病態・薬治

病態・薬治:代謝性疾患①-糖尿病(20問)

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問1 インスリンが分泌される膵臓の細胞を次の中から1つ選べ。

① α細胞

② β細胞

③ γ細胞

正解は②でした!

【解説】

①誤。 α細胞は血糖上昇を促すグルカゴンを分泌する。

②正。 ランゲルハンスβ細胞によりインスリンが分泌される。

③誤。 架空の細胞である。

 

問2 インスリンの働きとして、正しいものを次の中から全て選べ。

① 血糖降下作用

② 血清K値低下作用

③ グリコーゲン合成抑制作用

正解は①と②でした!

【解説】

①正。 インスリンの働きによりグルコーストランスポーターの発現並びに、細胞膜への移動が促進され、ブドウ糖を血中から細胞内へ移動させることで血糖値を低下させる。

②正。 グルコーストランスポーター(GLUT4)によりブドウ糖が細胞内に取り込まれる際に、グルコースとともにKも同時に細胞内へ取り込まれる。結果的に血清中のK濃度は低下する。

③誤。 インスリンはグリコーゲンの合成を促進し、分解抑制をかける。

 

問3 糖尿病の3大合併症として誤っているものを次の中から1つ選べ。

① 網膜症

② 腎症

③ 中枢神経症

正解は③でした!

【解説】

高血糖症状が続くと、血管が障害される。大きな血管よりも、細くて小さな血管が障害を受けやすい。

①正。 網膜にある毛細血管が障害されて網膜症が出現する。

②正。 腎にある毛細血管や糸球体が障害されて腎症が出現する。

③誤。 3大合併症という観点からは中枢神経症は外れる。末梢神経が先に障害される。

 

問4 1型糖尿病に関する説明のうち誤っているものを次の中から1つ選べ。

① 抗GAD抗体陽性が7割程度見られる。

② 発症年齢に差はない。

③ ケトアシドーシスを起こすことが多い。

正解は②でした!

【解説】

①正。 発症初期に抗膵島細胞質抗体(ICA)陽性、抗GAD抗体陽性が7割程度見られる。ウイルス感染が契機となって発症することもある。

②誤。 小児や若年者が多い疾患である。

③正。 重篤なケトアシドーシスを起こす可能性があるので注意が必要である。

 

問5 2型糖尿病の説明として正しいものを次の中から1つ選べ。

① 自己抗体により発症する。

② インスリン抵抗性を示すことがある。

③ ケトン体が検出される。

正解は②でした!

【解説】

①誤。 1型糖尿病とは異なり自己抗体の関与は否定的である。

②正。 肥満などが原因で炎症反応が惹起され、インスリン抵抗性を示すことが多い。

③誤。 2型糖尿病では1型と異なりケトン体はほとんど増加しない(増加してもわずかである)

 

問6 糖尿病ではしばしば急性感染症を合併することがある。この理由として正しいものを次の中から1つ選べ。

① 白血球が減少する。

② 抗体が産生されない。

③ 顆粒球の貪食能が低下する。

正解は③でした!

【解説】

①誤。 糖尿病が直接白血球減少の原因にはならない。

②誤。 糖尿病であっても液性免疫である抗体は産生される。

③正。 高血糖状態が続くと、顆粒球の貪食能が低下するため感染症に罹患しやすくなる。

 

問7 糖尿病性神経障害において最も初期から障害される神経を次の中から1つ選べ。

① 自律神経

② 運動神経

③ 知覚神経

正解は③でした!

【解説】

①誤。 自律神経障害は知覚神経障害よりも遅れて発現する。主な症状としては、規律性低血圧、排尿困難(神経因性膀胱)などが挙げられる。

②誤。 運動神経障害は末期に発現する。脱力感や眼瞼下垂が起こる。

③正。 糖尿病性神経障害のうち最も初期に現れるのは知覚神経障害である。痺れ感や疼痛などが現れる。

知覚神経>自律神経>運動神経の順で障害される。細い神経から障害される。

 




問8 次の問いに答えよ。

次のグラフは日本における失明の原因疾患(緑内障、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性、白内障、網膜色素変性症、強度近視、その他)割合(%)とその遷移を示している(同じ色の凡例は同じ疾患を表している)。

糖尿病性網膜症を表す凡例の色を次の中から1つ選べ。

なお1988年の23.7%, 2005年の26.5%であるピンク色の凡例はその他の疾患を表している。

厚生労働省難治性疾患克服研究事業「網膜脈絡膜・視神経 萎縮症に関する研究:平成17年度研究報告書」より作成

① オレンジ色

② 赤色

③ 紫色

正解は②でした!

