病態・薬治

病態・薬治:循環器系②-高血圧(18問)

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問1 高血圧症の病態生理として正しいものはどれか。

① 合併症の予防を治療目的としている。

② 腎疾患や内分泌異常によるものを本態性高血圧と呼ぶ。

③ 収縮期血圧150 mmHg以上、または、拡張期血圧90 mmHg以上を高血圧の診断基準(診察室血圧)としている。

正解は①でした!

【解説】

高血圧症の約9割は原因が明確でない本態性高血圧であり、遺伝や生活習慣などが関与しているため生活習慣病といわれています。

腎臓病やクッシング症候群などの別の疾患が原因である二次性高血圧は約1割です。高血圧症は心血管イベントのリスク因子であり、致命的な合併症の原因となりますが、重症となるか長期間に渡らない限りは症状を引き起さないのが一般的です。

 

日本高血圧学会のガイドラインでは、「診察室血圧が収縮期血圧140 mmHg以上または拡張期血圧90 mmHg以上」「家庭血圧が収縮期血圧140 mmHg以上または拡張期血圧90 mmHg以上」を高血圧の判定基準としています。

これより、正しいのは①の記述です。(②本態性高血圧→二次性高血圧、③収縮期血圧150 mmHg以上→140 mmHg以上)

 

問2 血管平滑筋のL型Ca2+チャネル遮断作用を有する高血圧治療薬はどれか。

① アムロジピン

② プラゾシン

③ クロニジン

正解は①でした!

【解説】

①アムジロジピンは、ジヒドロピリジン系のCa2+チャネル遮断薬です。ジヒドロピリジン系の中でもアムロジピンは膜電位依存性L型Ca2+チャネル遮断作用の発現が緩徐で持続的であるので、作用時間が長く安定した降圧作用を示します。

②プラゾシンは、血管のα受容体を遮断して血管拡張作用を示します。高血圧症以外にも前立腺肥大に伴う排尿困難にも適応されます。

③クロニジンは、中枢のα受容体を刺激し、交感神経の興奮を抑制して降圧作用を示します。

 

問3 副作用として空咳を誘発しやすい薬剤はどれか。

① カプトプリル

② ロサルタン

③ アリスキレン

正解は①でした!

【解説】

①カプトプリルはアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬であり、ACE阻害によりアンギオテンシンⅡ生成を抑制し、血管を拡張&アルドステロンの分泌を抑制します。ACEはキニナーゼとも呼ばれ、プラジキニンの分解酵素としても働いています。ACE阻害薬はプラジキニンの分解も抑制してしまうため、体内にプラジキニンが蓄積し、空咳を誘発しやすくなります。

②ロサルタンは、アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)であり、AT1受容体を遮断してアンギオテンシンⅡによる昇圧作用を抑制します。キニナーゼ(ACE)には直接作用しないのでプラジキニンの蓄積がなく、空咳は生じにくいといえます。

③アリスキレンは、レニンを直接阻害することでアンギオテンシノーゲンからアンギオテンシンⅠへの変換を阻害し、昇圧作用を抑制します。アリスキレンもACE阻害作用はないため空咳は生じにくいといえます。

 

問4 以下の選択肢のうち妊婦に投与禁忌ではない薬剤はどれか。

① エナラプリル

② バルサルタン

③ プロプラノロール

正解は③でした!

【解説】

①エナラプリル、カプトプリルなどのアンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)や②バルサルタン、カンデサルタンなどのアンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)は、妊婦又は妊娠の可能性がある婦人には禁忌となっています。(Ca2+チャネル遮断薬も妊婦に禁忌となります。)

また、③プロプラノロールなどのβ遮断薬は、房室ブロックや気管支喘息(β遮断による気管支収縮)の患者には禁忌です。

 

問5 アドレナリンαβ受容体を遮断する高血圧治療薬はどれか。

① アテノロール

② ラベタロール

③ プロプラノロール

正解は②でした!

