薬理

薬理学:血液系①-抗血栓薬・止血薬(21問)

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問1 トラネキサム酸の止血作用の機序はどれか。

①トロンビン阻害

②プラスミン阻害

③アンチトロンビンⅢ阻害

正解は②でした!

【解説】

①誤。トロンビンを阻害することで、血液凝固反応は抑制される為、止血反応は進行しない。トロンビンを阻害する薬物はガベキサート、ナファモスタット、アルガトロバンなどがある。

②正。トラネキサム酸は、プラスミンやプラスミノーゲンのリジン結合部位に結合して、プラスミンやプラスミノーゲンがフィブリンと結合を抑制する。その結果、フィブリンの分解を抑制し止血作用を示す。

③誤。アンチトロンビンⅢ依存的に作用するのは、ヘパリン類である。ヘパリンはアンチトロンビンⅢの作用を増強し、トロンビン、第Ⅹa因子などのセリンプロテアーゼ活性を抑制し抗凝固作用を示す。

 

問2 アンチトロンビン非依存的にトロンビンを直接阻害するのはどれか。

①フォンダパリヌクス

②バルバナバリン

③アルガトロバン

正解は③でした!

【解説】

①誤。フォンダパリヌクスはアンチトロンビンⅢの抗第Ⅹa因子活性を増強させることで、血液凝固反応を抑制する。

②正。パルナバリンは、ヘパリン類似薬であり、アンチトロンビンⅢの作用を増強して、血液凝固反応を抑制する。

​③誤。アルガトロバンはトロンビンの活性部位に結合して、アンチトロンビンⅢ非依存的に抗トロンビン作用を示す。

 

問3 ワルファリンの抗血液凝固作用はどれか。

①ビタミンKとの拮抗

②ビタミンEとの拮抗

③ビタミンAとの拮抗

正解は①でした!

【解説】

ワルファリンは肝臓でビタミンKに拮抗して、プロトロンビンなどのビタミンK依存性の血液凝固(第Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子)の生成を抑制する。

そのため、試験管内では抗凝固作用を示さない。

 

問4 血液中のプラスミノーゲンを活性化させて、フィブリン分解を促進するのはどれか。

①ダルテパリン

②ウロキナーゼ

③チクロピジン

正解は②でした!

【解説】

①誤。ダルテパリンはアンチトロンビンの作用を増強して、フィブリンの形成を抑制する。

②正。ウロキナーゼは主に血漿中のプラスミノーゲンからプラスミン生成を促進させて、フィブリン分解を促進させる。血栓上のプラスミノーゲンには親和性が低いため出血傾向が起こりやすい。

③誤。チクロピジンは、ADP受容体である、P2Y12受容体を不可逆的に遮断して抗血小板作用を示す。P2Y12受容体はGiタンパク質に共役しており、受容体が遮断されることでアデニル酸シクラーゼ活性の抑制が解除される。すると、血小板内のcAMPが増加してCa2+の放出が抑制され、血小板凝集物質の放出が抑制される。

 

問5 血小板においてcAMPを増加させ、抗血小板作用を示すのはどれか。

①アルテプラーゼ

②サルポグレラート

③チカグレロル

正解は③でした!

【解説】

①誤。アルテプラーゼは組織プラスミノーゲンアクチベーターであり、血栓上のプラスミノーゲンと反応してプラスミンを生成させて、フィブリンを分解する。

②誤。サルポグレラートはセロトニン5-HT受容体を遮断し、Gqタンパク質によるホスホリパーゼCの活性化を抑制して、Ca2+の放出を抑制する結果、抗血小板作用を示す。

③正。チカグレロルはGiタンパク質に共役するP2Y12受容体を遮断して、アデニル酸シクラーゼ活性の抑制を解除する。その結果、血小板内のcAMPが増加してCa2+の放出が抑制され、血小板凝集物質の放出が抑制される。従来のADP受容体遮断薬と異なり、代謝活性化を受けることなく薬効を発揮する。

また、受容体遮断作用は可逆的であり、効き目が速く、投与中止も容易となった。アデノシン取り込み阻害作用を併せ持ち、局所的にアデノシン濃度を上昇させる。

 




問6 P2Y12受容体を遮断して、抗血栓作用を示すのはどれか。

①クロピトグレル

②シロスタゾール

③オザグレル

正解は①でした!