【解説】

糖尿病性網膜症は2005年段階で失明の原因2位である。したがって赤色の凡例が該当する。

なお、その他の凡例については下記の通りである。

  • オレンジ色:緑内障
  • 紫色:網膜色素変性症
  • 水色:白内障
  • 藍色:強度近視
  • 黄緑色:加齢黄斑変性

 

問9 1回の検査・診察で糖尿病と診断できるケースを次の中から1つ選べ。

① HbA1c:6.0%、空腹時血糖値:150 mg/dL

② HbA1c:7.0%、空腹時血糖値:150 mg/dL

③ HbA1c:8.0%、空腹時血糖値:100 mg/dL

正解は②でした!

【解説】

糖尿病型を 2 回確認(1 回は必ず血糖値で確認する)が原則である。

糖尿病型とは血糖値が以下のいずれかを満たす場合、又はHbA1cが6.5以上であるときである。

  • 空腹時血糖値:126mg/dL以上
  • ブドウ糖負荷試験後血糖値:200mg/dL以上
  • 随時血糖値:200mg/dL以上

 

別の日に行った検査で糖尿病型が2回以上認められれば、糖尿病と診断する。

ただし、HbA1cのみの反復検査による診断は不可とする。2 回のうち 1 回は必ず血糖値のいずれかで糖尿病型を確認する必要がある。

血糖値と HbA1c が同一採血でそれぞれ糖尿病型を示すことが確認されれば、1 回の検査だけでも糖尿病と診断できる。

 

問10 血糖コントロールの指標について正しいものを次の中から1つ選べ。

① HbA1c

② 糖化グロブリン

③ 血清インスリン

正解は①でした!

【解説】

①正。 糖化ヘモグロビンの割合を示す。過去1〜2ヶ月の血糖コントロールを示す。

②誤。 糖化アルブミンの誤りである。糖化アルブミンは過去2週間前の血糖コントロールを示す。

③誤。 インスリンの分泌自体は血糖コントロールの指標としては用いられない。インスリン抵抗性の場合、血清インスリンは高値でも血糖値が高い状態が続いていると考えられる。

 

問11 インスリン製剤について、食前30分前に投与するものを次の中から1つ選べ。

① インスリンリスプロ

② 中性インスリン注射液

③ インスリングラルギン

正解は②でした!

【解説】

各製剤の特徴を理解しておく必要がある。

①誤。 インスリン リスプロやアスパルト、グルリジンなど超速攻型の製剤は食直前に投与する。

②正。 食前30分前に投与するのは速攻型のインスリンである。ケトーシス患者の治療に用いられる。

③誤。 インスリングラルギンやデテミルなどの持効型のインスリンは食事に関係なく投与することが可能である。

 

 

問12 インスリン抵抗性を示す患者に投与する血糖降下薬として正しいものを次の中から1つ選べ。

① メトホルミン

② ミチグリニド

③ シタグリプチン

正解は①でした!

【解説】

インスリン抵抗性の改善を目的にして投与する血糖降下薬はビグアナイド系とチアゾリジン系薬剤である。

①正。 メトホルミンはビグアナイド系に分類される。肝臓での糖新生の抑制、骨格筋などの抹消組織へのグルコースの取り込み促進などインスリンの作用を増強する。

②誤。 ミチグリニドはインスリン分泌促進薬であり、主に食後高血糖の改善に用いられる。

③誤。 シタグリプチンはDPP−4阻害薬であり、インスリン分泌能低下を改善する薬剤に分類される。

 

問13 アルドース還元酵素によって産生され、組織に蓄積すると浮腫をもたらし、結果的に神経障害を起こすものを次の中から1つ選べ。

① キシリトール

② ソルビトール

③ リボース

正解は②でした!

【解説】

①誤。 全く関係のない選択肢である。

②正。 グルコースがTCAサイクルを介さずにアルドース還元酵素によってポリオール経路で解糖された結果ソルビトールが産生される。ソルビトールは蓄積すると組織浮腫をもたらし、神経障害を起こす。

③誤。 全く関係のない選択肢である。

 

問14 糖尿病性の末梢神経障害治療薬のうち誤っているものを次の中から1つ選べ。

① エパルレスタット

② メキシレチン

③ カナグリフロジン

正解は③でした!

