最近、製薬企業のリストラや早期退職の話題が尽きません。またMRも人員整理のため年々減少傾向にあります。
MR認定センターの「2018年版MR白書」によると、国内のMR数は2013年度の6万5752人をピークに4年連続で減少しています。
特にプライマリ領域では大型新薬が無く、後発医薬品の相次ぐ浸食、薬価ダウンによりMR数が減少しています。
そんな中、MRから医療機器メーカーへ転職する方も少なくないと聞きました。
今回、メディカルタックスが
- MRから医療機器メーカーの営業に転職したSさん
に取材し、その内容をまとめてみました!
はじめに
MRから医療機器メーカーに転職された経緯や動機などを教えて貰えますか?。
ちょっと嫌な思いもありましたけど紹介させていただきますね!
以下、「私」=「Sさん」です。
A社を辞めるきっかけと医療機器の営業になった動機
私は新卒でA社に入社し、抗がん剤領域のMRを担当していました。
初めのうちは主力抗がん剤が消化器がんのキードラッグであったため、医師や薬剤師の先生方と患者さん毎に治療効果や副作用の相談ができ、非常にやりがいを感じていました。
しかし5年程在籍していた頃、主力抗がん剤の特許が切れ、後発品(ジェネリック)が登場してしまいました。
更には今後10年は新薬の上市が見込みがなく、
- MR活動が「ジェネリックからの切り替え防衛」
ばかりになってしまいました。
このような製薬メーカー(特に内資系)は最近多いと思います。開発力が低下し、海外の開発力に太刀打ちできなくジリ貧となっていくようなメーカーです。
そんな状況の社内の雰囲気は非常に悪いものでした。
ジェネリックに切り替えられてしまうと、パワハラのような罵倒や叱責があり、全く楽しく働けない環境になっていきました。
インセンティブ制度もありましたが、年々金額が減らされ、売上上位を達成したとしても満足のいくインセンティブは貰えませんでした。
やはり新薬を次々に上市するメーカーと、新薬がなかなか上市できないメーカーでは社内の雰囲気も異なると思います。
そんな時、ある病院の外科医の先生がおっしゃった言葉が思い浮かびました。
外科医の先生『薬剤だけのがん治療だけでなく、幅広い意味でのがん治療を知るためにオペ(手術室)に入って勉強しなさい』
実際にその先生にはオペを見学させていただき、オペの勉強を非常に魅力的に感じるようになりました。
こういった出来事もあったため、
医療機器メーカーへ転職を決意したのは
- 医療を薬剤だけではない、違った側面から見てみたい
と思ったのも大きなきっかけです。
医療機器メーカーへの転職は、後述の医療機器専門の転職サイトに登録し、担当者と領域を相談しながら行いました。
最終的には、専門性が高く、競合メーカーも多数いる「循環器領域の冠動脈ステント領域」を選択しました。
循環器領域ではオペ中の呼び出し※が少ないので急な対応が少ない、と転職サイトの担当者に教えて貰えたことも大きいですね。
※呼び出しとは?
整形領域の場合は、「どのボルトを使う?」、「どの器具を使う?」等、なかなか医師だけでは判断が厳しい場合があります。
またどのくらい骨を削るなどの判断は医療機器メーカーが行うことも多く、その際は呼び出しがあると教えていただきました。
循環器領域はステント以外にも、
- ペースメーカー
- アブレーション
など数多くの領域も存在し、それぞれに特徴が異なります。
私はオンコロジーMRで薬のことしか知らなかったため、事前に転職サイトの担当者に色々教えて貰えたおかげで失敗することなく転職ができたと思います。
パワハラは現在では少なくなってきていると思いますが、やはり昔の名残で残っているところもあるのですね。
私のいたA社はジェネリックの登場と同時に社内がピリピリしてきたので、その影響もあったと思います。
外科の先生に言っていただけなければ医療機器メーカーへの転職は決めていなかったと思います。
イメージを固めていくことができますので。
転職の際には情報が全てですからね。多く仕入れていて損はありません。
では、転職されてからの、「MRとのギャップ」について教えていただけますか?