【解説】

①正。クロピトグレルはP2Y12受容体を非可逆的に遮断して、抗血小板作用を示す。薬効発現には体内でCYP2C19による代謝活性化が必要になるため、効果発現に時間がかかる。

②誤。シロスタゾールはホスホジエステラーゼⅢを阻害して、血小板内のcAMP濃度を上昇させて血小板凝集抑制作用を示す。

③誤。オザグレルはトロンボキサン合成酵素を阻害して、TXAによる血小板凝集反応を抑制する。

 

問7 フィトナジオンと併用する事で作用が減弱するものはどれか。

①ダルテパリン

②ワルファリン

③ヘモコアグラーゼ

正解は②でした!

【解説】

①誤。ダルテパリンはフィトナジオンと併用しても効果は減弱しない。

②正。ワルファリンはビタミンKに拮抗して、血液凝固反応を阻害するため、ビタミンK製剤のフィトナジオンと併用することで効果が減弱する。

③誤。へモコアグラーゼはトロンビン様作用により、ヘパリンに拮抗されることなく止血効果をあらわす。フィトナジオンと併用しても効果は減弱しない。

 

問8 血管抵抗性を増強するのはどれか。

①カルバゾクロム

②ジピリダモール

③ナファモスタット

正解は①でした!

【解説】

①正。カルバゾクロムは血管透過性要請作用と毛細血管抵抗値増強作用を示す。その際、血液凝系や線溶系には影響を与えない。

②誤。ジピリダモールは血小板のホスホジエステラーゼを阻害して、cAMP濃度を上昇させて血小板凝集反応を抑制するほか、アデノシン取り込み阻害作用をもち、アデノシンA2A受容体にアデノシンが反応することで、血液凝固反応を抑制する。

③誤。ナファモスタットは抗トロンビン作用により、アンチトロンビンⅢに依存せずに抗凝固作用を示す。

 

問9 リバーロキサバンの作用機序はどれか。

①トロンビン阻害

②第Ⅹa因子阻害

③アンチトロンビンⅢ増強

正解は②でした!

【解説】

リバーロキサバンは直接的に第Ⅹa因子を阻害する経口で用いる抗凝固薬であり、DOAC(ドアック)と呼ばれている。

ワルファリンと異なりビタミンKで作用が拮抗されることがないため、ビタミンKを含む食品、医薬品との相互作用がない。

DOACの作用機序や薬剤一覧はこちらの記事をご参照。

 

問10 アンチトロンビンⅢ非依存的に抗凝固作用を示すのはどれか。

①ダビガトラン

②エノキサパリン

③ヘパリン

正解は①でした!

【解説】

①正。ダビガトランは経口投与で用いる直接的なトロンビン阻害薬であり、こちらもDOACに分類されている。抗凝固作用はアンチトロンビンⅢ非依存的にトロンビンを直接阻害して発揮する。

②誤。エノキサパリンはヘパリン類似薬であり、アンチトロンビンⅢ依存的に抗凝固佐用を示す。

③誤。ヘパリンはアンチトロンビンⅢと複合体を形成して、アンチトロンビンⅢの作用を増強することで抗凝固佐用を示す。経口投与では無効であり注射で用いる他、試験管内でも抗凝固佐用を示す。

 




問11 抗血小板薬の作用機序で誤っているものはどれか。

①PGI受容体刺激

②アデノシンA2A受容体刺激

③5-HT2受容体刺激

正解は③でした!

