正解は③でした!

【解説】

①誤。 脳内出血は日中の活動中に突然発症することが多い。

②誤。 共同偏視は病巣を睨むように眼球が固定される状態のことを指す。被殻出血でみられやすい。眼球運動障害とも言われる。

③正。 記述の通りである。

 

他にも、片麻痺や意識障害、めまい、嘔吐といった症状が出ることがある。

 




問8 脳内出血の治療についての記述のうち誤っているものを次の中から1つ選べ。

① 原則外科的治療が行われる。

② バイタルに異常がある場合は、全ての治療に優先してバイタルの改善を図る。

③ 内科的治療では脳圧と血圧の管理を目的とする。

正解は①でした!

【解説】

①誤。 脳内出血の治療は内科的治療が中心である。基本的には頭蓋内圧亢進の管理や脳浮腫の管理である。

②正。 脳出血の際にはバイタルサインのチェックが重要である。バイタルサインに異常がある場合は確実に死につながる可能性があることを肝に銘じておく必要がある。異常を認めた場合は全ての治療に優先して改善を図る必要がある。

③正。 記述の通りである。脳浮腫治療には濃グリセリン・果糖注射液やD-マンニトール液が用いられる。降圧目的ではカルシウム拮抗薬が用いられる。

 

問9 くも膜下出血の成因として最も多いものを次の中から1つ選べ。

① 動脈瘤破裂

② 脳動静脈奇形

③ モヤモヤ病

正解は①でした!

【解説】

①正。 くも膜下出血の原因で最も多い(70〜80%)40〜60歳に好発する。多くはウィリス動脈輪の破裂が原因である。

②誤。 奇形部が破裂することで起こる。くも膜下出血の原因の約10%を占める。20〜40歳の比較的若い層に多い。

③誤。 モヤモヤ病はウィリス動脈輪の血行障害が原因で起こる。これ自体がくも膜下出血の原因になることもあるが比較的稀である。

 

問10 くも膜下出血の症状の記述として正しいものを次の中から1つ選べ。

① 嘔吐は、脳圧が高くなり嘔吐中枢が刺激されるために起こる。

② 再出血が起こることがあるが、発症24時間を過ぎてから起こることが多い。

③ 血管攣縮は発症7日ごろから始まる。

正解は①でした!

【解説】

①正。 記述の通りである。

②誤。 出血後は周囲の血腫で圧迫されることで止血される。フィブリンがプラスミンにより溶解されると再出血が起こる。再出血は発症24時間以内に起こることが多い。

③誤。 血管攣縮はくも膜下出血発症4日頃より始まる。ピークは7日頃である。髄液に混入した血液成分が脳血管を刺激することで生じる。

 

その他、くも膜下出血の症状として、激しい頭痛、意識障害、正常圧水頭症が重要である。

 

問11 くも膜下出血の治療について正しいものを次の中から1つ選べ。

① 動脈瘤がある場合は原則外科的治療が行われる。

② オザグレルの静注は主に水頭症を抑制するために投与される。

③ D-マンニトールの投与は必須である。

正解は①でした!

【解説】

①正。 動脈瘤がある場合、破裂による再発が懸念されるため原則として外科的治療が行われる。具体的にはクリッピング術(場合によって、コーティング術やラッピング術)が行われる。

②誤。 オザグレルの静注はトロンボキサンA2(TXA2)の合成阻害により血小板の凝集能を抑制し、プロスタサイクリン(PGI2)の産生を促進することで血管攣縮を抑制する。水頭症の予防ではない。

③誤。 くも膜下出血では脳圧が亢進することが多い。そのためD-マンニトールが投与されることが多い。ただし、脳圧が更新していない時には投与する必要はない。

 

問12 アテローム血栓性脳梗塞の症状として誤っているものを次の中から1つ選べ。

① 片麻痺

② 失語

③ 低血圧

正解は③でした!

【解説】

①正。 片麻痺はアテローム血栓性脳梗塞でよく起こる症状である。

②正。 失語もアテローム血栓性脳梗塞でよく起こる症状である。

③誤。 アテローム血栓性脳梗塞で血圧が変動することはあるが、低血圧になるほど血圧が下がることは稀である。血圧が高い場合もあるが、降圧薬の使用により血圧が降下すると壊死巣やその周囲の血流量は減少して梗塞巣が広がる懸念があり、過度な高血圧でなければ降圧剤は使用しない。

 

問13 アテローム血栓性脳梗塞の急性期の治療に用いられる薬剤とその特徴の組み合わせとして正しいものを次の中から1つ選べ。

① D-マンニトール −  頭蓋内圧を降下し、脳浮腫を軽減する。

② t-PA −  フリーラジカルの除去により細胞の過酸化を抑制する。

③ エダラポン −  抗トロンビン作用を示しフィブリン血栓に対して用いる

正解は①でした!

【解説】

①正。 記述の通りである。

②誤。 t-PA製剤はプラスミノーゲンをプラスミンに変化させフィブリンを溶解する。できるだけ早期に投与することが望ましい。

③誤。 エダラポンはフリーラジカルを消去し細胞膜脂質の過酸化を抑制する。これにより脳細胞の酸化的障害を抑制する。脳梗塞急性期に伴う神経症状、日常生活動作障害などの改善を目的に投与される。

 

問14 アテローム血栓性脳梗塞の慢性期の治療に関する記述として正しいものを次の中から1つ選べ。

① 高血圧を合併することは少なく降圧薬は通常使用されない。

② 血栓の再発予防に抗血小板薬が用いられる。

③ 血栓形成予防に抗凝固薬が用いられる。

正解は②でした!

【解説】

①誤。 アテローム血栓性脳梗塞の慢性期では高血圧を伴うことが多く、リスク因子になるためカルシウム拮抗薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬などが用いられる。

②正。 アテローム血栓性脳梗塞の原因は血小板凝集塊にフィブリン血栓が合併して起こる。そのため初期段階の血小板凝集抑制を期待して抗血小板薬が用いられる。

③誤。 アテローム血栓性脳梗塞の原因は血小板の凝集が起こることである。血小板が凝集しないとフィブリンによる血栓は生じないため、予防的に抗凝固薬を用いても意味がない。

 

問15 心原性塞栓症の慢性期に用いられる薬剤として誤っているものを次の中から1つ選べ。

① ワルファリン

② アスピリン

③ ダビガトラン

正解は②でした!

【解説】

心原性脳塞栓症の原因は、心房細動、心内膜炎、心筋梗塞、心不全などの心疾患により心臓内で形成された血栓や心臓を経由した血栓が血流で運ばれて脳の動脈に流入し閉塞することで発症する。

①正。 ワルファリンは凝固因子のⅡ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹを阻害し血栓形成を抑制する。

②誤。 アスピリンは血小板の形成を抑制するが、心原性の脳塞栓症の原因はフィブリンの塊によるため、抗血小板薬では対応できない。

③正。 ダビガトランは凝固因子のⅩを阻害し、抗凝固作用を示す。

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他 【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。 今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。 お問い合わせ・家庭教師の依頼

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