【解説】

①アテノロールは選択的β受容体遮断薬であり、高血圧や頻脈性不整脈、労作性の狭心症などに適応があります。

②ラベタロールはアドレナリンαβ受容体遮断薬であり高血圧に適応があります。β1受容体を遮断することで心機能抑制作用とレニン分泌抑制作用を示し、α1受容体を遮断することで血管拡張作用を示します。

③プロプラノロールはβ遮断薬であり、①と同様に高血圧や頻脈性不整脈、労作性の狭心症などに適応があります。プロプラノロールは非選択的にβ受容体を遮断するため、心不全や気管支喘息の患者には禁忌となります。(アテノロールなどの選択的β1受容体遮断薬は、気管支喘息には慎重投与可能です。)

 

問6 低血糖の症状をマスクする高血圧治療薬はどれか。

① ニフェジピン

② カルテオロール

③ トリクロルメチアジド

正解は②でした!

【解説】

低血糖の症状は発汗・頻脈などが現れ、これらは自律神経の興奮を介して現れます。②カルテオロールはβ受容体遮断薬であり、交感神経の緊張を抑える働きにより糖尿病治療薬との併用では低血糖状態をマスクする(隠してしまう)ことがあるので、注意が必要です。(低血糖症状に、気づいた時には既に重篤化しているケースがあります。)

③トリクロルメチアジドなどのチアジド系利尿薬やループ利尿薬も、糖尿病症状を悪化させる恐れがあります。

①ニフェジピンはCa2+チャネル拮抗薬であり、糖代謝への影響はないので糖尿病患者にも投与可能となります。

 

問7 狭心症の病態生理について正しいものはどれか。

① 不可逆的な心筋壊死状態である。

② 大半は労作時に虚血を示す労作性狭心症である。

③ 胸痛は通常30分以上継続する。

正解は②でした!

【解説】

虚血性心疾患とは、心筋の酸素需要増加や冠血管の酸素供給低下により、心筋細胞の酸素や栄養が欠乏し障害をきたす疾患で、この状態を虚血といいます。狭心症とは、心筋の虚血のみで壊死までは至っていない状態であり、心筋壊死まで達すると心筋梗塞と呼ばれます。

①誤。狭心症は可逆的な虚血状態をいいます。これは心筋梗塞の記述です。

②正。誘因で分類すると安静時と労作時に分けられ、その大部分は労作性であると言われています。

③誤。狭心症の胸痛は通常10分であり、長くても30分以内には消失します。これは心筋梗塞時の記述です。

 




問8 異型狭心症の心電図変化として特徴的な変化はどれか。

① ST上昇

② QT間隔の延長

③ 冠性T波

正解は①でした!

【解説】

異型狭心症とは、安静時に発症する狭心症の中でも特に心筋梗塞に移行する恐れが高い狭心症のことです。特徴として心電図の①ST上昇を認めます。(一般に狭心症ではST波は低下します。)

②QT間隔の延長は、抗不整脈薬や向精神薬など薬剤が原因で生じる恐れがあります。

③冠性T波は、心筋梗塞で見られる特徴的心電図所見です。

 

問9 急性冠症候群に含まれないものはどれか。

① 不安定狭心症

② 労作時狭心症

③ 急性心筋梗塞

正解は②でした!

【解説】

急性冠症候群とは、虚血性心疾患の中で迅速な治療が必要とされる重篤な疾患の総称であり、①不安定狭心症、③急性心筋梗塞、心原性突然死などが含まれます。冠血管の狭窄部位におけるプラークが破裂し、血栓が形成されて血管が閉塞することで生じます。

また、狭心症は、病勢、誘因、病理病態のそれぞれの観点から分類されます。病勢では、動脈硬化が原因となる器質性狭心症と、冠血管の攣縮(スパズム)が原因となる冠攣縮性狭心症に分けられます。要因からは、労作や精神的ストレスによって酸素需要が亢進する②労作性狭心症と、安静時に酸素供給が低下して生じる安静時狭心症に分類できます。病理病態では、病態が安定して生じる安定狭心症と、発生頻度や持続時間などが短期間で不安定に変動する①不安定狭心症に分けられます。

一般的に分類は、器質性狭心症≒②労作性狭心症≒安定狭心症の関係が成り立つ場合が多く、これより①不安定狭心症≠②労作性狭心症と考えられるため、②が誤りです。

 

問10 心筋梗塞における検査異常について誤っているものはどれか。

① ST波の低下

② 異常Q波の出現

③ ASTの上昇

正解は①でした!