【解説】

①正。PGI受容体を刺激して、抗血小板作用を示す薬物にはベラプラストがある。PGI受容体はGsタンパク質に共役しており、刺激を受けることでアデニル酸シクラーゼが活性化して、cAMP濃度が上昇する。その結果Ca2の放出抑制が起こり、血小板凝集が抑制される。

②正。アデノシンA2A受容体を間接的に刺激する薬物として、ジピリダモールがある。ジピリダモールはホスホジエステラーゼ阻害作用とアデノシントランスポーター阻害作用があり、アデノシン濃度を上昇させることでA2A受容体(Gs共役)を間接的に刺激する。

③誤。5-HT2受容体はGqタンパク質に共役しており、ホスホリパーゼC活性化によりCa2が放出され、血小板凝集が起こる。この経路を阻害する薬物としてサルポグレラートがあり、5-HT2受容体を遮断して抗血小板作用を示す。

 

問12 イコサペント酸エチルの作用機序として正しいものはどれか。

①トロンボキサン合成酵素阻害

②血小板アラキドン酸と競合

③PG生合成抑制

正解は②でした!

【解説】

①誤。トロンボキサン合成酵素を阻害するのはオザグレルである。

②正。イコサペント酸エチルは血小板のアラキドン酸に競合して、TXAの生成を抑制し血小板凝集を抑制する。

③誤。血管内壁のPG産生増加作用を持つ。

 

問13 低用量のアスピリンが主として示す作用はどれか。

①PGI生成抑制

②TXA生成抑制

③ホスホジエステラーゼ阻害

正解は②でした!

【解説】

①誤。PGI生成抑制が起こるのは高用量のアスピリンを使用した場合である。PGI生成が抑制されることで、血小板凝集反応が起こる。

②正。低用量のアスピリンを用いることでTXA生成が抑制され、抗血小板作用を示す。アスピリンによるシクロオキシゲナーゼ阻害作用は不可逆的なため、手術時などには7~14日ほどの休薬が必要となる。

③誤。ホスホジエステラーゼを阻害する薬物には、ジピリダモールやシロスタゾールがある。

 

問14 下記の【  】に当てはまるものとして適当なものを選べ。

ラネキサム酸はプラスミノーゲンやプラスミンの【  】結合部位に結合してプラスミンによるフィブリン分解を阻害する。

①アルギニン

②リジン

③ヒスチジン

正解は②でした!

【解説】

トラネキサム酸は生体内でイプシロンアミノカプロン酸となり、プラスミノーゲン、プラスミンのリジン結合部位に結合して、プラスミンによる線溶系反応を抑制する。

 

問15 血栓上のプラスミンノーゲンとの親和性が低く、出血リスクが大きいのはどれか。

①アルテプラーゼ

②ウロキナーゼ

③モンテプラーゼ

正解は②でした!

【解説】

①誤。アルテプラーゼは組織プラスミノーゲンアクチベーターであり、フィブリン上のプラスミノーゲンと親和性が高いため、出血傾向のリスクが低い。

②正。ウロキナーゼはウロキナーゼプラスミンアクチベーターであり、血漿中のプラスミンとの親和性が高いこと、血栓溶解作用を示すためにはα-プラスミンインヒビターで不活化されるプラスミンを超えるプラスミンの産生が必要となるため、出血傾向のリスクが大きい。

③誤。モンテプラーゼは組織プラスミンアクチベーターに分類され、血栓上のフィブリンとの親和性が高いため、出血傾向を起こしにくい。

 




問16 試験管内でも血液抗凝固作用を示すのはどれか。

①ヘパリン

②ワルファリン

③アドレノクロム

正解は①でした!

