薬剤

薬剤:投与設計(7問)

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問1 一般に薬物を投与してから定常状態に達するまでの時間はどれほどか。適切なものを次の中から1つ選べ。ただしT1/2は薬物の消失半減期とする。

① T1/2 × 2

② T1/2 × 4

③ T1/2 × 8

正解は②でした!

【解説】

一般に、定常状態に達する時間は、薬物の消失半減期の4〜5倍である。

半減期の4倍で定常状態の濃度の93.75%、半減期の5倍で96.88%に達する。

 

問2 点滴静注を行なっていた患者が回復し、点滴が終了となった。点滴終了後の薬物の濃度が1μg/mL未満となるまでにかかる時間として最も短いものを1つ選べ。ただし点滴静注で薬物は定常状態にあり、その濃度は10μg/mLであったとする。またこの薬物の消失速度定数は0.346である。

① 4時間

② 8時間

③ 12時間

正解は②でした!

【解説】

定常状態の濃度が10μg/mLである。

薬物が体内から消失していき1μg/mLと1/10となるまでの時間を求める。半減期T1/2の何倍かを求めるとよい。

経過時間 1×T1/2 2×T1/2 3×T1/2 4×T1/2 5×T1/2
薬物濃度 1/2 1/4 1/8 1/16 1/32

上記から半減期の4倍が経過すると薬物濃度が1/10より低くなる。

次に半減期を求める。T1/2 = ln2/kel = 0.693/0.346 ≒ 2時間

したがって半減期の4倍の8時間を経過すると薬物濃度は1/10の1μg/mL未満となる。

 

問3 喘息発作で緊急入院してきた患者(年齢40歳 体重60kg)にテオフィリン注射剤を投与したい。目標血中濃度を12μg/mLと設定する場合、テオフォリンの初回負荷量として正しいものを1つ選べ。ただしこの患者はテオフィリンを長期的に服用しており、入院時の血中テオフィリン濃度は 5 μg/mLであった。なおテオフィリンの分布容積は0.45 L/kgである。

① 6 mg

② 81 mg

③ 189 mg

正解は③でした!

【解説】

「初回負荷量Ds = 分布容積Vd×目標血中濃度Css」で与えられる。

ただし事前にテオフォリンの投与を受けていた場合は

初回負荷量Ds = 分布容積Vd×(目標血中濃度Css - 投与直前の血中濃度C)

となる。

この患者は体重が60kgでありテオフィリンの分布容積は

0.45 (L/kg) ×60 (kg) = 27 (L)

したがってDs = Vd×(Css - C) = 27 (L) ×(12 - 5) (μg/mL) = 189 mg

 

問4 アムロジピン錠5mgを1日1回 1回1錠 朝食後に服用する。定常状態でのアムロジピンの平均血中濃度(ng/mL)として最も適切なものを1つ選べ。ただしアムロジピンの全身クリアランスは30 L/hr、バイオアベイラビリティは70%とする。

① 2.1

② 4.9

③ 7.0

正解は②でした!

【解説】

バイオアベイラビリティをf、投与量をD(mg)、全身クリアランスをCLtot(L/hr)、投与間隔をτ(h)として、定常状態での平均血中濃度Cssは以下の式で与えられる。

  • Css = (f×D) / (CLtot×τ)

今回アムロジピンは1日1回投与であるため投与間隔τは24時間となるため、各種数値を上記の式に代入すると

  • Css = {0.7×5(mg)} / {30 (L/hr)×24(hr)} = 0.0048611 (mg/L) = 4.86 (ng/mL)

したがって②の4.9が正解である。

 

問5 ある薬物を半減期と同じ間隔で繰り返し投与した時、定常状態における最高血中濃度は初回投与後の最高血中濃度の何倍になるか。最も適切なものを1つ選べ。

① 1倍

②  1.41倍

③ 2倍

正解は③でした!

【解説】

蓄積率をR、初回投与後の最高血中濃度をC0とすると、定常状態での最高血中濃度Css max

  • Css max = R×C0

で与えられる。

ここでR = 1/(1-e-kel×τ)で与えられるが今回はτ= T1/2 であり、T1/2 = ln2 / kel であるため

  • R = 1/{1-(1/2)}= 2 となる。

したがってCss max = R×C0 = 2×C0 であり2倍の③が正解となる。

投与間隔が半減期のn倍であったとき

τ= n×T1/2 = n×ln2 / kelであり、これをR = 1/(1-e-kel×τ)に代入すると

R =  1/{1-(1/2)n}となる。

この式を用いれば蓄積率が簡単に算出できるので定常状態での濃度を簡単に評価できる。

 




問6 てんかんの患者にバルプロ酸を投与し、平均血中濃度を 60 μg/mL としたい。バルプロ酸の1日の総投与量として最も適切なものを1つ選べ。ただし、バルプロ酸の経口クリアランスは 0.80 L/hr とする。

① 800 mg

② 1200 mg

③ 1600 mg

正解は②でした!

【解説】

バイオアベイラビリティをf、投与量をD(mg)、全身クリアランスをCLtot(L/hr)、投与間隔をτ(h)として、定常状態での平均血中濃度Cssは以下の式で与えられる。

  • Css = (f×D) / (CLtot×τ)

今回Css = 60 μg/mL、τ = 24 hr である。

また、経口クリアランスCpo = CLtot / f = 0.80 L/hrであることを考慮して上記の式に各種数値を代入すると

  • D = (CLtot×τ×Css)/ f = (CLtot / f)×τ×Css = 0.80 (L/hr)×24(hr)×60(μg/mL) = 1152 (mg) ≒ 1200 (mg)

 

問7 ワルファリン錠1mg  1日3.5錠 分1 朝食後 でコントロールされていた患者(男性、年齢50歳、体重75kg)の血液検査を行ったところPT-INRが3.5であった。この患者の投与量について再度検討した時、ワルファリンの1日の投与量としてふさわしくないものを1つ選べ。

① 3.5 mg

② 3 mg

③ 2.5 mg

正解は①でした!

【解説】

薬力学的パラメータを用いた投与設計の問題である。

PT-INRはワルファリンの効果を現す指標として重要であり、ワルファリン服用時、通常成人では2.0〜3.0の値になるようにコントロールする。高齢者では1.6〜2.6となるようにワルファリンの投与量を調節する。

今回の血液検査でPT-INRが3.5であり目標値よりも高くなっているためワルファリンを減量する必要がある。ワルファリンの1日投与量は変更前は3.5 mg/日であるためこれより投与量が少なくなければならない。したがって投与量の変更がない①は投与量としてふさわしくない。

なお、どの程度減量すればPT―INRがどの程度下がるかを推定する指標はなく、減量してPT-INRの変動を確認しながら至適投与量を決定する。

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他 【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。 今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。 お問い合わせ・家庭教師の依頼

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