【解説】

心筋梗塞では、②異常Q波、①ST上昇、冠性T波などの特徴的な心電図が認められ、血液検査では心筋壊死マーカーの増加が見られます。心筋壊死マーカーとは、③AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)やLDH(乳酸脱水素酵素)、CK(クレアチニンキナーゼ)、トロポニンTなどの虚血により壊死した心筋細胞から漏れ出した物質のことを指し、これらの値は心筋梗塞時には上昇します。一方、狭心症では心筋壊死は生じていないため、心筋壊死マーカーの増加はありません。

よって、心筋梗塞ではST波は上昇するため①が誤りです。(異型狭心症を除く一般の狭心症ではST波は低下します。)

 

問11 狭心症の発作時に用いられる薬物治療はどれか。

① モルヒネ静注

② ニトログリセリンの舌下投与

③アルテプラーゼの投与(発症6時間以内)

正解は②でした!

【解説】

狭心症の発作時には、②ニトログリセリンなど硝酸薬の舌下投与やスプレー噴霧を行います。硝酸薬は血管平滑筋のcGMP産生を促進することで血管拡張作用を示します。

一方、①モルヒネ静注と③(発症6時間以内の)アルテプラーゼの投与は、心筋梗塞発症時の治療法であり、①は胸痛緩和の目的で、③は血栓溶解による再灌流療法(閉塞した冠動脈を再度開通させる方法)として用いられます。また、狭心症の疼痛に比べて、心筋梗塞の疼痛は自然寛解しないため②ニトログリセリンなど硝酸薬は無効です。(寛解とは治癒とは異なり、病気の症状が軽減または消滅してコントロールされた状態です。)

 

問12 一酸化窒素の遊離を介した血管拡張作用を示す虚血性心疾患の治療薬はどれか。

① ベラパミル

② アテノロール

③ 硝酸イソソルビド

正解は③でした!

【解説】

③硝酸イソソルビドは硝酸薬であり、構造中NO2からの一酸化窒素遊離を介して可溶性のグアニル酸シクラーゼを活性化させ、血管内皮細胞内のcGMP濃度を上昇させて血管拡張作用を示します。動脈の拡張により血圧を低下させて後負荷を軽減し、静脈の拡張により静脈還流量を減少させて前負荷も軽減します。前負荷・後負荷の軽減により酸素の消費量を減らすだけでなく、冠血管も拡張して酸素の供給量も増加させます。副作用としては、反射性頻脈やメトヘモグロビン血症を生じる恐れがあります。

狭心症の発作予防には、③硝酸イソソルビドなどの硝酸薬、②アテノロールなどのβ遮断薬、①ベラパミルなどのCa2+チャネル遮断薬、ジピリダモールなどの冠血管拡張薬が用いられます。

③硝酸薬は、発作時・予防でも、労作性・安静時でも、全てに使用可能ですが、長期使用で耐性がつきやすい欠点があります。②β遮断薬は、心機能抑制作用を有し心筋の酸素需要を抑制するため、労作性狭心症に第一選択となります。①Ca2+チャネル遮断薬は、冠血管拡張作用にて冠血管の酸素供給を亢進させるため、安静時狭心症に第一選択とされます。

 

問13 ニコランジルの作用機序のうち正しいものはどれか。

① 細胞内cAMPの増加

② K+チャネル開口

③ Ca2+チャネル開口

正解は②でした!