【解説】

①正。ヘパリンは血漿中に存在するアンチトロンビンⅢと複合体を形成してその作用を増強して抗凝固作用を示す。

②誤。ワルファリンは肝臓にてビタミンKと拮抗して、第Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子などのビタミンK依存因子の生成を阻害する。

③誤。アドレノクロムは血管透過性作用と血管抵抗性増強作用を示し、止血薬として使用される。

 

問17 薬物と作用機序、副作用の組み合わせのうち誤っているものはどれか。

①アスピリン - シクロオキシゲナーゼ阻害 - 胃腸障害

②チクロピジン - P2Y12受容体遮断 - 無顆粒球症

③モンテプラーゼ - プラスミノーゲン抑制 - 出血傾向

正解は③でした!

【解説】

①正。アスピリンはシクロオキシゲナーゼを阻害して、TXA2産生を抑制し、抗血小板作用を示す。副作用にはPG合成抑制による胃腸障害がある。

②正。チクロピジンはP2Y12受容体を遮断して、抗血小板作用を示す。副作用には、血栓性血小板減少性紫斑病や無顆粒球症がある。

③誤。モンテプラーゼはプラスミノーゲンやプラスミンを活性化して、フィブリンを分解し血栓を溶解する。副作用には出血傾向(脳出血、胃腸出血)がある。

 

問18 トロンビンの活性部位に結合して直接トロンビンを阻害するのはどれか。

①ダビガトランエテキシラート

②エドキサバン

③メナテトレノン

正解は①でした!

【解説】

①正。ダビガトランエテキシラートは経口投与で用いる直接抗トロンビン薬(DOAC)である。生体内でダビガトランとなり、トロンビンの活性部位に直接結合して、アンチトロンビンⅢ非依存的に抗凝固作用を示す。

②誤。エドキサバンは経口投与で用いる選択的第Ⅹa因子阻害薬である。トロンビンなどの他の凝固因子に対する作用は弱い。

③誤。メナテトレノンはビタミンK製剤であり、肝臓でプロトロンビンやビタミンK依存抗凝固因子の産生を促進する。フィトナジオンとことなり、メナテトレノンには骨形成促進作用がある。

 

問19 Gタンパク共役型受容体に作用して、アデニル酸シクラーゼを活性化させて、抗血小板作用を示すのはどれか。

①アルガトロバン

②チクロピジン

③ベラプロスト

正解は③でした!

【解説】

①誤。アルガトロバンは直接トロンビンを阻害するため、Gタンパク共役受容体には作用しない。

②誤。チクロピジンはGiタンパク質に共役するP2Y12受容体を遮断し、アデニル酸シクラーゼの抑制を解除することで、抗血小板作用を示す。

③正。ベラプロストはGsタンパク質に共役するPGI受容体に作用してアデニル酸シクラーゼを活性化させる。cAMPの上昇によってCa2放出が抑制され、血小板凝結作用が抑制される。

 

問20 ダルテパリンの凝固因子阻害作用について正しいのはどれか。

①第Ⅹa因子のみを阻害する5

②第Ⅱa因子よりも第Ⅹa因子を強く阻害する

③第Ⅹa因子よりも第Ⅱa因子を強く阻害する

正解は②でした!

【解説】

ダルテパリンは、アンチトロンビンと複合体を形成し、トロンビンや第Ⅹa因子などのセリンプロテアーゼを阻害するが、第Ⅱa因子よりも第Ⅹa因子を強く阻害する。

 




問21 チクロピジンについて正しい記述はどれか。

①ADP受容体を刺激することで抗血小板作用を示す

②副作用には血栓性血小板減少性紫斑病がある

③投与開始後は2ヶ月に一回肝機能検査を実施する

正解は②でした!

【解説】

①誤。チクロピジンはADP受容体を遮断してアデニル酸シクラーゼの抑制を解除して抗血小板作用を示す。

②正。チクロピジンの重大な副作用には血栓性血小板減少性紫斑病、無顆粒球症、重篤な肝機能障害がある。

③誤。チクロピジンは、投与開始後2ヶ月間は原則として、2週間に1度肝機能検査を実施する。

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他 【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。 今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。 お問い合わせ・家庭教師の依頼

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