MRと『医療機器メーカー』とのギャップ
私がMRと医療機器メーカーとで感じたギャップは大きく以下の2点でしょうか。
- 認知度の違い
- 働き方の違い(面談や内容)
認知度の違い
MRと言えば世の中で認知された職業だと思っています。医療関係でない友人でも「MR」のことは知っていますからね。
一方、医療機器の営業と言った際の周囲の反応と言えば、
- 『何の機械を売っているの?』
- 『CTとかMRIを売っているの?』
と言う様に、認知されていない職業だなと思ったのは素直な感想です。
逆に医療関係者(特に医師)からの認知度はマイナーな薬を扱うMRよりも上の印象ですね。
例えばジェネリック医薬品のメーカーは、病院に薬が納品されれば医師とほとんど面会しません。(たまに薬剤師と面会するくらいでしょうか)
しかし、医療機器メーカーは医師と密に面談をするため、しっかりと認知されている印象を受けました。
特に外科医の先生は、「薬」よりも圧倒的に手術に使用する「医療機器」の方が日常的に接する機会が多いですからね。
働き方の違い(面談や内容)
MRは医師を基本としつつも、薬剤師・看護師・卸担当、と幅広く面談する必要があります。
一方、医療機器メーカーは面談の8割以上が「使用権のある医師」で、残りは技師と代理店(卸)でしょうか。
医師への面談は基本MRと同じく製品に関連した情報提供活動ですが、MRと異なり、デモ用の医療機器を用いて実際に使用方法を見せながら説明することがあります。
医師と面談する際にはオペの前後やアポイントがありますが、これはMRと同じですね。
一方、MRに無い手段として、医療機器メーカーはオペ室の立ち合いを行うことがあります。
オペ室の立ち合いでは、機器のレクチャーやトラブル対応を主としますが、オペの時間中ずっと医師と時間を共にするため、信頼関係も密になっていく印象があります。
私の扱っていたカテーテルを実際に医師が使用しているところを見れるのは勉強になりますし、それをまた他の医師へフィードバックすることで情報を共有することもあります。
ただ、立ち合いで入る場合は、面談という形式でもないので医師と多くを話すことはできません。
MRから見た際に、医療機器メーカーは長く話している様に見えるかもしれませんが、実はMRと同様に話せる時間が短いことが多く、オペ室の中に入っている時間が長いため長く話している様に見えるのかもしれません。
また、薬は納品すれば終わりですが、医療機器の場合は“貸出”という形式をとっており、病院に貸し出して、使用した分を請求するスタイルです。
医療機器製品は滅菌されているのですが、滅菌期限があり、期限を過ぎると無償で新しいものに交換しなければなりません。
この交換の手続きをするのは医療機器メーカーの営業担当ですので、その処理はMR時代には経験したことがなく、医療機器メーカー独特のものだと思います。
医療機器メーカー営業のやりがい
私は大学を担当していることもあり、若手医師の育成に携わっている時に一番やりがいを感じています。
デモ機を若手医師に貸し出して手技の向上に取り組んでもらうのですが、医師と一緒に私も練習させていただきながら「あーでもない、こーでもない」と共に技術を磨いていくのが面白いですね。
そういうことをきっかけにして医師と仲良くなっていくことができます。これはMRとは違う点だと思いますし、医療機器メーカー営業の大きなやりがいだと感じています。
そして医師が自分たちの医療機器を使ってオペを成功させた瞬間には感動します。
「一緒にやり遂げた」という感覚を味わえ、医療のパートナーだと思えることが私にとっては一番のやりがいです。
やっていることは似ているところもありますが、扱う情報や技術等が全然異なっていますね。
MRが感じるやりがいと、医療機器メーカーが感じるやりがいもまた異なると思います。
MRとは異なる点だと感じました。
それを機器という面から支えることのできる医療機器メーカーの役割は大きいと思いますよ!