【解説】

ニコランジルは、K+チャネルの開口と一酸化窒素遊離作用(硝酸薬と同様)の2つの作用を有する虚血性心疾患治療薬です。

Kチャネルの開口により、血管平滑筋のK+透過性が亢進し活動電位の再分極が促進します。これにより電位依存性Ca2+チャネルの開口時間が短縮して、細胞内のCa2+の流入が減少し、冠血管を拡張させます。

また、硝酸薬と同様に、構造中NOからの一酸化窒素遊離を介して可溶性のグアニル酸シクラーゼを活性化し、血管内皮細胞内のcGMP濃度を上昇させて血管拡張作用を示します。

よって、正しい作用機序は②です。(①cAMP→cGMP、③チャネル開口→流入抑制(チャネルに直接働きかける訳ではない))

 

問14 安静時狭心症の発作予防に単独投与で用いられない薬剤はどれか。

① 硝酸イソソルビド

② ピンドロール

③ ジルチアゼム

正解は①でした!

【解説】

②ピンドロールなどのβ遮断薬は、冠血管収縮作用を有するため冠攣縮を緩解できず、安静時狭心症(安静時≒冠攣縮性≒不安定狭心症)には単独投与不可となります。(①③と併用して使用。)心機能抑制作用を有し心筋の酸素需要を抑制するため、労作性狭心症には第一選択となります。

 

問15 硝酸薬を投与禁忌の患者のうち誤っているものはどれか。

① 気管支喘息患者

② 閉塞隅角緑内障を合併している患者

③ シルデナフィル服用中の患者

正解は③でした!

【解説】

硝酸薬の投与が禁忌となるのは、①閉塞隅角緑内障、脳内出血、高度貧血、②勃起不全症治療薬(シルデナフィル、タダラフィルなど)を投与中の患者です。勃起不全薬はPDEⅤ(ホスホジエステラーゼ5)を阻害してcGMP濃度を上昇させるため、作用機序が硝酸薬と重複し、併用によって過度な血圧の低下を引き起こします。

また、③気管支喘息患者に投与禁忌となるのはβ遮断薬です。

 

問16 心原性ショックの主な原因はどれか。

① 外傷

② 急性心筋梗塞

③ 交感神経系の亢進

正解は②でした!

【解説】

心原性ショックとは、心臓が要求される血液を十分に供給できなくなり生じる致死的な疾患です。急性心筋梗塞による左心室の広範囲の壊死によって発症することが多く、ドパミンやドブタミンなどのカテコールアミン製剤を治療薬として用いて心機能を促進させます。治療は救命救急を目的としており予後は不良です。

 

問17 閉塞性動脈硬化症について誤っているものはどれか。

① 腹部大動脈下部から下肢動脈の動脈硬化が進行し閉塞する疾患である。

② 全身の血液障害を合併することが多い。

③ ドブタミンを第一選択薬とする。

正解は③でした!

【解説】

閉塞性動脈硬化症とは、腹部大動脈下部から下肢動脈の動脈硬化により慢性的に血流が閉塞している疾患です。慢性の全身血液障害のため、しびれや下肢の疼痛、筋肉痛などを生じます。治療は動脈硬化の抑制が目的となり、抗血小板薬や血管拡張薬などが用いられます。ドブタミンはカテコールアミン製剤であり心原性ショックに第一選択となるので、③は誤りです。

 




問18 本態性低血圧の治療薬はどれか。

① リトドリン

② ミドドリン

③ ボセンタン

正解は②でした!

【解説】

②ミドドリンは、選択的α受容体刺激薬であり、血管平滑筋のα受容体を刺激して昇圧作用を示します。他に本態性低血圧の治療薬としては、末梢神経終末へのNAdの再取り込みを阻害するアメジニウム、αβ受容体刺激薬のエチレフリンがあります。

①リトドリンは、選択的β受容体刺激薬であり、子宮平滑筋を弛緩させることで流産や早産の防止に用いられます。ミドドリンと語感が似ていますが作用は全く異なります。問題によく狙われるので注意が必要です。

③ボセンタンは、エンドセリン受容体遮断薬です。血管内皮細胞で産生され、血管収縮作用を示すエンドセリン1を拮抗的に阻害し、肺動脈性肺高血圧を改善します。

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他 【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。 今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。 お問い合わせ・家庭教師の依頼

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