11.血液・造血器系 12.悪性腫瘍

コピクトラ(デュベリシブ)の作用機序【CLL】

2022年3月、「慢性リンパ性白血病」を対象疾患とするコピクトラ(デュベリシブ)の製造販売承認申請が行われました。

ヤクルト本社|申請のニュースリリース

現時点では未承認のためご注意ください。

基本情報

製品名コピクトラ?海外はCopiktra
一般名デュベリシブ水和物
製品名の由来
製造販売(株)ヤクルト本社
効能・効果再発・難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)?
用法・用量1日2回経口投与?
収載時の薬価
発売日

 

PI3K(ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ)のδ(デルタ)とγ(ガンマ)を共に阻害するといった初の作用機序を有していますね。

 

近年、慢性リンパ性白血病では様々な新薬開発が行われてきていますが、まだまだ治療選択肢が少ないのが現状です。

 

木元 貴祥
コピクトラは2つ以上の前治療歴がある場合に使用可能となる見込みですね。

 

今回は慢性リンパ性白血病(CLL)とコピクトラ(デュベリシブ)の作用機序、エビデンスについてご紹介します。

 

慢性リンパ性白血病とは

白血病は「血液のがん」です。

血液細胞には、白血球(好中球、好酸球、好塩基球)、赤血球、リンパ球(B細胞やT細胞)等がありますが、これら血液細胞の異常化(腫瘍化=がん化)によって引き起こされる病気が白血病です。

 

慢性リンパ性白血病(CLL:chronic lymphocytic leukemia)は、リンパ球のうち「成熟した小型のB細胞」が腫瘍化する疾患です。

腫瘍化したB細胞が末梢血や骨髄に存在している時には「慢性リンパ性白血病」と呼ばれ、リンパ節にあるときは「小リンパ球性リンパ腫」と呼ばれます。

 

慢性リンパ性白血病の発生頻度は日本では非常に少なく、白血病全体の約1~2%で約2,000人と推定されています。

 

また、慢性リンパ性白血病の腫瘍細胞の表面には「B細胞受容体(BCR)」が発現していることが知られています。

慢性リンパ性白血病(CLL)とBCR

 

慢性リンパ性白血病の症状と治療

慢性リンパ性白血病は進行が緩やかで無症状であることが多く、この場合経過観察が基本です。

進行すると倦怠感、寝汗を伴う微熱、貧血、血小板減少が認められることもあります。

 

症状がある場合、抗がん剤(フルダラビンやシクロホスファミド)と適宜リツキサン(リツキシマブ)を併用した治療や、イムブルビカ(イブルチニブ)による治療が行われます。1)

血液
イムブルビカ(イブルチニブ)の作用機序と副作用【CLL】

続きを見る

 

加えて、カルケンス(アカラブルチニブ)も初回治療としてガザイバ(オビヌツズマブ)と併用して使用可能になる見込みです。(現時点では初回治療は未承認

カルケンス(アカラブルチニブ)の作用機序【CLL】

続きを見る

 

しかし上記の治療を行っても治療抵抗性になったり、一度は寛解(効いた)にも関わらず再発してしまうこともあります。

 

この場合、リツキサン+ベネクレクスタ(ベネトクラクス)等が使用されますが、その他の治療選択肢は限られていました。

ベネクレクスタ(ベネトクラクス)の作用機序と副作用【CLL/AML】

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コピクトラは2つ以上の前治療歴のある再発・難治性の慢性リンパ性白血病に対して単剤で治療効果が確認されていますね。

 

木元 貴祥
それではコピクトラの関与するPI3Kについてご紹介します。

PI3K:phosphatidylinositol-3 kinase(ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ)の略で、読み方は「ピーアイスリーキナーゼ」。

 