それでは最後に医療機器メーカーに向いていると思われる人物像を教えてください。
医療機器メーカーに向いている人とは?
MRをされている方で
- あまり医師の役に立っていない
- 医師と医療のパートナー関係が築けていない
- 自分たちの行動に自信が持てない
という方は、もしかるすと医療機器メーカーの営業では払拭できるかもしれません。
医師の技術と隣り合わせの医療機器では医師とメーカーの信頼関係が強く、非常に頼りにされます。
薬という観点ではなく、技術(手技)といった観点から医療を支えたいと思える方には医療機器メーカーはぴったりではないでしょうか。
MRから医療機器メーカー営業への転職を考えた場合、医療の基礎知識やプレゼン能力は備わっていますし、病院内の基本的な立ち居振る舞いも身についていると思います。
ですので、即戦力としてすぐに現場で経験が積めるのは大きなメリットです。(もちろん製品の知識や技術の基本は座学研修があります)
あとは、医療機器メーカーは外資系のような考え方が多いため
「業績=給与」
という考え方です。
もちろん基本給はありますが、インセンティブによる上乗せ幅が非常に大きく、個々の業績によって毎年の年収は結構変動します。
この考え方は外資系のMRと似ているところもありますが、「実力主義」でバリバリやっていきたい方にも医療機器メーカーはおススメです。
MR・医療機器メーカー、両方を経験して
MRは医療機器メーカーの営業のことを『機械屋』と言って馬鹿にする、と耳にすることがあります。
逆に、医療機器メーカーの立場からは、MRを『薬屋』として小馬鹿にしている人がいるのも事実です。
両方を経験した立場としては、どっちが偉いということはなく、分野が違う立場のものに対して優劣を付けるのはどうなのかな、と思っています。
薬だけで医療は成り立ちますか?
医療機器だけで医療は成り立ちますか?
どちらか片一方だけでは医療は絶対に成り立ちません。
MRにはMRの、医療機器には医療機器の良い面がありますので、お互いに尊重しながら医療を支えることができたらなという想いはあります。
もしかすると、MRから医療機器メーカーへの転職後に
『MRに戻りたい』
と思う時が来るかもしれません。
転職はどれもそうかもしれませんが、やっぱりそう思ってしまった時点から業績は下がりますし、そのような人を何人も見てきました。
また、他社が新製品を出せば、売り上げは下がります。それはMRも医療機器メーカーも同じです。
しっかりと領域・分野の研究をした上で覚悟をもって転職されるのが良いかと思います。
ここまで話を聞いてみて、
「やっぱりMRのまま転職もありだな」
と感じた方もいらっしゃるかもしれません。正直、それも全然ありありです!!
MRの転職なら以下の記事でも解説していますが、MR BiZがおススメですので、ぜひご活用ください。
-
とあるオンコロジーMRの転職体験記:MR不要論に打ち勝つ方法4選!
続きを見る
医療機器メーカーの転職先を探すなら?
医療機器メーカーを専門で扱う転職サイトは数少ないのが現状です。
求人はあったとしても担当者が医療機器メーカーに疎く、領域のことをよく分かっていないことも多々あります。(←時間の無駄になってしまいます)
その中でもdodaのエージェントサービスは医療機器メーカー専門の担当者が在籍しているのが特徴です。
ネットでは知りえないような、今後の医療機器業界の方向性や期待されている機器等、深い情報を多々お持ちであったため領域の勉強としても非常に役に立ちました!
MRから医療機器メーカーという異業種に転職する際には不安がたくさんあると思います。そんな方は是非dodaの担当者さんに色々相談してみてください。
医療機器の領域別の特徴からあなたに合った領域の紹介まで、手取り足取り教えてくれるので不安が払拭されると思いますよ!
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