【解説】

①正。 エパルレスタットはアルドース還元酵素を阻害し、ソルビトールの蓄積を抑制することで糖尿病性神経障害を改善する

②正。 メキシレチンはNa+チャネルを阻害することで神経伝達を抑制し、糖尿病性神経障害における自覚症状(痺れや疼痛)を改善する。

③誤。 カナグリフロジンはSGLT2阻害薬であり、血糖を腎から排泄する作用を持つ。糖尿病性の末梢神経障害治療薬と直接位置付けられるわけではない。

 

問15 HbA1cの値が7.5%で維持されている患者は血糖コントロールの目標のどの項目に分類されるか、次の中から1つ選べ。

① 血糖正常化を目指す際の目標

② 合併症予防のための目標

③ 治療強化が困難な際の目標

正解は③でした!

【解説】

糖尿病の治療目標は年齢、罹病期間、臓器障害、低血糖の危険性、サポート体制などを考慮して個別に設定する。上記を原則とした上で、一般的な治療目標が定められている。

①誤。 血糖正常化を目指す際の目標はHbA1cが6.0未満である。

②誤。 HbA1cが7.0未満が合併症予防のための目標である。

③正。 HbA1cが8.0未満が治療強化が困難な際の目標である。

 




問16 次のうち強化インスリン療法を表すものを1つ選べ。

① グリメピリド錠1mg 分3 毎食後 + インスリングラルギン注 分1 寝る前

② ヒト二相イソフェンインスリン 中性懸濁注射液 分2 朝夕食直後

③ インスリンアスパルト注 分3 毎食直後 + インスリンデテミル注 分1 寝る前

正解は③でした!

【解説】

強化インスリン療法は、血糖正常化を目指し、生理的血中インスリン変動と近似したパターンを再現するよう考案された方法である。

(超)速攻型インスリンの1日3回投与あるいは時効型インスリンを加えた1日4回の頻回注射が該当する。

 

問17 インスリン依存性の糖尿病ではケトアシドーシス性昏睡を起こすことがある。原因はケトン体の産生が亢進するためである。ケトン体を表すものとして正しいものを次の中から1つ選べ。

① αヒドロキシ酪酸

② アセト吉草酸

③ アセトン

正解は③でした!

【解説】

①誤。 βヒドロキシ酪酸であり、「α」が誤りである。

②誤。 アセト酢酸であり「吉草酸」が誤りである。

③正。

インスリン依存の糖尿病ではインスリン作用不足により糖の利用が減少する。

エネルギーを産生するために脂肪酸分解が亢進し、ケトン体が生成しやすくなる。

 

問18 インスリンの絶対的適応ではないものを次の中から1つ選べ。

① 糖尿病における重症感染症の合併

② 糖尿病合併妊娠

③ ステロイド治療時の高血糖

正解は③でした!

【解説】

①誤。 重症感染症時はインスリンの絶対的適応である。

②誤。 妊娠時の糖尿病合併はインスリンの絶対的適応である。

③正。 ステロイド治療時に高血糖を認める場合は、インスリンの相対的適応であり、経口の血糖降下薬が用いられる場合もある。

 

問19 低血糖症状のうち「空腹感」や「手の振え」が出る時の血糖値の数値として最もふさわしいものを次の中から1つ選べ。

① 70 mg/dL

② 50 mg/dL

③ 30 mg/dL

正解は①でした!

【解説】

①正。 「空腹感」・「手の振え」・「冷や汗」などの自覚症状は低血糖の初期症状として重要である。交感神経が働き血糖値を上昇させようとしている状態である。おおよその血糖値の目安は70 mg/dL程度である。

②誤。 血糖値が50 mg/dL程度まで低下してくると「目のかすみ」・「生あくび」・「眠気」・「集中力の低下」などの自覚症状が起こる。さらに血糖値が低下し中枢神経症状が出ている。

③誤。 血糖値が40 mg/dL程度まで低下してくると意識障害が出始め、30 mg/dL以下になると昏睡となる。

 

問20 低血糖症状で血糖測定値が50 mg/dLであった時、摂取するブドウ糖の量として最も適切なものを次の中から1つ選べ。

① 1 g

② 5 g

③ 10 g

正解は③でした!

【解説】

理論的にブドウ糖1gで血糖値は5 mg/dL上昇する。

低血糖時は血糖値を80〜100 mg/dL程度まで戻すことを目標とする。

血糖測定値が50 mg/dLであった時にブドウ糖を5g摂取では理論的に血糖値が75 mg/dLまでしか回復せず不十分である。

今回の場合は10 gの摂取で血糖値が100 mg/dL程度まで回復すると考えられるが、摂取後に再度血糖値を測定し実測値を基に追加でブドウ糖を摂取するか判断が必要になることもある。

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他 【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。 今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。 お問い合わせ・家庭教師の依頼

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