PI3Kとは:腫瘍微小環境とBCRシグナル伝達に関与

慢性リンパ性白血病の腫瘍細胞の周りの環境は「腫瘍微小環境」と呼ばれていて、腫瘍細胞が増殖・活性化しやすい環境が整えられています。

例えば、腫瘍増殖活性のサイトカインの放出が促進されていたり、宿主の免疫細胞から逃避する機構を獲得していたり、と腫瘍細胞にとって増殖しやすい環境です。

 

腫瘍微小環境の構築に重要な細胞として、以下が知られています。2-3)

  • 腫瘍関連マクロファージ:腫瘍増殖活性のサイトカイン放出
  • CD4+T細胞:腫瘍増殖活性のサイトカイン放出+宿主免疫細胞からの攻撃を回避

 

上記細胞の増殖・活性化に関与しているのが「PI3K-γ」です。

 

木元 貴祥
つまり、腫瘍微小環境の構築に重要なタンパク質がPI3K-γというわけですね。

 

また、腫瘍細胞のBCRに増殖因子が結合すると、そのシグナル伝達が細胞質内に伝えられ、途中に経由するタンパク質が「PI3K-δ」です。

PI3Kとは:腫瘍微小環境とBCRシグナル伝達に関与してCLLの増殖活性に寄与している

 

以上より、PI3K-γによる腫瘍微小環境の構築、およびBCRを介したシグナル伝達がPI3K-δを中継することで、腫瘍細胞の活性化が促進されていると考えられています。

 

コピクトラ(デュベリシブ)の作用機序:PI3K-γ/δ阻害

コピクトラは腫瘍微小環境に関与しているPI3K-γ、およびBCRを介したシグナル伝達に関与しているPI3K-δを共に阻害する薬剤です!2-3)

コピクトラ(デュベリシブ)の作用機序:PI3K-γ/δ阻害

 

木元 貴祥
PI3K-γ/δを共に阻害することで、腫瘍細胞の増殖を抑制できると考えられています。

 

エビデンス紹介:DUO試験

承認の根拠とされた臨床試験(DUO試験)をご紹介します。4)

本試験は2つ以上の治療歴のある再発・難治性の慢性リンパ性白血病患者さんを対象に、「コピクトラ」群と「アーゼラ(オファツムマブ)」群を比較した国際共同第Ⅲ相臨床試験です。

 

本試験の主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)*」で、結果は以下の通りでした。

試験群コピクトラ群アーゼラ群
PFS中央値*13.3か月9.9か月
HR=0.52
P<0.0001
12か月時点のPFS率60%39%

*治療を開始してから、がんが増悪するまでの期間

 

副作用

正式承認後に更新予定です。

臨床試験では下痢、好中球減少症、発熱、悪心、貧血などが高頻度に認められていました。

 

用法・用量

正式承認後に更新予定です。

臨床試験では1日2回経口投与とされていました。

 

収載時の薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

コピクトラはこんな薬

  • 経口のPI3K-γ/δ阻害薬
  • 腫瘍微小環境に関与しているPI3K-γと、BCRを介したシグナル伝達に関与しているPI3K-δを共に阻害する
  • 再発・難治の慢性リンパ性白血病に単剤で使用する(1日2回経口投与)

 

木元 貴祥
これまで慢性リンパ性白血病の治療選択肢は限られていたことから、今後、色々な薬剤開発が進めば良いなと感じています。

 

近年、慢性リンパ性白血病では様々な新薬開発が行われてきていますが、まだまだ治療選択肢が少ないのが現状です。

 

類薬ではリツキサン(リツキシマブ)ガザイバ(オビヌツズマブ)などの抗体薬と併用した治療開発も進行中のため、コピクトラでも開発が進むことを期待します。

類薬もチェック!

 

以上、今回は慢性リンパ性白血病とコピクトラ(デュベリシブ)の作用機序・エビデンスについてご紹介しました!

 

引用文献・資料等

  1. 日本血液学会|造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版
  2. Blood. 2018 Feb 22;131(8):877-887.
  3. Blood. 2019 Nov 7;134(19):1573-1577.
  4. DUO試験:Blood. 2018 Dec 6;132(23):2446-2455.

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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